「平成の船中八策」を実現する市民の会、その176[欧州連合における(EU加盟国の拡大に伴う問題点⑧)」
「質疑応答」
質問 一つはヨーロッパでなぜこのように早く国民国家を超える動きが出てきたのか、二つ目は国民国家とグローバライゼーションという二つの潮流の中で、アメリカという国家はどのように位置付けられるのか。
宮島 前者については、直接的要因は二回の世界大戦が起きたということであったと思います。チャーチルが1946年にチューリッヒ大学で、ヨーロッパは一つにならなくてはいけないという趣旨のことを述べるのです。イギリスの伝統的勢力均衡論者の彼をしてそのように言わせたのは、やはりヨーロッパについて相当に深刻な危機感があったのであろうと思います。
もう一つは、確かにヨーロッパでは国民国家が並立していたのではあるが、各国に共通の文明的基礎があったということです。たとえばローマ法とかキリスト教がそうです。また国境を超えて人が交流することが頻繁に行われてきたということも無視できません。
アメリカという国民国家は、移民から成り立っており、ヨーロッパの国民国家とは異なり、国家を超えようという動きは顕著ではありません。もちろん経済的な連携で国境を低くしようということはあります。たとえばNAFTAがそうです。ただアメリカの国家に対する考え方には、歴史的な違いが大きいと思います。今のところ国民国家を弱めようというような方向には向いていません。
質問 アジアではヨーロッパのような共同体が可能であるのか。
宮島 たとえばASEANのような自由貿易圏を東南アジアでつくることは不可能ではないと思っています。その際先ほど述べたように日本の過去の戦争に対する謝罪が必要になってくるとは思いますが。もう一つは日韓関係です。たとえば韓国は「日韓覚書」以来、在日の韓国人に対して選挙権を与えるようにという主張をしていますが、この背景には日本に在日韓国人が多数居住しているという事実がある。このようなことがきっかけになるということも考えられます。
質問 日韓の民族的な違いというのは、ヨーロッパで比較するとどの程度のものか。
宮島 韓国人と日本人との違いは、ヨーロッパ人からみればおそらく同じファミリーであると思われているのではないかと思います。過去の問題が解消できれば一緒に行動できる国であると思います。
質問 韓国と日本についてであるが、民族問題というよりも、日本が第二次大戦の後始末に関して勝手に問題を背負い込んでしまったのではないか。つまり戦争責任を取って天皇が退位する、戦争時の政治家が戦後政治に携わるようなことをしないというようなことが行われていれば、この問題がこのように尾を引くことにはならなかったのではないか。
宮島 それについては、ドイツとフランスの関係の例が参考になります。政治指導者たちはお互いに理解し合っていい関係を築いてきたということですが、庶民レヴェルでは必ずしもそうではないということをよく耳にします。フランス人の中にいまでもドイツ人が嫌いであるという人は結構多いようです。過去を率直に見つめ指導者同士の信頼をます築くこと、時間をかけて民衆同士の交流を進めること、これが大切でしょう。
質問 ヨーロッパの司法システムはどのようになっていくのか。
宮島 ヨーロッパはアメリカほど訴訟社会ではありません。したがって訴訟に持ち込むという方法ではなくて紛争を解決するということで問題の解決が行われていると感じます。なお、法体系が異なる国家同士の紛争になると手に負えないというようなことは起こってくる可能性があります。私が接した法律家によると、大陸内ではあまり問題はないといっていますが、イギリスとの紛争は法体系が違うのでむずかしいということのようです。EUの司法はこのような問題について一体どのように処理をしていこうと考えているのか。この点は重要です。
質問 コソボ問題を背景としてイギリスとアメリカの関係は、仮にブレアとクリントンとの個人的関係という問題を割り引いたとしても、これからヨーロッパの統合問題に対して幾ばくかの圧力になると考えられるが、これについてはどのように思われるか。
宮島 推測の域を出ない話しになりますが、なぜNATOの下にアメリカはユーゴに対する空爆を行わなかったのかといえば、それはクリントンが、自らの弾劾問題をそらそうとしたということもあったのではないかと思います。もう一つは、積極的だったイギリスに関してですが、通貨統合で乗り遅れているイギリスが、5月1日のアムステルダム条約発効に際して、EU軍創設に関し、その主導的プレゼンスを提示しておきたかったからではないかと推測します。
質問 EUの成功には対米関係が重要ではないかと考えられますが、その場合ブレアが米国とEUの間で調整的な機能を果たしうるのか。つまりアメリカも納得した上でのヨーロッパ統合ということですが、その場合イギリスはどのようにその力を発揮しようとしているのか。
宮島 イギリスは従来NATO重視で来ました。ブレアが欧州軍に対して積極的になってきたのはNATO離れでもあると思います。アメリカとして、ブレアの欧州軍への熱意は実は、ありがたいというように考えているのかも知れません。NATO軍の維持はアメリカにとってもその負担は計り知れないものがありますし、その代行を欧州軍が行ってくれることは寧ろ歓迎していることなのかも知れません。
ただ心配なのはイギリス式のやり方がヨーロッパの将来の外交防衛政策に出て来ると、ドイツ、フランスなどは、EU内的合意を重視していくやり方の国ですから気になるのではないでしょうか。また、先に述べたように中立国も戸惑いをみせるでしょう。
その177に続く 以上
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