イランとサウジはシリアで代理戦争
シリアの反政府勢力
◆8月20日
8月16日号で、「欧米・湾岸アラブ君主国家群・イスラエル・トルコ・アルカイダvsロシア・中国・イラン・ヒズボラ・シリアという構図の戦争であり」と書いたが、中東・イスラム世界に焦点を絞れば、これはサウジアラビアとイランの覇権争いともいえる。シリアがその戦場である。
以下の記事では、シリアでイランの革命防衛隊メンバーが誘拐されたと言うが、そうだとすれば、イランの革命防衛隊メンバーがその他にもいるはずであり、シリアにとっては心強いことであろう。サウジとカタールは反政府勢力の傭兵に武器と資金を提供するだけであるが、イランは実際の軍人を派遣することで、より深くこのシリア問題に関わっている形だ。
シリアの天王山はアレッポの攻防となっている。その趨勢次第では、イランの軍事介入が強化されることも考えられる。
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●イランとサウジはシリアで代理戦争
http://www.dw.de/dw/article/0,,16176531,00.html
【8月18日 Deutsche Welle】
サウジアラビアとイランはイスラム世界で指導権をめぐって争う二つのライバル国家であるが、今週メッカで開催されたイスラム諸国会議機構(OIC)サミットでは外部に向かっては少なくとも、良好な関係を維持しているところを見せようとした。
イランのアハマディネジャド大統領は主催者であるサウジアラビアのアブドゥラ国王の隣の席についた。スピーチの中で、アハマディネジャドは、同一の宗教を持ち、同一の預言者を持ち、同一の聖典を持つことは、お互いの違いを超えて余りあるものだ、と強調した。
◆イランの外交的敗退
このOICサミットで、リーダー達は協力を呼びかけたが、座席のアレンジも友好的スピーチもドアの後ろでの白熱した議論も、サミットの結果を左右することはなかった:シリアの機構参加の停止とシリアとこの地域でもっとも近い同盟国であるイランの外交的敗退である。
サミットに先立ち、テヘラン大学の国際関係論教授のヘルミダス・バワンドは改革論のウェブサイトで、「我々はまぬけ者にされるだろう」と警告していた。
アハマディネジャド自身も、反シリア決議を阻止できるとは思っていなかった。
「私の声だけが反対論をぶった。その声は会議で上げられるべきだった」と、彼はイランに帰国してから語った。メッカのサミットでイランの考えを押すことに失敗したことは、彼は政治家として終わる身の上であることをサウジがよく分かっていたからだ。
アハマディネジャドの職務期間は来年の春までであり、たとえば、核計画とかイランのシリアとの関係とか、イランの重大問題については語ることは殆どないのだ。サウジアラビアは宗教指導者であるアリ・ハメネイ師がイランの計画を策定していることを知っている。そして彼がイランを対立の道に引っ張っていることを知っている。
■イスラム的ライバル
サウジアラビアはアハマディネジャドを責任を持って国を運営する人物とはみなしていない。中東を誰が指導するのかという点での、イランとサウジの古いライバル関係はシリアでも争われている。サウジの王は「メッカとメジナの聖殿の僕」と自分を表現しているが、ハメネイは「イスラム革命の指導者」としている。
二つの国家はイスラム世界の分裂の起点となっている:サウジアラビアはスンニー派の指導者と自国を見ているし、イランはシーア派を導いている。シリア内での紛争は、アサド大統領がシーア派に近いアラウィ派であり、従って自然にイランの同盟国である。
非公式のイランとサウジの代理戦争はこの8月の初旬に48名のイラン人がダマスカスで誘拐された事件を通して中心的要素を帯びだした。イランの外相はすぐさま、この人々が巡礼者だと述べた。数時間後、サウジに近いスンニー派の反乱グループの一つが犯行声明を述べた。そしてサウジ資本のアルアラビア・テレビでイラン人のビデオ映像が放映された。ビデオの中で反乱グループのスポークスマンは、誘拐された者たちは巡礼者ではなくイラン革命防衛隊メンバーだと言っっている。
■アメリカはイランの役割に懸念
イランはシリアのアサド政権が崩壊することを阻止しようとしている。革命防衛隊はシリア領内での彼らのかつど言うについては語らない。彼らは、シリアは対イスラエルのレジスタンスの要塞であり、それがためイランはシリアを支援すると語り、イラン系ウェブサイト上に、革命防衛隊のクァド旅団の副司令官のイスマイル・ガアニ将軍は説明した。「我々のためにならないのであれば、もっと多くの人々が死んでいただろう」。この言葉は後でウェブサイトから削除された。
アメリカの軍事・情報関連将校らは、イランがシリアのアサド政権を支援するよう民兵らを訓練していると考えている。少なくとも誘拐された巡礼者の何人かは革命防衛隊メンバーであった、とアメリカは言っている。アメリカのレオン・パネッタ国防長官は、ホワイトハウスはシリアの状況に非常に懸念を持っており、イランはこの紛争から離れているべきだと語った。同時にパネッタはアメリカがシリアの反政府勢力に対する支援を強化するかもしれない、と語った。
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以上は「ROCKWAY EXPRESS」より
底流に流れる動きは、米国の中東政策があります。中東を欧米の意向に沿う政治体制に変えようとしています。それにより利益を得て、欧米主導の世界運営を図ろうとしているものです。しかし、欧米の哲学とイスラムの哲学が上手く融合するのかどうか大変危うい動きに見えます。 以上
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