「平成の船中八策」を実現する市民の会、その280[欧州連合における(言語問題⑯)」
高まる民族間の緊張
スウェーデン語から英語への変遷は、そのプロセスの間中、スウェー
デン社会を苦しめることでしょう。民族的背景と階級により分けられた
人々の溝は深まるばかりでしょう。私たちは言葉を使って知識や経験
を整理します。その言葉が違う言語に変わってしまうと、結果的には
大量の知識を失うこととなり、近い将来、国際競争をくぐり抜けていく
ことは一層困難になります。
スウェーデンが研究先進国としてその地位を守り続けるためには、
スウェーデンの科学者が英語を話せなくてはいけません。しかし、彼ら
科学者がスウェーデン語で自分の研究内容について、英語同様に
話したり書いたりできることは求められていません。「人間にとって母語
とは、言語という乗り物と、精神という乗り物を動かすエンジンのような
ものなのです。」最もよい成果をあげようと思えば、科学者は翻訳家を
雇い、自分の母語で文章を書くべきなのです。スウェーデンの言語の
権威によると、人は自分の母語で考えるときに、最大の能力を発揮
できるのだそうです。
地方の博物館
もちろんいくつかの分野では、英語が使用され、その分野で最も有力
な言語になっても構わないのです。科学や労働市場の国際化により、
英語しか実務用語として通用しないことがよくあります。しかし、ある
分野において、スウェーデン語が全く通用しなくなったとき、つまり、
発達を続けるコンピュータ言語、遺伝子工学、家族法、農業経済に
ついて、スウェーデン語で話したり、書いたりできなくなったときが問題
なのです。その時、人々は愚かになりはじめ、社会的格差が生まれる
のです。たくさんの分野がその影響を受ければ受けるほど、その現象
はひどくなります。この「分野の消失」を何度も経験した言語は、最後
には、家庭生活や儀式、地方の博物館といったところでしか使われ
ない、狭く限られた言語になってしまうのです。
私たちEU加盟国は、今、言葉の選択に迫られています。明日では間
に合わないのです。今何が起こっているのかを知り、私たちの運命に
対して責任を負わなければならないのです。24もの公用語をもつEU
では、組織としてうまく機能しません。通訳や翻訳に法外な経費が
かかるでしょう。会議、書類すべてを、あらゆる言語に訳すに足るだけ
の経済力と人材があると思うのは、あまりに非現実的です。EUが24もの
公用語をもつことを認めるのは、実は、英語がますます支配を強める
世界や文化を認めることでもあります。さらに、多様な文化が存在する
ヨーロッパを否定し、少数の文化しか存在しない世界を認めることを
意味するのです。
その281に続く 以上
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