「平成の船中八策」を実現する市民の会、その184[欧州連合における(廃棄物処理の現状⑧)」
(3) 塩素溶剤
有機塩素化合物の生産と消費は過去20年間に増加し,1989年時点で60万~80万トンが使用されたと推定されている。これは主として塩素溶剤が中間材として利用されることが多くなったためである。塩素溶剤の利用は,金属の錆止め,ドライクリーニング,塗料の除去剤や化学製品製造のための中間材等である。
塩素溶剤は人の健康と居住環境に様々な脅威を与えている。濃度の高い塩素溶剤に長期間接していると人体に害になり,特に発癌や奇型病発生の原因になると懸念されている。塩素溶剤は大部分が空気中に発散されるが,空気中に漂うことにより生態系にいろいろな影響を及ぼす。また,飲料水を通じても人体に害を与える。さらに,塩素溶剤の燃焼の結果発生するフロンガスは,成層圏のオゾンを消滅させたり,地球温暖化をもたらす原因ともなる。欧州連合は,「オゾンを破壊する物質に関するモントリオール議定書」(1987年)を実施することにより,特定フロン(CFC)発生の原因となるこれらの物質の使用を,議定書の規定よりも10年早く,1995年までに禁止した。
塩素溶剤のうち空気中に発散されなかったものは,残滓として廃棄物の中に残される。欧州連合全体で年間20万トン程度の塩素溶剤廃棄物が発生していると推定されている。そのうち半分程度が再利用のため回収されているが,再利用の用途は限られており,その利用先の開発が必要となっている。
塩素溶剤を含む廃棄物の量を減少させるためには,いくつかの方法がある。
生産面
(ア) 生産工程の変更
金属及び印刷産業では,化学溶剤を水溶剤に変更している。
(イ) 溶剤を他の物質に置き換える
塩素溶剤に代ってアルカリ溶液を使用する(デンマーク,スウェーデン,オランダの例)。
(ウ) 溶剤の使用量を少なくする。
(4) 古タイヤ
ア 廃棄物発生量
使用済古タイヤは,製造品の中で最大容量の廃棄物を発生させる。欧州連合内で年間200万トンにものぼる使用済古タイヤが発生する。このうち46%は廃棄物処分場に放置され,31%は再処理されて,原材料やエネルギー源として利用される。残りの23%が中古タイヤとして再利用される。
車の生産は年々増加し,それに伴なってタイヤの需要も乗用車では1.4%,商業用車では2.2%程度増加している。タイヤの使用期間は過去10年間で5%長くなったが,使用済タイヤの発生量は増加傾向にある。
使用済古タイヤの処理は環境問題に大きな影響を与えている。乗用車用タイヤの重量は一本平均7kgで,その構成は炭化水素48%,炭素22%,鉄15%,繊維5%,亜塩酸化物1%,硫黄1%である。硫黄によって処理されるとバクテリアよって分解されることがなく,最終処分場に捨てられても長期間現状を維持することになる。また,管理が悪いと火事の原因ともなる。
古タイヤ廃棄物の増量傾向を抑制するためには,主として道路輸送,特に乗用車の使用を少なくすることが必要である。タイヤの使用期間を長くするのも一つの方法であるが,安全上の理由から限界がある。古タイヤの溝を堀り直すことは,再利用を促進する上で効果がある。さらに,古タイヤを護岸,道路,土木工事用に使用したり,建物基盤の絶縁や防音壁に使うことも効果がある。
イ 処理方法
古タイヤの処理方法としては,燃焼と溶解の二つの方法がある。
(ア) 燃焼
細く切って,火力発電所で燃料として使用されているが,石油等化石燃料ほどには清浄でない。セメント工場のキルンの中で燃焼させるのは,比較的環境に優しい方法と考えられている。
(イ) 溶解
加熱により溶解して,鉄,炭素,原油,ガス等有用物質が得られる。しかし製品の質が一様でないことや,施設建設に費用がかかることが欠点となっている。
欧州連合は古タイヤを最終処分場に放置することを全面的に禁止することを目標にして,上記処理方法の技術的改良をはかっている。
(5) 使用済車輌
現在使用済車輌のうち,重量で25%が最終処分場に放置されている。しかし,今後は部品の回収率を高めるとともに,焼却炉で処理する割合を上げ,放置率を2015年までに5%程度にまで下げるよう使用部品の改良のための研究が続けられている。
その185に続く 以上
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