「平成の船中八策」を実現する市民の会、その84[欧州連合の問題点」(欧州連合の機関および権限⑨)
「欧州連合の機関および権限」
既に明示的に述べたように,原則的な政策領域が問題となるが,なお確固として画定された管轄領域が問題となるのではない。これらは詳細には,欧州憲法の第三部と第四部からはじめて明らかとなる。同第三部及び第四部では,先述した一般的な政策領域に基づいて,欧州連合に事実上存在する権限が,詳細に規定されている。ある種の中間的地位が,地域政策,展開政策(Entwicklungspolitik)および研究政策と考えられる。これらの領域も共有管轄で説明される。
しかし事実上,この場合は,欧州連合の助成措置(Foldermassnahmen)のみが問題となり,内容的規律のされた管轄は問題とならない。まさに共有管轄の場合に,補充性原則が基準となる。この場合にまさに補充性原則が実証され,補充性原則について既に一般的に説明した問題がまさにこの場合に,現れる。共有管轄の類型は,例えばドイツ基本法において72条,74条,74条aにおいて規定されているような,連邦国家の法に存在する競合(立法)管轄の概念に相応する。
これによれば,州は次の場合にのみ立法権を行使しうる。すなわち,基本法72条2項のいわゆる必要性条項を充足する場合,従って,とりわけ法統一性及び経済統一性の領域で,事実上,連邦法的に規律された統一性の必要性が,そしてそれにより認められる要請が証明された場合である。もっともこのような条項に関してもかなり争いがあり,とりわけドイツにおける連邦国家的制度改革当時の議論の枠内ではそうであった。
しかしそのような必要性条項は,連邦の一次的な管轄を,連邦州の二次的管轄からよりよく階層化するために,重要である。そのような必要性条項は,欧州憲法においても意義を有するであろう。補充性原則をよりよく具体化するのに十分であろうからである。しかし残念ながら欧州憲法においてそのような規律を採用することは断念された。
欧州連合の管轄の第三のカテゴリーは,Ⅰ-16条に見られる。これによれば欧州連合は一定の領域で,援助措置,調整措置,補充措置を講じることができる。
これも,政策領域の広範な範囲で見られる。すなわち,「産業,健康保護と向上,一般的および職業的教育,少年とスポーツ,文化,民間救護活動」である。もっともこのような政策領域も,この場合,その明示的な権限法上の限界づけが欧州憲法第三部に見られる。最後に――第四として――,問題のないわけではない権限法上の授権がⅠ-17条のいわゆる柔軟性条項に存在する。同条では次のように規定されている。「この憲法の定める目標の一つを達成するために第三部に定める政策の枠内において連合の行動が必要となったときであって,この憲法が規定していないときは,閣僚理事会は,欧州委員会の提案に基づいて欧州議会の承認を得た後に,適切な措置を全会一致により採択するものとする」(1項)。
この規律は,既に従前のEGV 308条に前身を有していた。そして既にこの規定は,とりわけこのような柔軟性条項の特別な問題状況を明らかにしていた。なぜなら実際には柔軟性条項が,欧州連合の限定的な個別授権の原則によれば,本来は存在し得ないような,事実上の権限判断権限(コンペテンツ・コンペテンツ)を背後に隠蔽しているからである。
このような理由から,このような柔軟性条項は断念する方がベターであったであろう。柔軟性条項は既に過去において多くの不明確性をもたらしてきた。
既に過去の時点で,すなわち従前のEGV 308条の形態でも,私の考察からは当然批判されるべきものであり,それ故に今日においては,このような規律は断念されるべきであった。残念ながらこれは実現されていない。このような柔軟性条項が欧州連合の権限実務においてどのような展開をみるのかは,極めて慎重に,また極めて批判的に,将来において検証されるべきである。この点について,続くⅠ-17条2項も変更はない。
これによれば,「欧州委員会は,9条3項に定める補充性原則監視手続において,同条に基づく提案に対しては,構成国の国内議会の注目を喚起するものとする。」すなわち,柔軟性原則を「支え」ようとしている。確かに,国内議会がこの点について情報を提供された場合,欧州連合がこのような柔軟性措置を自らの権限強化の目的で講じる場合には,都合が良く,利用価値があろう。しかし国内議会の有効な抵抗は,情報手続についてもほとんど実現されえないように思われる。これに対してより大きな有効性から,Ⅰ-17条3項の規律に至ることが期待される。
その85に続く 以上
最近のコメント