ペニシリンの陰に隠されていた人体実験と「ナイロビの蜂」
2011年8月31日水曜日
ペニシリンの陰に隠されていた人体実験と「ナイロビの蜂」
ペニシリンは医学界でもっとも重要な発明だった。しかし、その発明の陰で、アメリカがグアテマラでペニシリンの効用を調べるために故意に性病に感染させて人体実験していたという事実が判明した。
アメリカのオバマ大統領はグアテマラに謝罪し、グアテマラも独自調査に乗り出しているという。
かつて、梅毒は人間の身体を崩壊させていく恐怖の性病だった。
梅毒が突如として15世紀から爆発的蔓延した理由についてはいろいろな説があって今でも真実ははっきりしない。
もっとも有力な説としてはコロンブスがアメリカ大陸上陸したときに現地の風土病であった「梅毒」をヨーロッパに持ち帰り、そこから世界各国に散らばっていったというものだ。
日本では1512年に初めて記録されているが、すでに遊郭という売春地帯を抱えていた日本は瞬く間に梅毒が広がり、「花柳病」と言われるようになっていた。
それはペニシリンが発明されるまで、確実に身体を蝕んでいく恐ろしい病気だったのである。
オランダ医学を極めていた幕末の医者(医官と当時は言っていた)であった松本良順は、1864年に「養生法」という書籍を出しているが、これには「下賤のもの100人中95人は梅毒に罹らざるものなし」と梅毒の蔓延を記している。
ここで松本良順が言っている「下賤のもの」というのは、娼婦たちのことで、さらに細かく言うと娼婦の中でも最低ランクとされていた路上売春(夜鷹、引っ張り)に属する女性たちを主に指している。
この路上売春に関わっていた女たちの95%というから、ほぼ全員が梅毒に罹っていたというほどに蔓延していたのである。
夜鷹というのは文字通り夜になった出没する娼婦なのだが、薄暗い町の木陰に潜んで男に声をかけて物陰でセックスをするスタイルを取っていた。
当時は電気があるわけでもなかったから男たちは女がどんな顔をしているのすら分からないまま売春に至っていたのだが、実はこの夜鷹のほとんどが梅毒が進行して「鼻が欠けていた」のだという。
「梅毒にて娼家に用い難き醜女」
「鼻頭の欠け落ちたるは蝋燭の流れを持て補ふ」
「顔に施粉して疵の痕を埋め、頬被り」
と阿部弘蔵の「日本奴隷史」にある。
これは「梅毒でひどい容貌になってしまって売春宿にもいられなくなった女性が、欠けた鼻をロウソクで補って、顔のアザや欠落や疵(きず)は化粧でごまかして、さらに手ぬぐいで顔を覆って、その上に夜の暗いところでビジネスをしていたのだという。
梅毒が脳にまで到達すると狂人となる。現代では怒って我を忘れることを「頭に来る」と表現することがある。「何」が頭に来るのか。
「梅毒が頭に来る」のである。
だから、怒り狂って我を忘れ、頭に来る。最近は、梅毒に犯されていなくても頭に来ている人がたくさんいるようだが、昔は梅毒が頭に来て狂ってしまうのだった。
はじめてタイを放浪していたとき、私はいつもバンコク・ヤワラーの安い屋台で食事をしていたが、そこに鼻が欠けている年配の元娼婦がいたのを覚えている。
一緒にいた日本人の知り合いが「梅毒を放置したら、鼻が落ちるんだよ。あれは梅毒だな」と私につぶやいて顔を背けていた。
その印象はいまだに私の中で強いインパクトとして残っていて、あとで梅毒はペニシリンで完治すると知った時、ペニシリンとはまた素晴らしい薬だと量産化に成功したファイザー製薬を崇拝したものだった。
エイズだけが注目を浴びているが、梅毒はいまだに東南アジアでは普通に存在する性感染症であり、クラミジア、尖形コンジローム、淋病、毛じらみなどと共にあなどれないものである。
だから、現在、問題になっているグアテマラの人体実験については複雑な気持ちで推移を見ている。
当時のペニシリンは新薬で薬効がまだよく知られていなかった。そこで、アメリカの公衆衛生当局の研究者たちは、グアテマラで刑務所に収容されていた受刑者や精神病院の患者の約5,500人に対して、ペニシリンの試験の対象にしたのだという。
患者には何の実験をしているのかはまったく知らせず、約1,300人に梅毒や淋病などに感染させた売春婦と性交させて、さまざまな実験データを得ていたようだ。
2010年10月の調査時点で、実験では少なくとも83人が死亡していることも分かっている。
「研究者が意図的に倫理規定を放棄していた」と調査委員会は報告した。
「関係者たちはこの問題を秘密にしておきたかったはずだ。広く知られることになれば、国民からの批判は免れない」
「グアテマラで起こったことは偶発的なことではない。関与した人の一部は、わが国の中であれば同じことはできなかっただろうと述べている」
オバマ大統領はグアテマラに謝罪しているのだが、コロン大統領は謝罪を受け入れつつも、「これは人道に対する非道な行い」だとして裁判も辞さない考えでいるようだ。
この実験を指揮していたのはアメリカ公衆衛生当局のジョン・カトラー医官が指揮していたものだった。
さらにジョン・カトラー氏の行動を追っていくと、別の「タスキジー実験」というものも明るみに出てきているのだが、それはどんなものだったのか。
「梅毒患者の黒人男性数百人に治療を施さずに経過を観察するもの」である。このタスキジー実験は、1932年から1972年までの40年にも渡って続けられてきたのだという。
実験台になった人々をもう一度見つめると、受刑者、売春婦、障害者、精神障害者、黒人、である。
医学は故意に社会的弱者を標的にして臨床実験して新薬ペニシリンのデータを蓄積していたということになる。
こういった社会的弱者を臨床実験の対象にして新薬の性能を確かめる巨大製薬会社の裏はイギリス映画「ナイロビの蜂」でも描かれていた。
社会の闇のひとつである。
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アメリカのオバマ大統領はグアテマラに謝罪し、グアテマラも独自調査に乗り出しているという。
恐怖の性病だった梅毒
かつて、梅毒は人間の身体を崩壊させていく恐怖の性病だった。
梅毒が突如として15世紀から爆発的蔓延した理由についてはいろいろな説があって今でも真実ははっきりしない。
もっとも有力な説としてはコロンブスがアメリカ大陸上陸したときに現地の風土病であった「梅毒」をヨーロッパに持ち帰り、そこから世界各国に散らばっていったというものだ。
日本では1512年に初めて記録されているが、すでに遊郭という売春地帯を抱えていた日本は瞬く間に梅毒が広がり、「花柳病」と言われるようになっていた。
それはペニシリンが発明されるまで、確実に身体を蝕んでいく恐ろしい病気だったのである。
オランダ医学を極めていた幕末の医者(医官と当時は言っていた)であった松本良順は、1864年に「養生法」という書籍を出しているが、これには「下賤のもの100人中95人は梅毒に罹らざるものなし」と梅毒の蔓延を記している。
ここで松本良順が言っている「下賤のもの」というのは、娼婦たちのことで、さらに細かく言うと娼婦の中でも最低ランクとされていた路上売春(夜鷹、引っ張り)に属する女性たちを主に指している。
この路上売春に関わっていた女たちの95%というから、ほぼ全員が梅毒に罹っていたというほどに蔓延していたのである。
夜鷹というのは文字通り夜になった出没する娼婦なのだが、薄暗い町の木陰に潜んで男に声をかけて物陰でセックスをするスタイルを取っていた。
当時は電気があるわけでもなかったから男たちは女がどんな顔をしているのすら分からないまま売春に至っていたのだが、実はこの夜鷹のほとんどが梅毒が進行して「鼻が欠けていた」のだという。
「梅毒にて娼家に用い難き醜女」
「鼻頭の欠け落ちたるは蝋燭の流れを持て補ふ」
「顔に施粉して疵の痕を埋め、頬被り」
と阿部弘蔵の「日本奴隷史」にある。
これは「梅毒でひどい容貌になってしまって売春宿にもいられなくなった女性が、欠けた鼻をロウソクで補って、顔のアザや欠落や疵(きず)は化粧でごまかして、さらに手ぬぐいで顔を覆って、その上に夜の暗いところでビジネスをしていたのだという。
梅毒が脳にまで到達すると狂人となる。現代では怒って我を忘れることを「頭に来る」と表現することがある。「何」が頭に来るのか。
「梅毒が頭に来る」のである。
だから、怒り狂って我を忘れ、頭に来る。最近は、梅毒に犯されていなくても頭に来ている人がたくさんいるようだが、昔は梅毒が頭に来て狂ってしまうのだった。
梅毒はいまもアジアで普通に存在する
はじめてタイを放浪していたとき、私はいつもバンコク・ヤワラーの安い屋台で食事をしていたが、そこに鼻が欠けている年配の元娼婦がいたのを覚えている。
一緒にいた日本人の知り合いが「梅毒を放置したら、鼻が落ちるんだよ。あれは梅毒だな」と私につぶやいて顔を背けていた。
その印象はいまだに私の中で強いインパクトとして残っていて、あとで梅毒はペニシリンで完治すると知った時、ペニシリンとはまた素晴らしい薬だと量産化に成功したファイザー製薬を崇拝したものだった。
エイズだけが注目を浴びているが、梅毒はいまだに東南アジアでは普通に存在する性感染症であり、クラミジア、尖形コンジローム、淋病、毛じらみなどと共にあなどれないものである。
だから、現在、問題になっているグアテマラの人体実験については複雑な気持ちで推移を見ている。
当時のペニシリンは新薬で薬効がまだよく知られていなかった。そこで、アメリカの公衆衛生当局の研究者たちは、グアテマラで刑務所に収容されていた受刑者や精神病院の患者の約5,500人に対して、ペニシリンの試験の対象にしたのだという。
患者には何の実験をしているのかはまったく知らせず、約1,300人に梅毒や淋病などに感染させた売春婦と性交させて、さまざまな実験データを得ていたようだ。
2010年10月の調査時点で、実験では少なくとも83人が死亡していることも分かっている。
ナイロビの蜂
「研究者が意図的に倫理規定を放棄していた」と調査委員会は報告した。
「関係者たちはこの問題を秘密にしておきたかったはずだ。広く知られることになれば、国民からの批判は免れない」
「グアテマラで起こったことは偶発的なことではない。関与した人の一部は、わが国の中であれば同じことはできなかっただろうと述べている」
オバマ大統領はグアテマラに謝罪しているのだが、コロン大統領は謝罪を受け入れつつも、「これは人道に対する非道な行い」だとして裁判も辞さない考えでいるようだ。
この実験を指揮していたのはアメリカ公衆衛生当局のジョン・カトラー医官が指揮していたものだった。
さらにジョン・カトラー氏の行動を追っていくと、別の「タスキジー実験」というものも明るみに出てきているのだが、それはどんなものだったのか。
「梅毒患者の黒人男性数百人に治療を施さずに経過を観察するもの」である。このタスキジー実験は、1932年から1972年までの40年にも渡って続けられてきたのだという。
実験台になった人々をもう一度見つめると、受刑者、売春婦、障害者、精神障害者、黒人、である。
医学は故意に社会的弱者を標的にして臨床実験して新薬ペニシリンのデータを蓄積していたということになる。
こういった社会的弱者を臨床実験の対象にして新薬の性能を確かめる巨大製薬会社の裏はイギリス映画「ナイロビの蜂」でも描かれていた。
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以上は「DARKNESS OF ASIA」より
米国の資本主義もここまでするようになってしまったというのが実感です。金儲けの為には手段を選ばずの通り、其処には人間性がありません。悪魔のやることであります。先年にはやった鳥インフルエンザも人工ウイルスで有った模様で、その薬を売るために、世界中にCIAの工作員が飛行機でインフルエンザ・ウイルスを振り撒いたのが暴露されています。中国上海空港でその飛行機が撃墜されたら急速に鳥インフルエンザが収束に向った事例が記憶に新しいところであります。世界最強の軍事力を持つ国のやることですから、誰も表面だって抗議も出来ない状況であります。 以上
日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション 著者:坂 昇二,前田 栄作 |
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