原子力規制委員長・田中俊一氏とはどんな人物か(3/4)
100ミリシーベルト以下なら健康への影響は大きくない
元原子力委員会委員、田中俊一氏インタビュー
ほかの放射性物質を含めれば、7000ベクレルほどの放射性物質が体の中にあり、日々、内部被ばくしています。放射能は怖いという意識だけにとらわれているようで、そのことによる精神的ストレスの方が心配です。
汚染地域の買い取りは論外
6月に伊達市のウメで1kg当たり580ベクレルの放射性セシウムが出て出荷制限の対象になりましたが、このウメを10kg食べても内部被ばく量は75マイクロシーベルトです。神奈川県で出た570ベクレルのお茶もそうでしょう。
このレベルのお茶の葉を1kg食べてもわずか7マイクロシーベルトの被ばくですし、1kgもお茶を食べる人はいません。お茶の場合は出荷制限で100億円以上の損害賠償請求です。除染によって汚染を減らし、風評被害を減らすことは、今後の賠償額を減らすことにもつながるのではないでしょうか。
――「除染よりも汚染された土地を買い取るべき」という意見もあります。
田中:それは論外ではないでしょうか。公示価格で考えれば買い取りコストは5兆円ぐらいという話を聞いたことがありますが、そんなに安く買い取れるはずがない。汚染された土地は田畑が多いと思いますが、田畑は公示価格が低いので、仮に買い取りに応じたとしても公示価格より買い取り価格は上がるでしょう。
それに、農業や牧畜を生業にしてきた方々は代替地を求めるでしょう。でも、我が国で代替地はどこにあるのでしょうか。もちろん、汚染がひどく、除染が難しい地域は恐らくあるかもしれません。ただ、20km圏内でも除染は可能ですし、まだ除染ができるかどうか判断できるようなことは何もしていないのです。
それにしても、「生活の場を買い取って他所に出て行け」などと、どうして言えるのでしょうか。避難を余儀なくされている方の立場に立って、最後まで除染に努力するという姿勢を国は見せるべきです。政治家の中には軽々に買い取りを主張する方もいるようですが、「どのような人間教育を受けてきたのか」と問いたくなります。
――国の規制も実態にそぐわないことも多い。
被害を拡大しているのは国
田中:除染活動をしていると、国の基準の不合理さに悩まされます。環境省は海水浴場における放射性物質濃度の基準として、セシウムは1リットル当たり50ベクレル以下とする案をまとめました。
ただ、飲料水の暫定基準値は1リットル当たり200ベクレル。海水浴場で海水を毎日1リットル飲む人がどこにいますか。こういう基準を決めることで、小学校や中学校のプールの除染が難しくなり、除染コストがどれだけ増える考えたことがあるのでしょうか。
海水浴場の基準を200ベクレルにしても何も起きません。もう異常としか言いようがない。東電の事故がきっかけですが、国が被害を拡大していると言いたくなります。決まったことは仕方ないので、国の基準を満たすようにプールを除染しましたが、最後に残ったアオコや汚泥の混じった水の処理が大変でした。
以上は「日経ビジネス」より
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