「平成の船中八策」を実現する市民の会、その243[欧州連合における(再生可能エネルギー開発問題52)」
4-2-2 再生可能エネルギー開発計画
再生可能エネルギーの開発目標および開発政策の策定は、一義的
には各地方政府の権限であり、かつ、義務である。ただし、洋上風力
の開発は、連邦政府の責任とされている。なお、連邦政府は、洋上
風力開発のほか、再生可能エネルギー開発促進のための料金の決
定と財政支援に関する責務を負っている。
連邦政府は、2010 年までにエネルギー消費に占める再生可能エネル
ギー比率を6%とする目標値(EU 委員会がベルギー政府に課した達
成努力目標値と同じ)を設定すると共に、再生可能エネルギーの開発
を促進するための補助金(投資金額の10~20%相当)の支出と、グリ
ーン電力証書制度の導入を決定した。
追記
ベルギー議会(下院)は、2002 年12 月6 日、原子力廃止法案を採択し、
上院に送付した。法案の内容は、運転寿命40 年で廃止するという内容
のもので、2003 年2 月までには上院を通過すると見られている。
ベルギーで運転中の原子炉は7基あり、年間460 億kWh を発電、同国
の総発電電力量の60%を占めている。これらを、2015 年から2025 年に
かけて順次廃止するものである。460億kWh 代替電源としては、熱併給
発電と再生可能エネルギーで130~290 億kWh、残りを天然ガス火力で補
う計画である。なお、再生可能エネルギー発電としては、洋上風力が考
えられている。
4-2-3 グリーン証書制度の導入
ベルギー政府(連邦政府、3 地方政府(ワロン、フランドル、ブリュッセル))
は、再生可能エネルギーの開発を促進するために、政府支援策の一環と
して、グリーン証書制度を導入した。
ベルギーのグリーン証書制度は、連邦政府、地方政府がそれぞれ独自の
法律により導入しているため、その内容は少しずつ異なっているが、
基本的には英国の制度と同じである。
すなわち、
① 可能エネルギーを利用して発電された電力(グリーン電力)が電力系
統に送電されると、送電されたグリーン電力の一定量(1MWh)ごとに
グリーン証書が発電者に交付される。グリーン証書は、需給関係で
決まる価格で売却できる。従って、発電者は、グリーン電力の販売収
入の他にグリーン証書の売却収入が得られる。
② 一方、電力供給者には一定割合のグリーン電力の供給が義務付け
られる。電力供給者は、グリーン電力供給義務を果たしたことを証
明するために、供給義務に相当する枚数のグリーン証書を定めら
れた期限までに提出しなければならない。未達の場合には罰金が
課される。
③ 電力供給者は、未達の場合に課される罰金を免れるために、グリ
ーン証書をグリーン市場から購入して義務を果たすことができる。
以上がグリーン証書制度の基本的内容であるが、本制度の狙いは、
再生可能エネルギーの開発支援といえども経済性の追求が必要で
あり、このためには市場原理(競争原理)を使って最も経済的な開発
を実現しようというものである。グリーン証書購入義務が証書の需要
を生み出し、再生可能エネルギーの開発意欲を引き出すことになる。
なお、再生可能エネルギー開発の長期目標を達成するために、グリ
ーン電力購入義務は、年々引き上げられるのが一般的である。(詳し
くは、平成12 年度経済産業省委託業務成果報告書「欧州諸国の再
生可能エネルギー開発利用の現状と開発政策に関する調査報告書」
のp.11‘1-3-1グリーン証書制度’を参照されたい)ベルギーにおけ
るグリーン証書制度の特徴は、グリーン証書の最低保証価格が政府
によって定められており、再生可能エネルギー設備へ投資する投資者
のリスク軽減が図られていることである(表-2参照)。
表-2 グリーン証書の最低保証価格(連邦政府レベル)
再生可能エネルギーの種類 最低保証価格(ユーロ・セント/kWh)
風力(洋上) 9
風力(陸上) 5
小水力 5
太 陽 15
その他(含むバイオマス) 2
グリーン電力供給義務(割当て)は、下記のように導入当初は低いが、
年々引き上げられ、EU 指令に示される再生可能エネルギー比率(ベル
ギーの場合、2010 年に6%)を満たすことになる。
記
ワロン地方 :2.9%(2002 年)→5.0%(2005 年)→12.0%(2010 年)
フランドル地方 :1.4%(2002 年)→3.3%(2005 年)→5.0%(2010 年)
ブリュッセル市 :未定
但し、ワロン地方の再生可能エネルギーには、熱併給発電が含まれて
いる。連邦政府、フランドル政府およびブリュッセル政府は、化石燃料
による熱併給発電をグリーン電力と認めていない。なお、電力供給者
が上記割当てを達成できなかった場合に課されるペナルティーは、ワ
ロン地方では2002 年に7.5 ユーロ・セント/kWh、2004 年に10 ユーロ・
セント/kWh、フランドル地方では一律10 ユーロ・セント/kWh と、いず
れも、かなり高額な水準に定められている。
その244に続く 以上
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