スイスの通貨介入爆弾宣言!
2011年9月7日水曜日
スイスの通貨介入爆弾宣言。またも大混乱に近づいた世界経済
2011年9月6日。スイス中央銀行(SNB)が爆弾宣言をした。「1ユーロ=1.20スイスフランを下回る水準を容認しない。無制限に外貨を購入する用意。為替ターゲットを最大限の決意で守る」
スイス・フランがユーロ通貨下落の逃げ場所になっていて、このフラン高でスイスの輸出企業がもう成り立たなくなっているのをスイス人が激怒していることを窺わせる内容になっている。
「無制限に外貨を購入する」とスイス中央銀行は言うが、それは可能なのだろうか。実は他国の通貨を買うために自国の通貨を湯水のように発行すればいいだけの話だから理論的には無限介入が可能である。
では、なぜそれをしないのか。それは、無制限に通貨を発行すれば当然通貨の価値が減退していくので、通貨を発行すればするほどそれがインフレとなって返ってくるからだ。
インフレは国情不安を一気に噴出させるものである。
昨今の北アフリカ・中東のデモがインフレ暴動から始まった。中東の独裁政権が宗教闘争で崩壊するのではなく、じゃがいもの値段が高いのを放置して崩壊していったのだから、食べ物の値段を軽く見るべきではない。
また、インドのマンモハン・シン政権が弱体化したのも汚職スキャンダルが表にあるが、実際にはインフレが市民生活を直撃して余裕がなくなってきたのも根底にはある。
イスラエルの45万人デモはあまり報道されないし大きな問題と思われないように報道規制されているようだが、これもインフレに怒った市民たちの怒りが爆発した結果である。
インフレは国民生活を脅かす。そして、それは直接、時の政権を激しく糾弾する声になっていき、ほとんどの政権はそれに抗しきれなくて倒されていくのである。
インフレは政権崩壊の前兆であり、原因であり、結果になり得る。
自国通貨の無制限発行は、そのインフレを自ずと招き寄せるのだから、スイス政府がまさに「不退転の決意」をしたことが見て取れる。
インフレになろうが何だろうが、今はスイスの輸出企業を守らなければスイスの産業が全壊するとう危機感がスイスにあったのだろう。
では、なぜスイス・フランが高騰していたのか。それはスイスの問題ではなく、ユーロ圏の問題だった。実態は、スイス・フランが高騰しているというよりも、ユーロが下落しているという側面で見るほうが正しい。
フラン高騰は、ユーロ危機のもうひとつの裏返しの問題なのである。
ユーロは今、生き残れるかどうかの正念場に立たされている。うまく行っているときはいい。どこかのアナリストが「次はユーロの時代」「世界最大の超国家の誕生」と持ち上げてくれる。
しかし、いったん国同士の結束が揺らぐと互いに相手を批判したり、自己主張をしたりして、まとまるものがまとまらなくなっていく。今起きているのはそのような状況である。
助けても助けても自助努力が足りずに借金マシーンと化したギリシャ。まったく成長しないイタリア。
不動産バブルが崩壊したまま回復もないスペイン・ポルトガル。
ギリシャ救済に担保を主張するフィンランド。ギリシャ救済を拒絶するドイツ国民のメルケル降ろしに揺れるドイツ。
右往左往するIMFとECB。不良債権とユーロ崩壊の不安にパニックになっている投資家の銀行株叩き売り。
世の中でこんな不安を掻き立てる通貨もないから、みんな通貨から逃げて他の通貨になだれ込む。スイス・フランはそんな逃避先の通貨のひとつだったのである。
もちろん、スイス中央銀行のやっていることは「賭け」だから、それが成功するかどうかは誰にも分からない。
ただひとつ言えるのは、これは通貨の切り下げ競争を生み出す可能性があることだ。
現在はグローバル経済で世界が結合しているのだが、グローバル経済というのは、国際競争を促すものである。
国際競争に勝つには当然価格が安いほうが有利である。その価格というのは自国通貨に連動している。
輸出業者の立場から言えば、自国通貨が安くなればなるほど、努力せずに競争力を上げられることになる。
だから、どこの国でも自国通貨をわざと安めに誘導して輸出企業を有利にさせ、それによって自国の影響力を行使しようとするのである。
相手が通貨を切り下げるのであれば、こちらも通貨を切り下げないと競争に勝てなくなる。多くの国がそう思って、「通貨切り下げ競争」に入るとどういうことになるのか。
世界経済の「大混乱」である。
互いに秩序を放り出してインフレ覚悟で「通貨切り下げ競争」をするのだから、市場はゆがみ、ボラティリティは猛烈に上がる。
通貨のボラティリティが上がるというのは、物価が急に高くなったり安くなったりし、場合によっては貿易が停止することを意味している。
貿易が停止すれば、それがそのままグローバル経済の死に直結するのだから、これを大混乱と言わずして何を大混乱と言えばいいのかということになる。
そんな大混乱が、まさに今、日に日に近づいてきている。
スイスの市場介入は、またユーロ圏崩壊=世界経済崩壊にまた一歩進んだというひとつの「事象」である。
このスイスの爆弾宣言の裏で、投資家は何を思ったのか。例によって世界最大の市場NYSEで、2011年9月6日、欧米の銀行がどのように評価されたのかで投資家の方向性は見て取れるだろう。
クレディ・スイス -3.54%
UBS -10.58%
ドイツ銀行 -2.69%
RBS -12.74%
バークレー銀行 -6.70%
バンカメ -2.46%
シティグループ -0.70%
すでに投資家は次の金融危機が避けられないものとして猛烈な勢いで金融関連企業から逃れている。沈みゆく船からネズミが海に飛び込んで逃げるのと似ている。
今、ユーロ圏が崩壊したら世界経済がそのまま一緒に崩壊して、何が起きるか分からない事態になる。
まさか、人類はそこまで愚かではないはずだから、崩壊を放置するはずがないと私は信じている。しかし、2011年の後半から、ここまで危険な状況になるとはいったい誰が思っただろうか。
どこかの先進国で銀行の取り付け騒ぎの噂を聞いたら、私たちはすぐに銀行に走ったほうがいい。
今後の金融崩壊はソブリン崩壊(国家崩壊)でもある。助けてくれるはずの政府が消失している可能性が高い。
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スイス政府が「不退転の決意」
「無制限に外貨を購入する」とスイス中央銀行は言うが、それは可能なのだろうか。実は他国の通貨を買うために自国の通貨を湯水のように発行すればいいだけの話だから理論的には無限介入が可能である。
では、なぜそれをしないのか。それは、無制限に通貨を発行すれば当然通貨の価値が減退していくので、通貨を発行すればするほどそれがインフレとなって返ってくるからだ。
インフレは国情不安を一気に噴出させるものである。
昨今の北アフリカ・中東のデモがインフレ暴動から始まった。中東の独裁政権が宗教闘争で崩壊するのではなく、じゃがいもの値段が高いのを放置して崩壊していったのだから、食べ物の値段を軽く見るべきではない。
また、インドのマンモハン・シン政権が弱体化したのも汚職スキャンダルが表にあるが、実際にはインフレが市民生活を直撃して余裕がなくなってきたのも根底にはある。
イスラエルの45万人デモはあまり報道されないし大きな問題と思われないように報道規制されているようだが、これもインフレに怒った市民たちの怒りが爆発した結果である。
インフレは国民生活を脅かす。そして、それは直接、時の政権を激しく糾弾する声になっていき、ほとんどの政権はそれに抗しきれなくて倒されていくのである。
インフレは政権崩壊の前兆であり、原因であり、結果になり得る。
自国通貨の無制限発行は、そのインフレを自ずと招き寄せるのだから、スイス政府がまさに「不退転の決意」をしたことが見て取れる。
インフレになろうが何だろうが、今はスイスの輸出企業を守らなければスイスの産業が全壊するとう危機感がスイスにあったのだろう。
こんな不安を掻き立てる通貨もない
では、なぜスイス・フランが高騰していたのか。それはスイスの問題ではなく、ユーロ圏の問題だった。実態は、スイス・フランが高騰しているというよりも、ユーロが下落しているという側面で見るほうが正しい。
フラン高騰は、ユーロ危機のもうひとつの裏返しの問題なのである。
ユーロは今、生き残れるかどうかの正念場に立たされている。うまく行っているときはいい。どこかのアナリストが「次はユーロの時代」「世界最大の超国家の誕生」と持ち上げてくれる。
しかし、いったん国同士の結束が揺らぐと互いに相手を批判したり、自己主張をしたりして、まとまるものがまとまらなくなっていく。今起きているのはそのような状況である。
助けても助けても自助努力が足りずに借金マシーンと化したギリシャ。まったく成長しないイタリア。
不動産バブルが崩壊したまま回復もないスペイン・ポルトガル。
ギリシャ救済に担保を主張するフィンランド。ギリシャ救済を拒絶するドイツ国民のメルケル降ろしに揺れるドイツ。
右往左往するIMFとECB。不良債権とユーロ崩壊の不安にパニックになっている投資家の銀行株叩き売り。
世の中でこんな不安を掻き立てる通貨もないから、みんな通貨から逃げて他の通貨になだれ込む。スイス・フランはそんな逃避先の通貨のひとつだったのである。
世界経済の「大混乱」
もちろん、スイス中央銀行のやっていることは「賭け」だから、それが成功するかどうかは誰にも分からない。
ただひとつ言えるのは、これは通貨の切り下げ競争を生み出す可能性があることだ。
現在はグローバル経済で世界が結合しているのだが、グローバル経済というのは、国際競争を促すものである。
国際競争に勝つには当然価格が安いほうが有利である。その価格というのは自国通貨に連動している。
輸出業者の立場から言えば、自国通貨が安くなればなるほど、努力せずに競争力を上げられることになる。
だから、どこの国でも自国通貨をわざと安めに誘導して輸出企業を有利にさせ、それによって自国の影響力を行使しようとするのである。
相手が通貨を切り下げるのであれば、こちらも通貨を切り下げないと競争に勝てなくなる。多くの国がそう思って、「通貨切り下げ競争」に入るとどういうことになるのか。
世界経済の「大混乱」である。
今後の金融崩壊はソブリン崩壊
互いに秩序を放り出してインフレ覚悟で「通貨切り下げ競争」をするのだから、市場はゆがみ、ボラティリティは猛烈に上がる。
通貨のボラティリティが上がるというのは、物価が急に高くなったり安くなったりし、場合によっては貿易が停止することを意味している。
貿易が停止すれば、それがそのままグローバル経済の死に直結するのだから、これを大混乱と言わずして何を大混乱と言えばいいのかということになる。
そんな大混乱が、まさに今、日に日に近づいてきている。
スイスの市場介入は、またユーロ圏崩壊=世界経済崩壊にまた一歩進んだというひとつの「事象」である。
このスイスの爆弾宣言の裏で、投資家は何を思ったのか。例によって世界最大の市場NYSEで、2011年9月6日、欧米の銀行がどのように評価されたのかで投資家の方向性は見て取れるだろう。
クレディ・スイス -3.54%
UBS -10.58%
ドイツ銀行 -2.69%
RBS -12.74%
バークレー銀行 -6.70%
バンカメ -2.46%
シティグループ -0.70%
すでに投資家は次の金融危機が避けられないものとして猛烈な勢いで金融関連企業から逃れている。沈みゆく船からネズミが海に飛び込んで逃げるのと似ている。
今、ユーロ圏が崩壊したら世界経済がそのまま一緒に崩壊して、何が起きるか分からない事態になる。
まさか、人類はそこまで愚かではないはずだから、崩壊を放置するはずがないと私は信じている。しかし、2011年の後半から、ここまで危険な状況になるとはいったい誰が思っただろうか。
どこかの先進国で銀行の取り付け騒ぎの噂を聞いたら、私たちはすぐに銀行に走ったほうがいい。
今後の金融崩壊はソブリン崩壊(国家崩壊)でもある。助けてくれるはずの政府が消失している可能性が高い。
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以上は「DARKNESS OF ASIA」より
世界的に通貨の切り下げ競争に似た現象となって来ました。今はその中で、スイスのスイスフランと日本の円だけが強くなっています。このままですと、通貨が強くなりすぎると輸出には不利となり経済に打撃となります。バランスが求められる状況にあります。経済のグローバル化に貨幣制度が追いつかなくなって、その矛盾が出てきたものです。世界経済規模に合った世界通貨制度が必要なのです。世界共通通貨が無いので、米国のドルが基軸通貨となってその役割りを担って来た訳ですが、今日に至り流石に米国ドルもその役割りを担いきれずに破綻しつつある状況にある訳です。その上に欧州の共通通貨ユーロもまだ試行中のところもあり、制度としてまだ完成していない為にドルの変わりには成りません。通貨制度の過渡期でもあります。 以上
予測はしないほうがいいのだが (ムー・スーパーミステリー・ブックス) 著者:船井幸雄 |
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