ヒッグス粒子発見:すぐには役に立たぬが金を出す意義(3/4)
ヒッグス粒子発見!
すぐには役に立たぬものに
おカネを出す意義を考える
筆者は学生のときに物理をかじりながら、数学を専攻していた。社会に役立たないといわれる典型例だ。もっとも数学は紙と鉛筆があればいいので、予算もかからずその意味で社会に迷惑をかけることも少ない。
数学に限らず科学では、研究者の思惑とまったく別のところで社会に使われるものがしばしばある。今、金融工学を学ぶとき、確率解析で「伊藤の補題」を使っていろいろな方程式を解く。日本人数学者・伊藤清が今から70年ほど前の戦時中に書いた論文が契機になっている。もちろん本人も、今日の金融で使われようとは夢にも思っていなかった。
こうした独創的な研究は、美しくシンプルだ。美しくシンプルなので、今では学部学生でも習っていて、それが社会への貢献を生みやすくしている。アインシュタインの特殊相対性理論も、勉強熱心な高校生でも理解できるほど、美しくシンプルだ。
また、今のインターネットで不可欠なものとして暗号がある。容易に解けないようにカード決済などで暗号が使われている。これも18世紀以前の初等整数論の定理を応用したものがベースになっている。この整数論も数学好きな高校生なら理解可能なくらい、美しくシンプルだ。筆者が大学時代にのめり込んだ「楕円関数の数論」も、最近では暗号に使われていると聞いてとても驚いた。
余談だが、なぜ「楕円関数の数論」にのめり込んだかというと、大学の図書館で「谷山豊・志村五郎の予想」のオリジナル論文をみつけ、それがあまりに美しくシンプルだったからだ。学部学生だったので、とても予想を証明するには至らなかったが、いろいろな数値例で確かめるために「楕円関数の数論」を勉強した。後で、プリンストン大学にいったとき、ワイルズ教授が数学史上有名な「フェルマーの最終定理」を証明した際に、「谷山豊・志村五郎の予想」を証明してその成果を使ったと聞いて、本当の真理には予想外の事が見えないところで連なっていると驚いたものだ。
以上は「DIAMOND ONLINE」より
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