「平成の船中八策」を実現する市民の会、その103[欧州連合(EU)の紛争防止⑤」
4. 欧州委員会の「紛争の根源のチェック・リスト」
欧州委員会の前述の政策指針文書や2001 年6 月のゲーテボルグ(ヨーテボリ)欧州理事会で打ち出された前述の「暴力的紛争防止のための EU プログラム」 は、EU の早期警戒の必要性を強調しており、欧州委員会は学術団体である「紛争防止ネットワーク」 と協力して2001 年に「紛争の根源のチェック・リスト」 を作成した。
その目的は第一に EU の政策決定関連機関の注意を喚起する、第二に EU の政策が紛争防止・解決に貢献することを確実にする努力を高めることである。チェック・リストで最高点を付けられた国は、極秘の「警戒リスト」 を通じて外相理事会の注意を惹くことになっている。欧州委員会はほかに、在外代表部からの報告、委員会による公開情報のチェック、欧州委員会人道局 (ECHO) の災害監視システムである ICONS (Impeding Crisis OnlineNews System) も活用している。
チェック・リストは紛争防止、平和構築の分野における国連の関係機関およびほかのドナーと共有されている。チェック・リストを以下に概説しておく。
1. 国家の正統性
—政治体制の適切なチェックとバランスがあるか
憲法の尊重、議会と司法が行政部をチェックする能力、中央からの権限委譲および地方
が中央にカウンターバランスする能力など
—いかに政治・行政権力が包括的であるか
人種、宗教の代表者が政府に含まれているか、政治活動へのアクセスの平等、政策決定
への参加、行政府や公共機関の公正な人員補充などが公正か
—どの程度国家権力集団が尊重されているか
国家権力に反対する歴史的不満、独立運動、革命など問題の極端な解決を唱道する政党、国家が国民の必要に応える能力
—汚職が広範に広がっているか
全般的な汚職のレベル、汚職に対抗するプログラムの存在、官僚機構の広範な収賄、民
間と公務員の談合
2. 法の支配
—司法制度がどの程度強固か
司法の独立と効率、法の前のすべての市民の平等など
—国家の不法な暴力はあるのか
不法行為への治安部隊の参加(道路の封鎖、強要行為など)、治安部隊による人権の弾圧に対する効果的な訴追、刑務所の状態など
—治安部隊に対するシビリアン・コントロール
政策決定に対する治安部隊の影響、治安部隊の使用をめぐる議会のチェック機能など
—組織犯罪が国の安定を損なっているか
犯罪網(麻薬、天然資源、人身売買)によって国や経済がコントロールされているか私兵や準軍隊の存在、など
3. 基本的権利の尊重
—市民的自由、政治的自由が尊重されているか
選挙権、被選挙権、言論・集会の自由を含む市民的自由の保護、自由で公正な選挙、反
対派の権利の尊重
—宗教的・文化的権利は尊重されているか
宗教、民族、文化の差別に対する法による処罰、少数言語を認めることなど
—その他の基本的人権は尊重されているか
人権侵害(拷問、不法拘禁)の訴追、両性の平等、国際人権諸条約の加入および履行、
NGO および国際組織による効果的な人権監視
4. 市民社会とメディア
—市民社会は自由かつ効率的に運営されているか
NGO や集会の権利の国家による保護、活気のある市民社会、政策過程に影響を及ぼし、コミュニティ間の緊張を解く能力など
—どのようにメディアは独立しプロフェッショナルか
政府による検閲、あらゆる社会集団の見解を反映する能力、ジャーナリストの職業的訓
練へのアクセスなど
5. コミュニティーと紛争解決メカニズムとの関係
—帰属集団との関係がいかに良好か
主要帰属集団がお互いに混合する能力、人種・宗教的な暴力の頻度和解メカニズムの存在など
—国家はコミュニティー間の緊張や紛争を仲裁しているか
紛争当事者間の仲裁メカニズム(賢人、オンブズマンなど)、民族などの差異の政治的マ
ニピュレーション、紛争の防止や解決のための宗教的フォーラムの存在など
—管理されていない移民、難民の流れがあるのか
移民と受入側との間の社会的摩擦、移民・難民の基本的権利の尊重など
その104に続く 以上
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