今回は「トルコのEU加盟問題」を取り上げて見たいと思います。
ト ル コ の E U 加 盟 に 関 す る 問 題 点 |
トルコのEU(当時はEC)加盟を前提にした連合協定は、すでに1963年に締結され、加盟申請は1987年4月14日に遡る。また、トルコ・EC間の経済統合を促進するため、1996年には関税同盟が結成され、1999年には加盟国になりうるとの決定が下されているが、トルコはまだ 加盟基準 を満たしておらず、加盟交渉すら開始されていない状態にある。申請国が加盟基準を満たしているかどうかは、欧州委員会によって調査されるが、2003年11月5日に公表された報告書(Strategy Paper と 2003 Regular Report [欧州委員会の公式サイト]) において、欧州委員会は、同イスラム教国の問題点を指摘している。その要点は以下の通りである。
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キプロス問題
地中海東部に浮かぶキプロス島は、紀元前前より、エジプト、ギリシャ、ペルシャ、ローマに支配されてきたが、1571年、トルコ領となった。1878年にはイギリスの統治下に入るが、1955年に反英運動が起き、1960年8月16日、正式に独立を達成している。
現在、キプロス島には、主として、ギリシャ系住民(全住民の70%を超える)とトルコ系住民が居住しているが、両者間の対立が続いている。1963年には少数派であるトルコ住民の権利を制限する憲法改正がなされたことをきっかけに内戦が勃発し、国連平和維持軍が派遣された。
また、1974年には、ギリシャの軍事政権の関与の下、ギリシャ系ナショナリストがクーデターを起こし、キプロスをギリシャに併合しようとしたが、トルコは、トルコ系住民の保護という名目で軍隊を派遣し、キプロス島の北部(全土の約37%)を占領した。そして、1983年11月15日、トルコ系住民からなるキプロス・トルコ共和国を樹立させた。なお、国連安保理は、この新国家樹立宣言を無効とみなし、独立国家として承認しないよう各国に要請している。そのため、キプロス・トルコ共和を承認しているのは、現在でもトルコのみである。
他方、島の南部にはギリシャ系住民からなる、キプロス共和国があり、南北両国が対峙する形となっている。単に、キプロスと呼ぶ場合は、ギリシャ系のこの国を指すが、1990年7月、キプロスはEU(当時はEC)に加盟を申請し、1997年12月、EU(EC)は加盟交渉の開始を正式に決定している。また、同年1月、キプロスはロシアとミサイルの購入契約を結んでいるが、これはトルコの反発を招き、翌年6月、トルコは戦闘機が飛行させる事態にまでいたった。
すでに1980年台初頭にギリシャがEUに加盟していることもあり、EUはキプロス共和国(ギリシャ系キプロス)を支持している。2003年8月8日、トルコとキプロス・トルコ共和国は、関税同盟の設立を目的とした協定を締結するに至った際も、欧州委員会はこのような協定は国際法上無効であるとして非難している。
キプロス島は、トルコの沿岸から、わずか100キロしか離れていない。安全保障上の理由から、トルコは、キプロスが「ギリシャ系の国家」になることに抵抗しており、現在でも、4万人規模の軍隊をトルコ系キプロスに駐留させている(他方、ギリシャもギリシャ系キプロスに軍隊を派遣している)。30年以上に亘る紛争の平和的解決は、トルコ(ないしトルコ系住民)の態度に大きくかかっていると言えるが 、トルコは従来より態度を軟化させている。かつて、トルコは、全島を支配しようとするギリシャ系キプロスの計画に異議を唱えていたが、数年前、Erdogan 首相 は方針を変更し、両キプロスの統一を容認するようになった。その背景には、EU加盟という長年の夢を実現するため、EUとの関係改善を重視したことがある。
トルコがEU加盟を実現する見通しは、現在でもまだたっていないが、他方、(ギリシャ系)キプロスは、2004年5月に目標を達成した(EUの東方拡大)。キプロス問題がEU内に持ち込まれることを避けるため、EUは和平交渉を進めてきたが、失敗に終わっている。また、国連の主導下でも、南北の平和的統合に向けた協議が行われたが、当事国間での交渉は決裂し、決断は両キプロスの国民に委ねられることになった。国連和平案の是非を問う国民投票は2004年4月24日に実施され、トルコ系キプロスの住民は国連案を支持したが、ギリシャ系キプロスの住民によって否決され、南北統一は達成されなかった。 その108に続く 以上
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