「平成の船中八策」を実現する市民の会、その238[欧州連合における(再生可能エネルギー開発問題47)」
3-5-4 自動車燃料用バイオガスの製造
しかしながら、バイオガスをCHP プラントで利用することが、必ずしも
最善な利用法となるとは限らない。たとえば、夏の季節や地域によっ
ては熱源の活用方法が見つからない場合がある。そのため、都市ガ
ス用のガス源、あるいは、CO2 を発生しない自動車用燃料として利
用可能なバイオガス精製プロセスが開発された。
天然ガスを燃料とする自動車は、排気ガスによる汚染が少なく都市
内での利用に適している。精製されたバイオガス(以下、コンポガス
(Kompogas)という)は、天然ガスの利点の全てを持っており、その第
一はCO2 を発生しないこと、第二は排気ガスに含まれる人体に有害
な物質が通常のディーゼル・エンジンからの排気ガスに比べ約70%少
ないこと、第三にオゾン発生のポテンシャルが60~80%低いことなどで
ある。さらに、バイオガス製造プラントは、それぞれの地域に合った
規模(すなわち、小規模)で分散設置できるので廃棄物の輸送距離
が短くなり、輸送に伴う大気汚染も削減される。
3-5-5 チューリッヒ市の廃棄物リサイクル
チューリッヒ市ミグロスのスーパーマーケット、レストラン、製造工場
などから毎年2,500トンの有機廃棄物が発生している。これらの廃棄
物を堆肥化する過程で発生する悪臭が常に問題化しており、また、
狂牛病が騒がれている時に、これらの廃棄物の一部が豚の餌に利
用されていることに不信を示す顧客がいた。現在は、有機廃棄物は
クリーンなエネルギーを製造するために利用されている。レストラン、
食品売り場等から排出される有機廃棄物の100%が収集され
KompogasAG 社の嫌気性微生物バイオガス製造工場に運ばれる。
バイオガスは以下に述べる精製プロセスを経てCO2 を発生しない自
動車用燃料ガス(コンポガス)としてガス充填ステーションに供給され
る。
ガスエンジン・トラック(税制上の優遇措置なし)は、環境的には好まし
いが、ディーゼル・エンジン車より高価なため車両の取得費が高くつ
く。しかしながら、コンポガスには課税されていないので燃費が安くな
り、長い目で見ると高い車両取得価格が薄められ結局安くなる。
ガスエンジン車が普及するにつれ、ガス充填ステーションネットワーク
が拡大し、コンポガス価格も低下すると見込まれている。更に、この
種の燃料製造はスイスの地方経済を活性化し、雇用を増やすことに
なる。比較的小規模なミグロスにおける年間2,500 トンの有機廃棄物
からのバイオガス生産でも、ディーゼル油換算で200,000 リットル、貨
物輸送車を606,000km(377,000 マイル)走らせる燃料に相当する。
3-5-6 コンポガスの製造
KompogasAG 社の嫌気性微生物分解プラントで製造されたバイオガ
スは、まず、第一段階として、活性炭フィルターの触媒作用により脱
硫される。ついで、乾燥加圧された後、吸収装置でCO2 が吸収され
てメタン含有率の高いガスとなる。以上のようなプロセスを経て精製
されたバイオガス(コンポガス)は、天然ガスと同等品質となり、自動
車用燃料として、あるいは、天然ガス・パイプライン・ネットワークの
ガス源として利用される。
現在稼動しているガス精製装置は、35 立方メートル/時のコンポガ
スを連続して製造できるものである。自動車用燃料として、コンポガ
スは天然ガスとブレンドされ、Naturgas の商品名で販売されている。
コンポガスの価格は、優遇税のお陰でガソリンより33%安く、ガスエン
ジン車を環境面ばかりでなく経済的にも有利なものとしている。なお、
自動車用ガス充填ステーションは、チューリッヒ地域でここ数年来拡
充されつつある。
3-5-7 まとめ
スイスは小国であり、年間100 万トンの木質系廃棄物が排出されて
いるに過ぎない。しかし、この全てを嫌気性微生物分解により処理し
てコンポガスに変換し、自動車用燃料として利用すれば、10 億km、
すなわち、10 万台の車をそれぞれ1 万km 走行させることができる。
その239に続く 以上
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