「平成の船中八策」を実現する市民の会、その273[欧州連合における(言語問題⑨)」
なぜ中国語ではだめなのか
こういった議論にもかかわらず、それでもやはりEUが一国の言語を
共通語に選ぶとしたら、一体どの言語になるでしょうか。選ばれた言
語は、EU中の学校の必修科目になります。学校に通う子ども達に、
二つも三つも外国語を勉強させるわけにはいかないのですから、選
ばれる言語は国際的に有効な言葉でなくてはなりません。中国は飛
躍的な経済発展を遂げつつあり、その人口はもうすぐ13億人に達し
ます。13億人とは、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア全部を
合わせた人口に匹敵します。ほかのどの言語よりも、中国語を話す
人の数が上回るのです。
今後50年以内に、もしかしたら中国が世界最大の経済大国になって
いるかもしれません。2002年、中国は実に7%という経済成長率を出
しています。それでも将来、中国人が、私たちヨーロッパ人に英語で
話しかけてくると思いますか。では、EUの共通実務言語に中国語を
選んでみるというのはどうでしょうか。巨大な市場をもつ中国と、将来
的にEUに利益をもたらす有望な貿易関係を結ぶことができ、長期的
にはいい政策かもしれません。もしくは、中国側に半分歩み寄るとい
うのはどうでしょうか。今日の中国は、エスペラントに肯定的な態度を
示しています。エスペラント語が教えられていたり、エスペラント語の
雑誌が発行されたり、ラジオではエスペラント語の定期番組が放送
されたりしています。しかし、はたして50年後も、彼らがエスペラント語
に対する興味を失わないでいてくれるでしょうか。
植民地時代の重荷
多くの人は世界の共通語として英語に期待をよせていますが、彼らは、
絶対に英語が共通語にはなり得ないという現実を認めなければいけま
せん。まず、英語があまりに難しい言語だという理由があります。また、
スペイン語圏、フランス語圏の国々は、絶対に英語を共通語として受け
入れないでしょう。また他にも、インド、アラビア語圏の国々、南アメリカ
の人々は英語に対して否定的です。これらの言語圏の国々は、未だに
植民地時代の重荷を引きずっているのです。また、英語には様々な種
類の英語が存在します。それらの英語のうち、一体どれを選べばよいの
でしょう?オックスフォード英語でしょうか。しかしオックスフォード英語は、
イギリス全人口のたった3~5%の人々にしか使われていません。では、
英語話者の最も多くが話している一般アメリカ語にするべきでしょうか。
この二つを別にしても、英語にはまだまだ様々な種類の英語があり、
それぞれスペルや発音が違っているのです。
通訳として働いているイギリス人男性に聞いた話ですが、二人のどちら
もが英語を話せても、その二人がお互いに理解し合えているかどうかは、
誰にもわからないのだそうです。
誰もが優秀な言語学者というわけにはいかない
世界の共通語に英語を推し進めている人は、おそらく英語を母語とする
人たちでしょう。そうでなければ、英語が本当はとても複雑な言語である
という事実に気づいていない人か、すでに英語に莫大な労力を費やして
しまい、今さら別の言葉を勉強するのはこりごりだという人、または普通
の人にとって、言語を学ぶということが自分が思うほど簡単ではないこと
に気づいていない言語の天才ぐらいでしょう。
西ヨーロッパ6カ国で行われた調査結果によれば、一般的な難易度の英
文を十分に理解できたのは、全体のたった7%にすぎなかったそうです。
その274に続く 以上
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