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2011年11月12日 (土)

左脳認識と右脳認識のきしみ

2011年10月19日


左脳認識と右脳認識のきしみ

前回の記事「宇宙論の終焉? : 「暗黒物質理論」を否定する2つの銀河の存在 (2011.10.18)」という記事の前振り文章の最後のほうに、

実は最近の科学の様々な分野で起きていることに対して、何となく思うことは、「左脳認識と右脳認識のきしみ」というような感じを持っているのですが、

と書いたのですが、読んでみると、これでは何のことだかよくわからないと思いましたので、もう少し書いておきたいと思いました。


この「左脳認識と右脳認識のきしみ」というのは、何を言いたかったかというと、
・数式上の世界と、見た目(あるいは感覚)の世界との間の溝が広がっているように見える
というようなことを書きたかったのだと思います。

先日、「ニュートリノが光の速度より早いかも」というニュースがあって科学界は大騒ぎ・・・というようなことがありました。

報道はどこでもなされていましたが、

「光速より速いニュートリノを観測」…相対性理論が破れるか (東亜日報 2011年10月24日)

などにその内容がわかりやすく書かれています。

これらの科学者たちの衝撃は、上の記事から抜粋しますと、ここにあります。

1905年にアインシュタインが特殊相対性理論を発表して以降、科学者は「光速より速いものはない」という仮定から出発し、現代物理学の枠組みを築いた。100年以上破られなかった相対性理論は、科学者にとって宗教的信念同然だった。

研究陣の主張のようにニュートリノが光速より速いという実験結果が事実なら、現代の物理学教科書を書き直さなければならない。

つまり、本当にニュートリノというものが光より早く移動していたとすると、「アインシュタイン以来の科学者たちの信念のより所が崩れてしまう」ということになるようなのです。

というように、今回のことは、もし、この高速の話が事実なら「信奉するものの崩壊」のサマが大きいために、あんなに大きな報道となっているのだと思われます。

上の記事にある通り、

 > 現代の物理学教科書を書き直さなければならない

ということになると、今、物理学を教えている人、あるいはその知識を持っている人も、他の多くの子どもたちと一緒に物理を「学び直さなければ」ならない。

これはつらい。

単なる「新たな発見」とは違う(科学者たちにとっては)異常事態の勃発のようです。


しかし、では、その「ニュートリノというものが光より早く移動していた」という事実が確認されたとして、私たちの実際の日々の生活は何か変わるでしょうか。

昨日、300円で食べた牛丼が、明日からは30円になる?
新宿まで電車で 30分で到着していたのに、「今日は5秒で到着したよ」ということになる?
そうはならないように思います。

・・・と考えると、いくら科学界を震撼させる大事件が起きても、私たちの日常は何も変わらないことに気づきます。

それこそ、昨日の記事「暗黒物質理論」の崩壊などは、天文学と宇宙論を勉強している人たちにとっては、それこそ、天と地がひっくりかえるような事態に発展する可能性があることなのかもしれないですが、それでも、牛丼の値段も新宿への到達時間も変わらない。

何も変わらないです。


なぜなら、私たちは日常の中で「計算式の中で生きているわけではない」からです。


高速の話にしても、暗黒物質の話にしても「計算上」の話であり、しかし、私たちは「計算上の上で生きているわけではない」です。
どうしてかというと、私たちが人間だからです。

意味がわかりにくいかと思いますので、今一度、強調しますが、私たちが「人間」だからです。


宇宙の計算式は他の天体を含めた、森羅万象の非常に多くの部分をカバーすることができて、「この世の法則」をあらわすものとして、ほぼ完全に一般的なものであるために、これだけ学問として長い歴史をもってきたと思います。

たとえば、これはこの記事を書くために検索したもので、私はよくわからないですが、アインシュタインの方程式というものがあるそうで、それはこのようなもののようです。
ain.png
何が何だかわからないということは別にしても、驚くべきことに、この地球、この宇宙にある、およそほとんどすべてのものが、こういう式に準じて存在して運動しているという事実があります。そして、この「およそほとんどすべてのもの」に当てはまらないものの代表が人間の感情と行動だと今は思います。


震災直後の頃、唐突に思い始めて、当時何度も書いていた、「人類は宇宙の中で唯一、宇宙から独立した存在となることに成功した存在なのかもしれない」ということも、上の式に「人類があてはまらない」というところにも現れているような気もします。

宇宙の法則に人類は入らない。
あるいは、宇宙の法則に入ることを拒否した。
宇宙を沈黙に導いた唯一の存在である人類という存在。
というか、もっとわかりやすく言うと、たとえば、あなたが誰かに恋をします。

その恋の顛末が、
ain.png
のように進むということはないと思うんですよ(むしろわかりにくい比喩だぞ)。人間の基本的な感情に数式は当てはめられない。

しかし、近代科学は「数式にすべてを当てはめて進んできた」という事実があり、そして、それは今の私たちの様々な文明にある快適なものを作り出してきたことは事実です。

なので、「数式は数式で実に偉大」です。

ところが、上の光速の例にしても、暗黒物質の例にしても、あるいは、ビックバンのことなどについても(参考:地球の成り立ち(3) - ヒミコ、少しずつ「数式と現実の間に溝のようなもの」が生じつつあるような感じになっている。

これらのことを、「左脳認識と右脳認識のきしみ」と表現したという感じです。


ちなみに「きしみ」というのは、きしんでいるだけの状態であり、きしみが正されれば元に戻るはずです。なので、どちらかがどちらかを圧倒したり、つぶしたりするものではないと思われます。つまり、どちらが正しいというものではない

今の文明は、左脳認識(計算の世界)によって電気や交通や医療や経済や通信という恩恵を得て、その一方で、人間自体は基本的に右脳認識を以前よりさらに高めて大事にして生きている(たとえば、音楽やアートは 5000年前よりも現在のほうが多岐にわたっています)。

どちらも大事なわけで、数式が消えてしまうと文明(少なくとも今の文明)も消失してしまうかもしれないし、当然、右脳がなければ人類はこの世に存在する意味がなくなります。


ただ、アインシュタイン後のこの100年くらいというのは、「数式が優勢と考えすぎる」世の中だったのかもしれません。その価値観が「左脳的思考と右脳的思考もどちらも大事だ」というように、五分五分になればそれでいいだけかなあと。


右脳とは見たり聴いたり味わったりすること。
それは数式と同じくらい大事なのだと私たちが気づけばいいだけなのではと。

あなたの恋の行方」と「 ain.png

は対等なのだと(なんだかよくわからないですが)。


意外と、「人類の覚醒」なんてそのあたりだけのことなのかもとも思います。


そういえば、先日、「宇宙のいろいろなところから撮影された地球の写真」が掲載されていましたので、それをご紹介して終わります。宇宙のいろいろというのは、ほとんど無人の観測衛星などからですが、遠くから見れば、他の惑星と同じように見えていることがよくわかります。



宇宙から見れば、地球も小さな白い点

Pale Blue Dots: Iconic Images of Earth From Space
Wired Science 2011.10.13


アポロ8号が月方向から撮影した地球(1968年)

earth-01.jpg



NASA の木星探査機ジュノーが撮影した地球(左)と月(2011年)

earth-02.jpg

▲ 地球からの距離は約 1000万キロメートル。



NASA の火星探査機ローバーが火星から撮影した地球(2003年)

earth-03.jpg



NASA の土星探査機カッシーニが撮影した地球(太陽を中心として土星側から撮影)

cassini-saturn-earth-moon-nasa.jpg

▲ イラストみたいですが、写真なんです。真ん中の円は太陽の光を遮るためのものだと思われます。地球は Earth と書かれている先の小さな点。それにしても太陽系ってのもキレイなもんですね。
以上は「IN DEEP」より

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