「平成の船中八策」を実現する市民の会、その181[欧州連合における(廃棄物処理の現状⑤)」
4.有害廃棄物の越境移動の規制に関するバーゼル条約の締結
危険工業廃棄物の越境移動を禁止し,自国内処分の原則を規定した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が国連環境計画の主導により1989年に採択され1992年5月5日に発効した。欧州連合は規則を制定して,1994年5月からこれを実施に移した。
5.問題となった危険工業廃棄物の越境移動例
危険工業廃棄物の中には,バーゼル条約や国内法の規定に反して輸出されている例がある。環境保護団体グリーンピース(Green Peace)が報告している中に次の例が挙げられている。
(1) ドイツからの英国への危険工業廃棄物の輸出
1989年11月に470トンの有機溶剤,酸,アルカリ及び重金属を含む危険工業廃棄物がドイツの工業廃棄物処理業者により非鉄金属残滓としてドイツから英国へ輸出され,英国の工業廃棄物処理業者の倉庫に保管された。その一部はエセックス州にある廃棄物最終処分場に廃棄された。この危険工業廃棄物は,1990年8月エセックス県当局によって発見され,その処理は英国国内法に違反するとして裁判所に提訴された。結局,判決にしたがってその廃棄物はドイツに戻された。
(2) スペインにおける水銀廃棄物
1990年にスペイン南部のアルマーデン地方の廃棄物処分場で,水銀に汚染された危険工業廃棄物数千トンが発見された。同処分場には1980年以来1.1万トン相当の危険工業廃棄物が欧州連合諸国や米国,オーストラリアから持込まれていた。これらの危険工業廃棄物は,塩素,アルカリ,バッテリー,殺虫剤等の,製造過程で発生したものであった。
1991年2月スペイン政府は同処分場が環境上問題があると判断し,その投棄を禁止した。結局,その危険工業廃棄物は別の処理場に移し換えられて処分された。
(3) アルバニアへの危険工業廃棄物輸出
500トンを超える使用が禁止されている殺虫剤が廃棄処分のため1991年と92年にドイツからアルバニアへ輸出された。これら殺虫剤には農業用のリンデン殺虫剤や他の有機塩素化合物,さらに高濃度ダイオキシンを含む除草剤が含まれていた。
これらの危険工業廃棄物をドイツ国内で処理するためには,トン当たり8,000マルクの費用がかかるため,処理業者が環境省の許可を得てアルバニアに輸出したものであった。グリーンピースの調査によれば,これらの危険工業廃棄物は,アルバニア国内の6ヶ所の処分場に放置されたままになっていた。1993年,事態を知ったアルバニア政府は,ドイツ政府に対し本件に関し適当な措置をとるよう要請した。結局ドイツ環境省はこれらの廃棄物を本国に戻すことに同意し,これが実施された。
(4) 英国からメキシコ,ボリビアへの危険工業廃棄物の輸出
1991年に北東イングランドにある金属精錬所が閉鎖され取り壊された。その際解体された溶鉱炉から静電気を滞びた錫の残滓3,500トンが発生した。このうち600トンはボリビアの廃棄物処理工場に輸出された。しかし,工場は廃棄物が到着する数ヶ月前に閉鎖されたため,そのまま放置された。別の500トンは最終処分のためメキシコに輸出された。しかし,グリーンピースの反対もあって大部分は英国に戻された。残った39トンの危険工業廃棄物はメキシコの別の工業基地に移動され放置されている。英国に戻された廃棄物は精錬所の跡地に放置されたままである。
その182に続く 以上
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