「平成の船中八策」を実現する市民の会、その257[欧州連合における(再生可能エネルギー開発問題66)」
4-8-6 成功の要因
以上のようなナバーラ地方におけるRES 開発が大きく進展した要因
として、以下のようなことが挙げられる。
(1) 国・地方レベルのRES 開発計画の策定と実施
“国家エネルギー節約および効率化計画(PAEE)1991-2000”は、
2000 年までにRES の利用を110 万トン(石油換算トン)増加させ、発
電電力におけるRES 比率(大規模水力を除く)を1990 年の0.5%から
2000 年までに1.4%に増加する内容のものである。PAEE による開発
支援は、当初は国家レベルの援助であったが、後半に地方の自治体
の援助に移管された。これを受けて、ナバーラ地方政府は、ナバーラ
地方の電力消費の100%をRES で発電する(風力発電で50%を賄う)
という計画を1996 年に採択し、RES 開発を地域の共同事業として、
優先的に推進することとした。
RES 開発に関する責任は、主として自治体にある。従って、RES 開発
プロジェクトが実施されるに際し、計画立案、環境影響評価など各種の
行政上の権限は、それぞれの自治体にある。
ナバーラ地方政府は、地域内のウインドファーム開発に関する許認可
を迅速化するために、諸手続きの合理化を進めた。さらに、RES 開発
を専門とする官民合同企業のナバーラ水力発電会社(EHN 社)を1989
年に設立した。EHN 社の株主には、政府、地域の電力会社、地域産業、
地方銀行が含まれている。
1996 年6 月、ナバーラ地方政府は、EHN 社の「ナバーラ地域風力開発
計画(2010 年までに575MW 建設)」を承認した。
(2) 優遇価格での買い上げ制度
1990 年代においてRES 発電、ごみ発電あるいは熱併給発電を促進した
主な要因の1つに、王室指令がある。この勅令は、平均電力販売価格の
80~90%に固定した優遇価格で買い上げることをRES 発電者に保証し
ている。1999 年からは、風力発電者は、ESP(ペセタ)10.42/kWh(0.06
ユーロ/kWh)の固定価格か、あるいは、1 時間毎の平均電力市場価格
にESP4.79/kWh(0.03 ユーロ/kWh)のボーナスを加えた価格の、いず
れかで販売することができるように改定されている。また、決められた料
金で、RES 発電電力を系統に接続できることが保証されている。
(3) 国及び地方政府による財政補助
PAEE は、建設費の30%を上限とする資金をグラントの形で補助するこ
とを定めている。これに加えて、地方政府は、プロジェクトの資金手当て
や投資に関して支援している。スペインにおける風力開発が予期以上
に成功したことから、PAEE による補助は削減されてきている。
(4) 技術蓄積と風力産業の育成
風力発電技術の成熟が建設費および運転維持費の削減をもたらし、
スペインの風力産業の発展に大きく寄与した。ナバーラは、もともと工
業化されている地域であるが、ナバーラ地方政府による風力開発へ
の支援が環境面での便益ばかりでなく、新規雇用や産業開発への寄
与を通じて経済面での便益をもたらしている。
とくに、官民合同で設立されたEHN 社による風力タービンの地元企業
への発注が風力産業を興す契機となった。EHN 社も資本参加して、
ナバーラに設立されたガメサ社(Gamesa Eόlica)は、今やスペインに
おける最大の風力タービンメーカーに成長しており、世界のトップ・テ
ン風力タービンメーカーの1 つに数えられている。
さらに、El Perdon ウインドファームの第1 期建設が、ナバーラにター
ビンブレード製造工場、風力タワー製造工場および風力タービン発
電機組立工場の3 つの工場を立地させた。ナバーラにおける風力
産業は、今では1,300 人以上の新規雇用を生み出している。
(5)RES 便益の周知徹底
EHN 社を含む風力ディベロッパーは、新規プロジェクトを立ち上げる
前に広い範囲の関係者と協議し同意を取り付けている。協議の対象
は、地元住民の他に、地方議会関係委員会、保守的団体、山岳協会
等を含み、多岐にわたっている。また、地域住民の支持を確保し維持
するために、地域のエネルギー計画と風力エネルギー開発によって
得られる便益について、情報提供するためのキャンペーンが政府並
びにディベロッパーによって行われている。
その258に続く 以上
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