「平成の船中八策」を実現する市民の会、その95(欧州連合における全労働 世界の労働者のたたかい①)
EU(欧州連合)とEUレベルの労働組合運動
EU(欧州連合)は2002年12月のコペンパーゲン首脳会議で、中・東欧などの10ヵ国の新加盟を決め、「グローバル化」の進行下でのさらなる拡張段階にはいった。EUの基本条約としてのニース条約は加盟国批准手続きを終え、2003年2月正式に発効した。99年にEU内の12ヵ国で発足し、2002年1月から現金流通も開始したユーロは、変動を経ながらも、信用を拡大しつつある。一方、経済グローバル化のもとでの国際競争の激化とリストラの波はEUとその加盟国にも大きな変化をもたらし、労使関係当事者、とくに、労働組合に新たな対応を迫っている。また、この間の各国の選挙を経て、EU15ヵ国の「中道左派」政権と「中道右派」政権の数は2002年末現在で、6対9(下記参照)へと大きく「右」に傾いた。この変化は労働問題の分野ではなく、とくに各国労働法制の改悪をもたらしつつある。
「中道左派」=ベルギー、フィンランド、ドイツ、イギリス、ギリシャ、スウェーデン
「中道右派」=オーストリア、デンマーク、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン
そうしたなかでの2002年、EUレベルでは労使関係や社会福祉を重視する「欧州社会的モデル」の継続発展、その方向性が改めて問われ始めている。
EU議長国は2002年前半をスペインが、後半をデンマークが務めた。03年は前半をギリシャが、後半をイタリアが務める。
2002年の経済指標は、経済(GDP)成長率0.8%(ユーロ12ヵ国平均、「欧州委員会経済予測2002年秋」による推定値、以下同様)、消費者物価上昇率2.1%、失業率8.2%(対前年比0.2%増)、財政赤字(対GDP比)2.3%、累積債務(対GDP比)69.6%、とかなり厳しい状況だった。
■2002年の主な闘い・できごと
1.EU関係
- 1月15日、欧州委員会が「賢明なリストラ」合意(協約)の取り組み(労使関係当事者との協議)開始
- 2月28日、労使関係当事者が職業訓練協約に調印
- 3月15~16日、バルセロナEU首脳会議
- 3月20日、欧州委員会が派遣労働者指令案を提案
- 3月23日、一般労使協議会指令を公布(EC官報に掲載)
- 3月23日、労働時間指令を路面運輸労働者にも適用
- 6月19日、航空管制労働者がEUの欧州空域単一化計画に反対してストライキ
- 7月2日、欧州委員会が「企業の社会的責任」緑書に関する利害関係者からの回答を総括し、「マルチ・ステイクホルダー(利害関係者)フォーラム」の設置など今後の推進方向を提案した通達を発表
- 7月16日、労使関係当事者がテレワ-ク労働協約に調印
- 10月5日、新均等待遇指令(76年の指令を修正)を公布
- 10月16日、欧州委員会が「企業の社会的責任」問題を検討する「欧州マルチ・ステイクホルダー・フォーラム」を発足(ブリュッセルで第1回フォーラムを開催)
- 11月20~21日、欧州議会が派遣労働者指令案の第一読会終了・修正を提案
- 12月12~13日、コペンハーゲン首脳会議
2.欧州労連(ETUC)および欧州レベルの産別または企業レベルの労働組合運動
- 3月13日、欧州の労組がEU首脳会議を前にバルセロナで4万人を超えるデモ
- 3月20日、ETUC、欧州産業連盟(UNICE)がイタリアでのビアージ氏暗殺への抗議声明
- 3月26日、運輸労働者国際統一行動デー、第3回国際鉄道労働者行動デー
- 5月23日、欧州退職・高齢者連合(FERPA)が基本的社会権を、策定中のEU新基本条約に盛り込むことなどを求めて各国で統一行動
- 4月15日、ETUCが16日のイタリア・ゼネスト支援声明
- 5月10日、欧州金属労連がドイツIGメタルの労働協約(賃上げなど)ストに連帯声明
- 7月9日、航空管制官が国際統一行動
- 11月6~10日、イタリア・フィレンツェで第1回欧州社会フォーラム開催、ETUCが正式参加、閉幕行事のデモ・集会に100万人参加
- 11月28日、欧州労使対話サミット開催
- 12月16日、欧州金属労連が呼びかけたイタリア・フィアット労働者への連帯行動日
■路面運輸の労働時間に関するEU指令を公布
EUは、路面運輸運転手の労働時間に関する指令(「移動路面運輸業務従事者の労働時間編成に関するEU指令2002/15」)を3月21日に公布した(4月26日発効)。加盟国はこの公布を受けた同指令の国内法化の措置を2005年3月までに取らなければならない。
これまで、トラック運転手などの移動路面運輸業務従事者に関する規制は、1958年に施行され、運転時間と休息期間に関する規制を示した「路面運輸関連特定社会法令の調和化に関するEEC規則3820/85」があった。しかし、これは労働時間全体への効果的規制に欠けていることや、自営運転手が除外されていること、監督制度が弱いことなどから、実効性の低いものとして労組側から批判されていた。
そうしたなか、1993年に公布された「労働時間編成の特定の側面に関する指令93/104」が、運輸部門を除く他産業の労働時間規制の基本的枠組みを示したが、移動労働者は適用除外とされた。
新指令(「移動路面運輸業務従事者の労働時間編成に関する指令2002/15」)は16条から成り、被雇用運転手と共に自営運転手を適用対象としている。
新指令は「週当り最長労働時間」を48時間とし、4ヵ月平均で週48時間を超えない場合にのみ、週60時間を認めている。複数の使用者に雇われている場合は、その合計労働時間としている。
その96に続く 以上
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