3.11の喪失(8/9)
堀川氏は、神奈川県医師会として震災前に購入した「衛星携帯電話」を被災地に持ち込み、使用していた。当時は被災地の基地局に地震の被害が及び、携帯電話を利用できない地域があったが、そのような場合でも通話可能だった。神奈川県医師会は、震災以降、新たに数台の購入を検討している。
堀川氏は、意味の深いことを話す。「災害訓練は、やはり訓練でしかないことを痛感した。今後の訓練は、電話などの通信網が遮断されて、身動きが取れない中でどうするかなど、より実践的にする必要がある」
神奈川県医師会は「最悪のこと」を想定し、対策を取っている。そのスピードも速い。むしろ、「最悪の事態」をあえて設けて検討を続けていると受け止めることができた。危機管理を考える際、この発想は大切である。
3.指揮命令系統の混乱を防ぐ
堀川氏は横浜市に戻った直後、被災地への医療チームを派遣する準備に取りかかった。いくつかのチームを送ったが、3月25日、日本医師会から連絡が入った。それは、「被災地での医師の数は充足した。これ以上、送る必要は当面ない」というものだった。
当時をこう振り返る。
「翌日から被災地に向かう医療チームは準備ができていただけに、困惑するものはあった。私には、医師の数は圧倒的に足りないように思えた。おそらく、被災地の医師会やさらにその最前線の病院などから、日本医師会に正確な情報が届かなかったのだと思う。被災地でも通信網が遮断されて、情報が錯綜していたから無理もない」
指揮命令系統が混乱するときには、その前段階として情報通信網の遮断がある。このインフラを整備し、維持することがいかに大切であるかがわかる。
コミュニケーション・ルートや情報通信網の日頃からの整備、有事の指揮命令系統の確保などは、危機管理を進めるためには不可欠である。このことを、神奈川県医師会の事例から教訓として導くことができる。
検視・検案については、前連載において次の2つの記事で紹介した。併せてご覧いただくと、多くの人が死に至った経緯、検視・検案の問題点、今後の課題などが見えてくると思う。
以上は「DIAMOND ONLINE」より
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