「平成の船中八策」を実現する市民の会、その262[欧州連合における(再生可能エネルギー開発問題71)」
(4)バイオディーゼル
キエティ県が力を入れているバイオマス開発の1 つに、バイオディー
ゼルの開発利用に関するプロジェクトがある。西洋アブラナや、ひま
わりから液体バイオ燃料を製造するプロジェクトは、農村や僻地の
雇用増加をもたらす効果が大きい。キエティ県のバスト(Vasto)に製
造工場が既に存在している。この燃料は、ある条件のもとで自動車
用燃料として利用できるが、ディーゼル油と太刀打ちするためには
価格の引き下げが必要である。キエティ県は、公共輸送機関用の
ディーゼル油に液体バイオ燃料を混合して利用する方法に特に高
い関心を持っている。
キエティ県の指導により、民間製造業者と公共交通機関との間で
協定が結ばれ、バイオディーゼルの試験的利用が実行に移されて
いる。同時に、県は、所有のガソリン車(バス)をディーゼル車に変
えている。なお、バイオ燃料の混合比率は25%である。
液体バイオ燃料は、公共輸送用に2000 年時点で3,000 トンが利用
されているが、キエティ県の総合開発計画には、2003 年6,000 トン、
2010 年10,000 トンに増大させる目標が示されている。
あとがき
今回の調査を通じて感じたこと、印象に残ったことを書きとどめて、
本報告書の結びとしたい。
その1 は、再生可能エネルギー開発におけるEU 諸国の真摯な努力
の姿である。EU 委員会の2010 年RES 開発目標は、RES 供給比率
を今後10 年間で2 倍に引き上げようとするものであり、一見容易に
みえるが、中身を検討すると、その達成にはかなりの努力が必要で
ある。すなわち、現在のRES 供給比率6%の中身は、大部分が水力
発電であり、しかも、その主力は、既に開発尽くされたか、あるいは、
自然環境保全のために開発が認められないダム式大規模水力で
ある。
従って、EU 委員会が設定した開発目標値12%を達成するためには、
10~15MW 以下の小水力をはじめ、風力、太陽エネルギー、バイオマ
スなど、いずれも小規模で、かつ、コストの高いRES 供給を、現在の
10 倍程度にする必要がある。
このため、EU 加盟国は、RES 開発促進のために、グリーン証書制
度の導入(オランダ、デンマーク、英国、イタリア、オーストリア、
アイルランド、ベルギー、スウェーデンで採用)や固定価格買取制度
(Feed-in tariff)の導入(ドイツ、スペイン、フランスで採用)をはじめ、
環境税、エネルギー税の導入など、真摯なRES 開発努力を続けて
いる。その努力の成果は、風力開発分野に顕著に現れており、世
界の風力開発の70%はEU 加盟国で開発されている。とくに、ドイツ
(世界第1 位)、スペイン(世界第3 位)、デンマーク(世界第4 位)にお
ける風力開発実績が著しい。
しかしながら、現在までのRES 開発実績をみると、別添に示すように、
RES の種類によって、その進捗状況はまちまちである。なかでも、
RES の60%を占めるバイオマスの開発利用が大幅に遅れており、
2010 年のRES 開発目標値12%を達成するためには、今後、バイ
オマス開発利用の大幅な拡大が必要であり、そのための決め手と
なる熱併給発電の開発をどのように進めていくかに関心が集まっ
ている。
その2は、再生可能エネルギー開発におけるEU 諸国の独自性で
ある。EU 諸国が注力するRES 開発分野やそれに関連する技術
分野について観察すると、それぞれ国によって異なり一様ではない。
それぞれの国には、それぞれの国に適した政策があり、また、
その国独自の技術がある。たとえば、スウェーデンやフィンランドは、
木質系エネルギー利用分野で先端技術を所有している。
デンマークおよびスペインは、優れた技術を持つ第一級の風力産
業を育成している。フランスは、バイオ燃料分野でリーダー格であり、
イタリアは地熱、英国はバイオガスの先進国である。
ドイツは、風力、太陽光、太陽熱利用技術で大きく進んでおり、
開発レベルで他国を大きく引き離している。
このような多様性と相互補完性は、EU加盟国内でのRES 開発に、
最先端技術を利用するうえで大きく役立っており、欧州をしてRES
開発の先進地域に押し上げる原動力になっている。その3は、再生
可能エネルギー開発に関して、欧州においては強固な政治的、
行政的連系が採られていることである。
EU が定めたRES 開発目標の下に、加盟各国が目標達成に向けて
一致協力して努力している姿が、その良い例である。
加盟各国に課せられたRES 開発目標値は、未達の場合の罰則規定
がなく、あくまでも努力目標として示された指標(indicative target)で
あるが、その目指すところは非常に高く、達成には相当の努力が
必要と思われる数値である。このたびの一連の調査を通じて、面接
したEU加盟各国のエネルギー担当者は、異口同音に、目標達成は
非常に厳しいが、京都プロトコルを守るためにもRES 開発は必須で
あり、課された開発目標達成に向けて最大限の努力をしており、
これからも努力する、と述べていた。
EU 委員会の支援のもと、各国政府は協調してRES 開発に精力的
に取り組んでおり、EU大での目標達成に大きな自信を持っている。
その263に続く 以上
(H15.3.10.K.T.記)
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