平家滅亡の経済学、宋銭普及の謎(5/6)
しかし一方で、各国政府は宋銭に似た貨幣(金の正隆元宝など)も独自につくっています。
これは、銅のカタマリである「銭」に対して国家が信認を与えていることを意味しており、国家として宋銭を含めた銭全体の流通を後押ししていたことがうかがえます。
つまり、宋銭が普及するには「銭を貨幣として認める考え方が国内に広く浸透している」というバックグラウンドが必要なのです。
この「銭への信認」がほぼゼロだった当時の日本において、「国際通貨だから」という理由だけで宋銭が普及した・・・という説明は、かなり無理があるのです。
「それでも、日宋貿易の決済で使っていればそのうち普及するのでは?」
そう思った方もいるのではないでしょうか。
確かに昔の学説では『貿易決済のため宋銭を輸入した』という解釈が有力でした。しかしその後の研究で、日本は日宋貿易の決済に宋銭を使っていなかったことがわかったのです。かわりに輸入品購入時の決済手段として使用されていたのは金(Gold)でした。
---このように考えていくと、日本で宋銭が普及した理由は「国際通貨説」とは別にあるはずなのですが・・・。
カギとなるのは、この年号「1179年」
日本で宋銭が普及し始めたのは、議論が分かれるところですがおおむね1170年代。
そして、早くも1179年6月には「近日天下上下病悩、これ銭病と号す」・・・つまり『銭の病』が流行った、という記録が残っています(『百錬抄』)。
このあやしげな『銭の病』については後日お話しする予定ですが、ここでいう「銭」はまさに宋銭のことです。この頃には宋銭がかなり普及していたことは間違いありません。
そして、翌7月には朝廷で、宋銭が一般に普及していることの是非について貴族を二分する激論が繰り広げられています(九条兼実『玉葉』)。
実は、この「1179年」という年---歴史の教科書では目立ちませんが---平家滅亡を考えるうえで最も大事な年、いわゆる"運命の境目"となった年なのです。
1179年7月には清盛の後継者であった嫡男・重盛が亡くなります。
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