実現論30、第三部、滅亡(ホ)観念機能、作動せず
今や、日本人の大部分は不安と閉塞感に囚われ、多かれ少なかれ滅亡の危機を感じ取っている。しかし、感じているだけで何もしようとはしない。誰もが滅亡の危機を感じているのに、誰も正面からこの問題を考えようとはしない。これは、実に奇妙な状態である。社会は、不気味な沈黙に押し包まれ、まるでその時が来るのを待ち望んでいるかの様である。いったい、どうしたと言うのか? なぜ誰も考えず、何もしようとしないのか? | ||||
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それは、日々が平穏に過ぎてゆき、本能を直撃する様な現在形の危機圧力=生存圧力が殆ど働いていないからである。人類は、これまで五〇〇万年に亙って、過酷な自然圧力・外敵圧力に晒されて生きてきた。そして更に五五〇〇年前(縄文人は一七〇〇年前)、同類闘争の圧力が加わって以降は、集団を破壊した性闘争・私権闘争を私権の共認によって統合する事によって、それら生存圧力の全てを私権の強制圧力に変換させ、その私権の強制圧力を最大の活力源としてきた。つまり、誰もが私権の確保を第一義課題として生きてきた。とは言え、農業生産の時代はまだ自然圧力も働いていたし、頭を使うべき自らの生産基盤も持っていた。何より、藩や村落という共同体が強い力を持っており、それら集団の課題や規範に応えてゆかなければ、私権を確保することも維持することも出来なかった。従って、己の私権を超えた超越課題=考えなければならない課題はいくらでも残っていた。 | ||||
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しかし、市場社会になると、それらの共同体は悉く解体されて、私権を確保しさえすればそれだけで生存が保障される様になり、その結果、己の私権に関わること(異性の獲得や入試・就職や地位・職務)以外のことは、己の属する集団のことも社会のことも、何も考えなくなって終った。それでも、貧困の圧力が働いていた'70年までは、私権を確保する為に(賃上げや民主主義など)考えるべき社会課題は残っていた。しかし、貧困が消滅し、私権の確保が容易になると、文字通り(遊ぶこと以外)何も考えなくなって終った。 | ||||
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だが、よく考えてみれば、私権の強制圧力が衰弱したということは、長い間抑圧され続けてきた本源共認の再生可能性が開かれたということであり、本来ならその可能性に強く収束してゆく筈である。まして、滅亡の危機が迫っているとなれば、本来なら必死になって滅亡からの脱出口を考えている筈である。いったい、なぜ何もしようとせず、誰も考えようとしないのか? 全ては、私権にしか反応しない様に徹底して囲い込まれてきた結果である。私権(性権→占有権)を唯一絶対価値とし、私権に関わること以外のことは徹底して排除するその脳回路上では、私権が確保されている以上、もはや何の生存圧力=危機圧力も働かず、危機圧力が働かない以上、危機脱出に向かおうとする可能性収束力=新しい活力(何かをやろうとする気持ち)が生じない。同様に、本源収束の可能性が開かれても、私権にしか収束しない様に囲い込まれた脳回路は、自ら(=私権)と対立する本源意識を徹底して排除する。しかも、私権にしか収束しないこの脳回路自身は、私権の衰弱に応じて、際限なく自らの活力を衰弱させてゆく。こうして私権にしか反応しない脳回路は、私権が衰弱すると一切何も反応しなくなって終った。 | ||||
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かくして人類は、新しい可能性が開かれても何もしようとせず、滅亡の危機が目前に迫ってきても誰も考えようとせず、ただひたすら活力を衰弱させてゆくだけという状態に陥ってしまった。観念機能を命綱としてきた人類にとって、これは致命的である。観念機能が作動しなければ、人類は絶滅するしかない。だが、人類最大の危機が迫っているにも拘わらず、危機圧力が働かず、観念機能が作動しないというこの現状こそ、もはやいかなる言い逃れも通用しない、市場社会の絶対的欠陥を明示するものである。 | ||||
以上は「るいネット」より |
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