日本政治とTPP
日本政治とTPP 米国議会図書館議会調査局文書(3)
日本がTPP交渉に参加すべきか否かという問題は、一面記事となることが多く、参加可能性についての真面目な議論が、2009年と2010年に始まって以来、大きな政治論争がまきおこった。与党の民主党も、最大野党の自由民主党も、TPP問題を巡って党内は分裂している。頻繁な首相交替で、現首相は5年で6人目で、二党を超えたTPP賛成派を団結させるような指導力を生み出し損ねている。こうした政治的弱さが、首相の権力の伝統的、制度的な制限を増幅させ、本気の利益集団が政府の行動を効果的に止める可能性を高めている。その結果、日本の指導者は、交渉に参加するつもりだと断固発言したり、TPPに伴って起きる変化に対する反対を乗り越える政治力があるのを行動で示したりもしていない。30
大半の観測筋は、野田首相が日本をTPP交渉に参加させたがっていると考えている。とはいえ、2011年9月の首相就任以来、野田首相の長期在任は、ほとんど常に疑問視されており、彼がTPP問題で攻勢にでるのを困難にしている。更に、野田首相は、消費税増税法の成立、2011年3月11日の地震と津波の余波を受けた経済再建と改革の推進、新たな日本のエネルギー供給対策を含め、他の項目を優先リストの上位においている。
2012年の大半、野田首相の戦略は、日本がTPP交渉に参加する為に必要な支持を取り付ける前に、これら問題全てではないにせよ、大半を解決しようとしているように見えてた。TPPを無理押しすれば、野田民主党から離党者を出し、首相を選出する衆議院での多数派の立場を失いかねない。2012年8月、自民党とその盟党が、野田首相に、消費税増税案成立と引き換えに、衆議院選挙を約束するよう強いて、2012年中にTPPに参加する可能性は伸びてしまった。大半の専門家は、選挙は2013年早くに行われると予想している。民主党は振るわない結果になり、恐らく首相の座を失うだろうと広く予想されている。自民党は公式に、いくつかの例外を認めないのであれば、協定への参加には反対だとしていた。31
日本の強力な農業団体、とりわけ全国規模の農業組合組織JAは、事実上、日本が過去40-50年間、求めてきた全ての貿易自由化協定についてそうであったように、TPP加盟に対する最も強い反対勢力だ。日本の農業部門は、農村地域が国会議員の人数が多すぎる事実に乗じている。その結果、農業ロビーは、与党の民主党と、自民党の両方に大きな影響力を持ち、農業部門が恩恵を受ける一連の政策を支持してきた。例えば、多くの農産品は、高い関税障壁の背後で保護されて続けている。(表4を参照) 更に、他の様々な政策が、日本の農業が、益々高齢化する兼業農家に担われ、他の大半の国々の農業と比較して、一般に生産性が低い小規模のままでいられるよう保証している。日本政府は、農業世帯への直接収入として、毎年約1兆円(約120億ドル)支払っている。32 TPP参加に対する反対をなだめる取り組みの一環として計画された、2011年秋、野田政権は農業改革政策を発表したが、日本農業政策専門家オーレリア・ジョージ・マルガンによれば、わずかな暫定対策を越えるものではないという。33
JAは他の様々な有力な利益団体と連携して、積極的なTPP加盟反対のキャンペーンを行っている。こうした他の組織の中で最も重要なのは、TPPは薬品と医療機器に対し、より高い費用の支払いを強いるので、日本の国民皆保険制度を消滅はさせないにせよ、弱体化させると主張している日本医師会かも知れない。多くの専門家は、日本の伝統的農業利益団体、医療ロビーや他のTPP反対勢力が、日本国内でのTPP議論をうまく支配したと主張している。彼等は“TPPを慎重に考える会”に参加している約100人の民主党議員集団を含め多数の議員の支持を得ている。TPP反対論者の多くの主張の中には、アメリカ合州国が、野田政権に交渉参加を検討するよう強いているというものがある。
Japan's Possible Entry Into the Trans-Pacific Partnership and Its Implicationsの該当部分翻訳 「日本の環太平洋連携協定への参加可能性と、その意味あい」14-16ページ。
2012年8月24日付け 米国議会図書館議会調査局文書
ここからpdfファイルをダウンロード可能。
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先の米国議会図書館議会調査局文書記事、翻訳の続編。
3/7、衆議院予算委員会で、民主党、原口一博議員がTPPの質問をする際、この米国議会図書館議会調査局の公開文書を使ったのを見て、検索したもの。いくら、あちら発の文書とはいえ、漫然と読んでいると、日本側のメリット、全くわからない。
あちらは全てしっかり把握。お釈迦様の手のひらの上の孫悟空の話を思い出す。
ゲームをする時と同じで、相手の手を読みつくしている方が強い。そもそも、TPPそのものが宗主国が新規設計しているゲーム。絶対に勝てない。カジノは、客ではなく、カジノが儲かる。まして最近、東京新聞が報じた様に、後から参加した国は、それまで決まったことを丸飲みする条件をつけられるのだという。
農業、経済性だけを追求するものではないだろう。
健康保険・医療についても冷たい記述だ。「根拠のない懸念をしている。」とでも書いてあれば、多少は気休めになるだろうに。宗主国式、利益至上主義になってはたまらない。
国会中継。みんなの党、こわいもの見たさで見た。この文書そのもの?
- 「早くTPP参加を発表せよ」
- 「株式会社による農地購入を可能にせよ」
- 「株式会社による病院経営を推進せよ」
大資本の走狗、筋は通っている。1%が儲かり、99%が苦しむ体制を作るこうした政治家達に、どうして票を入れるのだろう、といつも不思議に思う。自民、みんな、維新、公明等も。
『消費増税亡国論』植草一秀著 2012/4/23 に、みんなの党質問への回答?がある。価格952円+税とは思われない分厚い内容豊富な本。是非ご一読を。
『消費増税亡国論』植草一秀著 飛鳥新社
339ページ
日本の市場をこじ開け、米国企業が日本で自由に活動できる状況を生み出す。これが第一の狙いである。TPPは単なる関税率の引き下げだけではなく、各国の制度や規制にまで干渉するところに大きな特徴がある。
340ページ
第一は、日本政府が国内基準として設定している、国民の生命や安全、あるいと環境を守るための仕組みが破壊されかねない点だ。
輸入牛肉のBSEの危険性。遺伝子組み換え食品の危険性に対する対応、あるいは排ガス規制がある。中略
米国は軽自動車の生産を行っていないため、軽自動車に対する税制上の優遇措置が米国企業に不利益を与えているという主張をしている。
第二に、日本の公的医療保険制度にひびが入りかねないという問題である。
中略
341ページ
第三の問題は、日本の農業の激変である。中略
342ページ
そして、農業の問題は単なるGDPの比率の問題ではなく、日本の国土と文化の問題である。
その後、国会中継は、共産党笠井議員の鋭い質問で、TPPに参加すれば、むしられるだけだろうことが明らかになった。と思う。常識で判断すれば。恐ろ しい組に、加入後の条件をほとんど知らず、お願いして入る馬鹿がいるだろうか。あとからのこのこ入って、重要な規定を変更できるはずなどあるだろうか。
NPJで、
3/9(土)JCJ 3月集会 「安倍ブラック政権の正体」13時半~17時 という案内を見た。説明文が、ごもっとも。
3/9(土)JCJ 3月集会 「安倍ブラック政権の正体」
「経済成長」 「給料アップ」 という幻のニンジンをぶら下げながら、陰では憲法改悪と国防軍の創設、 さらには集団的自衛権の名のもとで米軍と一体でアジア・中東で市民殺害の戦争ができる軍事国家を狙う。 表面は笑顔を装うが、裏では生活保護の削減や非正規雇用の容認、教育現場での君が代・日の丸の強制など人権侵害を進める。 財界の言いなりに原発の再稼働を認め、事故多発機オスプレイの沖縄配備も問題なしとする。まさに人々をだますブラック企業のような政権だ。
13時半~17時
講師:石川康宏・神戸女学院大学教授
桂 敬一・元東大新聞研究所教授
場所:日比谷図書文化館・大ホール (旧都立日比谷図書館)
3/9(土)は、「つながろうフクシマ! さようなら原発大集会」もある。
3/9(土)、「つながろうフクシマ! さようなら原発大集会」
会場:東京・明治公園
14:00~15:00 集会
発言者:内橋克人さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、鎌田慧さん
澤地久枝さん、広瀬隆さん(作家)、福島から
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