オーストリア首相、交渉結果に誇り
2005年10月3日夜、EU加盟25ヶ国の外相は、トルコとの加盟交渉の
枠組みについて合意するに至ったが、オーストリアの抵抗により、
協議は約30時間にも及んだ。24対1という孤立無援の状況下において、
オーストリアは、EU加盟に代わる選択肢
(特権的パートナーシップの締結)の導入を断念しているが、10月3日、
同国の Schüssel 首相は、協議の結果に満足していると述べた。これは、
以下のように、オーストリアの要求が受入れられたことによる。
(1) |
トルコのEU加盟について決定するにあたっては、
EUの受容力(そもそもEUはトルコを迎え入れるだけの
余力があるかどうか)について検討する。
これは、オーストリアの要請に基づき、初めて、
第3国のEU加盟要件
(EU条約第49条参照)の中に取り入れられた。
この要件について ①、② |
(2) |
トルコのEU加盟に必要な財政的負担は公平
にする。つまり、現在、
イギリスに与えられている恩恵 を見直す。 |
さらに、クロアチアとのEU加盟交渉についても決定された
ことは、オーストリアの要望にかなっているが、Schüssel
首相や3日の外相会議の議長を
務めたイギリスの Straw 外相は、トルコとの加盟交渉
開始と関連性を否定している。また、Schüssel 首相は、
最終的に譲歩した背景にアメリカの
影響があったことを否定している。
オーストリアの懸念
オーストリアが、トルコとの加盟交渉になかなか「ゴーサイン」を出さな
かった理由として、① 2005年10月2日に地方選挙(Stiermark 州議会
選挙)が予定されていたことや、② クロアチアとの加盟交渉開始の交
換条件に利用したことなどが指摘されているが、オーストリアの
Schüssel 首相はこのような憶測を退けている。同国が根強く反対した
のは、むしろ、国民の80%がトルコのEU加盟に反対していることにあ
ろう。Graz 大学の Isak 教授(EU法)も世論を主たる理由として捉えている。
国内の主要政党も、イスラム文化圏に属する国のEU加盟に反対
している。唯一、緑の党は、EU加盟を支持しているが、かといって
、積極的に支援しているわけではない。
また、オーストリアは、ドイツや他のEU加盟国のように、トルコとの
経済関係が強いわけではない他、トルコの圧倒的大きさを挙げるこ
とができる。なお、オーストリア国内には、13万4500人のトルコ人が
移住しているが(EU内では、フランスやドイツに次いで最も多い)、
国内社会への溶け込みの弱さも指摘されている。 |
|
従来、国内の諸政党が国境を越えて団結し、EUの政治
について見解を明確に主張することは容易ではなかったが、
2004年の欧州委員会の人選 の際には、各党派の主張が
目立った。今回、オーストリアの Schüssel 首相は、
保守派(キリスト教民主主義を掲げる諸政党)の代弁者
としての役割を獲得しようとしたものと思われる。 |
|
保守系政党の中でも、特に、ドイツの CDU・CSU は、
トルコのEU加盟に強く抵抗しており、各国の同盟政党に
トルコのEU加盟反対を呼びかけているが、現在、
野党である CDU・CSU は外相会議には参加しえなかった。
そのため、党是を同じくするオーストリア国民党(ÖVP)
の Schüssel 首相に希望を託していたと解される。 |
(参照) |
Vertretung der Europäischen Kommission,
EU-Nachrichten, 2005, Nr. 35, Seite 6 ("Bürde oder Chance") |
その133に続く 以上
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