「平成の船中八策」を実現する市民の会、その258[欧州連合における(再生可能エネルギー開発問題67)」
4-8-7 バレンシア自治州の風力開発
2003 年2 月24 日(月)、スペインのバレンシア自治州エネルギー庁
(Agencia Valenciana dela Energia, AVEN)を訪問、同庁部長Mr. Antonio
Cejalvo、他4名と面談し、バレンシア自治州政府の風力開発計画に
ついて聞き取り調査をおこなった。
4-8-7-1 バレンシアのエネルギー事情
バレンシア地方は、スペイン東部の地中海沿いに位置し、人口400
万人を擁し、スペイン総生産の10%を生産している。エネルギー消
費は、全国の8.6%であるが、季節変動が大きく観光シーズンには大
幅に増加する(なお、バレンシアの地形が三重県に似ていることもあ
り、両者は、姉妹県協定を結んでいるとのこと)。バレンシア地方に
は化石燃料が産出せず、エネルギー自給率は僅か2.9%で、エネル
ギーの安定供給に問題を抱えている。そのため、バレンシア自治州
政府は、風力、太陽光およびバイオマスを中心とする再生可能エネ
ルギーの開発による自給率の向上をエネルギー政策の柱としている。
なかでも、風力資源に恵まれている地域の特性を生かして風力開発
に力を入れており、2010 年までに再生可能エネルギーの半分以上を
風力エネルギーで賄う計画である。
4-8-7-2 風力開発計画の策定
1999 年12 月に、バレンシア自治州政府は,同州のエネルギー自給
率の向上を目的とした「風力発電計画」を策定した。なお、同計画には、
経済開発の遅れた内陸部に風力設備を開発することにより、社会、経
済および環境の改善を図る狙いもある。同計画の具体的目標は、次の
とおりである。
* EU 委員会のエネルギー白書に述べられている、2010 年、RES
供給12%実現への寄与
* エネルギーの多様化と自給率の引き上げ
* 雇用の創出(2 万人の直接雇用増と2,000 人の間接増)
* 近代化された技術集約産業の創出
* 内陸部の電力施設の開発と改善
* CO2 排出量の削減
* 農村地域における税収の増加
* 環境保護、とくに森林資源の保全
上記計画は、いくつかの段階を経て実施される。
第一段階:風力開発に適した地域の選定気象と地形に関する過去
の多くの調査と、専門家による風況調査に基づいて、風力発電に適
した地点を選定する(第一段階終了)。
バレンシア市
第二段階:具体的開発計画の策定と関係機関の支援要請周辺環境
への悪影響を出来るだけ少なくするために、居住区から少なくとも
1kmはなれたところに風力発電設備を設置するという条件の下に、
第一段階で選定された適地から、15地点が開発地点として決定され
た(図-3参照)。
バレンシア自治州における風力開発地点(合計15ヶ所)
本計画が成功するか否かは、かなりの程度、実施主体が民間資金
を集めることができるかどうかに懸かっている。現在、17 のグループ
(コンソーシアム)が風力開発に参加を希望している。これらのグルー
プに対し、近く、応札が求められる予定で、入札の結果をもとに、5 の
コンソーシアムによる開発実施主体が決まるとのことである。なお、決
定された15 風力開発地点名および5 グループ名については、2003 年
3 月中旬ないし4-8-7-3 風力開発による経済効果
15 地点における風力開発計画は、2010 年までに2,720 基の風力
タービン(総出力1,695MW)を設置するというもので、その経済効果は、
12 億ユーロの投資と2 万2,000 人の直接間接の新規雇用が見込ま
れるとされている。また、170 万kW の風力発電設備の稼動により、
年間40 万トンの石油消費が削減され、その結果、大気汚染物質は
CO2 が320 万トン、SO2 が5.7 万トン、NOx が8,500 トン、それぞれ
削減されると計算されている。これらの削減効果は160 万本の樹木
に相当する。なお、風力発電設備からの電力量は、固定価格買取法
(Feed-in tariff Law)により、政府が定める固定価格(プレミアム価格)
で電力会社に売電できる。そのため、風力設備への投資は、7 年な
いし8 年で回収でき、投資家にとって魅力ある投資となっている。
下旬に公表されるとのことである。
その259に続く 以上
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