「アベノミクス」とやらに浮かれる浅はか、経験が教えるバブル後の辛酸
「アベノミクス」とやらに浮かれる浅はか 経験が教えるバブル後の辛酸
「アベノミクス」とやらに浮かれる浅はか
経験が教えるバブル後の辛酸
(日刊ゲンダイ2013/3/29)
「株、上がりますように」と収穫したカブをうれしそうに持ち上げてみせた安倍首相。よほど「アベノミクス」の効果に気を良くしているのか、参院選のマニフェストを作っている高市早苗政調会長に「経済面の成果をしっかり入れてほしい」と注文をつけている。
(日刊ゲンダイ2013/3/29)
「株、上がりますように」と収穫したカブをうれしそうに持ち上げてみせた安倍首相。よほど「アベノミクス」の効果に気を良くしているのか、参院選のマニフェストを作っている高市早苗政調会長に「経済面の成果をしっかり入れてほしい」と注文をつけている。
安倍首相だけじゃない。いまや日本中が「アベノミクス」に浮かれている。20代、30代の若いOLまで「株雑誌」を買い始めている。
「安倍内閣の支持率が70%と高いのも、アベノミクスによって株が上がっているからです。自民党のなかには『安倍首相が支持されているわけじゃない。アベノミクスが支持されているのだ』と解説する議員までいるほどです」(政界関係者)
たしかに、安倍内閣がスタートしてから株価は3000円近く上がり、春闘でボーナスを出す企業も出てきたから、「アベノミクス」に浮かれるのも分からないではない。
しかし、疑問なのは、浮かれるほど景気は良くなっているのか、ということだ。スーパーの売り上げは、12カ月連続でダウンしている。
「メディアが騒ぐほど景気は良くなっていませんよ。中小企業の1―3月期の景況感はマイナス20です。大手メディアは、ボーナスを出す企業が出てきたと喧伝しているが、大盤振る舞いは、大企業に限った話。中小企業はボーナスなど出せない。大企業もボーナスは出しても、基本給をアップするベアはほとんど実施していません。大手メディアが、見せかけの好景気に騒いでいるだけです」(経済評論家・広瀬嘉夫氏)
◆マネーは実体経済には向かわない
「アベノミクス」とは、要するに、紙幣をジャブジャブ刷って、無理やりインフレを起こす「リフレ政策」である。日銀の黒田東彦総裁(68)と岩田規久男副総裁(70)は「2年以内に2%のインフレ目標を達成する」――と自信満々である。
しかし、物価が上昇すれば国民の生活は良くなるのか。このままでは悪性の資産インフレを引き起こすだけだ。
「これ以上の金融緩和を実施したら、有り余ったカネが不動産や株に流入し、資産バブルを引き起こすだけです。80年代以降、先進国では、中央銀行が金融緩和をしても、カネは実体経済には回らず、資産に流れ込むようになっている。モノづくりやサービスの“実体経済”では、儲かっても3、4%の利益にしかならないが、“資産投資”なら2倍、3倍のボロ儲けが可能だからです。とくに欧米の金融資本は、株や不動産を買い、あっという間に高値で売り抜けるようになっています。アベノミクスの最大の懸念は、実体経済はほとんど変化がないのに、資産価格だけ上がることです。株や不動産を保有する富裕層は潤うが、資産を持たない国民には恩恵がない。むしろ、給料は上がらないのにモノの値段だけ上がり、さらに生活が苦しくなる恐れがあります」(東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏)
ヤバイのは、株高も不動産の値上がりも実体を伴わないバブルだということだ。バブルは必ず破裂する。
◆時代遅れのリフレ政策
そもそも、日銀の黒田総裁が掲げる「リフレ政策」は、すでに効果がないと否定されたシロモノのはずだ。
経済学者の池田信夫氏は〈10年以上前に散々議論され、効果がないと結論づけられた政策〉と切り捨てているし、JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストも〈理論としてはかなり疑問がある〉と語っている。
実際、02年から06年の間、日銀は量的緩和を行いマネタリーベースを75%も増やしたが、国民生活はまったく良くならなかった。マルクス以後の経済学は、ほとんどカネ儲けのための学問、などとヤユされているが、なかでも「リフレ派」「マネタリスト」は、古色蒼然としたものだ。
「不況の原因はマネー不足にある、というマネタリストの考え方は、100年前の素朴な資本主義の時代には説得力がありました。金利が低くなれば貸し出しが増えて景気が良くなった。企業は設備投資をしたものです。でも、この時代に通用しないことは、すでに証明されています。資産バブルを招くだけです」(民間シンクタンク研究員)
なのに、なぜ黒田総裁や岩田副総裁が「リフレ政策」にこだわるのか、さっぱり分からない。
一橋大教授の斉藤誠氏が、興味深い指摘を朝日新聞でしている。
〈経済学は……『長期』のことはかなり明確に言えます。だが……『短期』のことはさじ加減がいろいろある。僕ら象牙の塔の人間は良しあしを言いにくい。ところが、経済学者の中にもさじ加減にまで口を出す人たちもいます。たぶんそういう人たちはスポンサーがいて、その意向で議論を展開しているのでしょう〉
◆最終局面に突入した世界の資本主義
黒田総裁と岩田副総裁にスポンサーがいるのか、いないのか不明だが、このまま2人の暴走を許したら、日本経済は破滅に一直線である。
バブルが膨らむだけ膨らみ、最後に破裂することは目に見えているからだ。この状況でバブルが破裂したら、日本経済は持たない。
「バブルの崩壊は、国民生活に深い傷を残します。80年代後半の日本のバブル崩壊は、その後、金融危機をもたらし、失われた20年を招いた。サブプライムローンが原因となったリーマン・ショックは、いまだにヨーロッパ経済を揺さぶっている。恐ろしいのは、日本の国力は80年代後半に比べて、かなり落ちていることです。人口が減少し、貿易収支まで赤字に転落している。もし、バブルが崩壊したら、巨額の借金を抱えている政府は財政出動もできない。国民は辛酸をなめますよ」(広瀬嘉夫氏=前出)
それにしても、どんなに金融緩和をやっても実体経済は良くならず、カネがカネを生む金融資本だけがバブルに便乗して大儲けするというのは、世界の「資本主義」も、行き着くところまで来てしまったのではないか。素朴な資本主義は機能しなくなっている。
資本主義の最終局面に生きる現代人は、たとえコツコツ生きたいと願っても、汚いカネ儲けはしたくないと思っても、他人を出し抜く投機に走らなければ、豊かに生活できないのかもしれない。なんとも、切ない時代である。
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「安倍内閣の支持率が70%と高いのも、アベノミクスによって株が上がっているからです。自民党のなかには『安倍首相が支持されているわけじゃない。アベノミクスが支持されているのだ』と解説する議員までいるほどです」(政界関係者)
たしかに、安倍内閣がスタートしてから株価は3000円近く上がり、春闘でボーナスを出す企業も出てきたから、「アベノミクス」に浮かれるのも分からないではない。
しかし、疑問なのは、浮かれるほど景気は良くなっているのか、ということだ。スーパーの売り上げは、12カ月連続でダウンしている。
「メディアが騒ぐほど景気は良くなっていませんよ。中小企業の1―3月期の景況感はマイナス20です。大手メディアは、ボーナスを出す企業が出てきたと喧伝しているが、大盤振る舞いは、大企業に限った話。中小企業はボーナスなど出せない。大企業もボーナスは出しても、基本給をアップするベアはほとんど実施していません。大手メディアが、見せかけの好景気に騒いでいるだけです」(経済評論家・広瀬嘉夫氏)
◆マネーは実体経済には向かわない
「アベノミクス」とは、要するに、紙幣をジャブジャブ刷って、無理やりインフレを起こす「リフレ政策」である。日銀の黒田東彦総裁(68)と岩田規久男副総裁(70)は「2年以内に2%のインフレ目標を達成する」――と自信満々である。
しかし、物価が上昇すれば国民の生活は良くなるのか。このままでは悪性の資産インフレを引き起こすだけだ。
「これ以上の金融緩和を実施したら、有り余ったカネが不動産や株に流入し、資産バブルを引き起こすだけです。80年代以降、先進国では、中央銀行が金融緩和をしても、カネは実体経済には回らず、資産に流れ込むようになっている。モノづくりやサービスの“実体経済”では、儲かっても3、4%の利益にしかならないが、“資産投資”なら2倍、3倍のボロ儲けが可能だからです。とくに欧米の金融資本は、株や不動産を買い、あっという間に高値で売り抜けるようになっています。アベノミクスの最大の懸念は、実体経済はほとんど変化がないのに、資産価格だけ上がることです。株や不動産を保有する富裕層は潤うが、資産を持たない国民には恩恵がない。むしろ、給料は上がらないのにモノの値段だけ上がり、さらに生活が苦しくなる恐れがあります」(東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏)
ヤバイのは、株高も不動産の値上がりも実体を伴わないバブルだということだ。バブルは必ず破裂する。
◆時代遅れのリフレ政策
そもそも、日銀の黒田総裁が掲げる「リフレ政策」は、すでに効果がないと否定されたシロモノのはずだ。
経済学者の池田信夫氏は〈10年以上前に散々議論され、効果がないと結論づけられた政策〉と切り捨てているし、JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストも〈理論としてはかなり疑問がある〉と語っている。
実際、02年から06年の間、日銀は量的緩和を行いマネタリーベースを75%も増やしたが、国民生活はまったく良くならなかった。マルクス以後の経済学は、ほとんどカネ儲けのための学問、などとヤユされているが、なかでも「リフレ派」「マネタリスト」は、古色蒼然としたものだ。
「不況の原因はマネー不足にある、というマネタリストの考え方は、100年前の素朴な資本主義の時代には説得力がありました。金利が低くなれば貸し出しが増えて景気が良くなった。企業は設備投資をしたものです。でも、この時代に通用しないことは、すでに証明されています。資産バブルを招くだけです」(民間シンクタンク研究員)
なのに、なぜ黒田総裁や岩田副総裁が「リフレ政策」にこだわるのか、さっぱり分からない。
一橋大教授の斉藤誠氏が、興味深い指摘を朝日新聞でしている。
〈経済学は……『長期』のことはかなり明確に言えます。だが……『短期』のことはさじ加減がいろいろある。僕ら象牙の塔の人間は良しあしを言いにくい。ところが、経済学者の中にもさじ加減にまで口を出す人たちもいます。たぶんそういう人たちはスポンサーがいて、その意向で議論を展開しているのでしょう〉
◆最終局面に突入した世界の資本主義
黒田総裁と岩田副総裁にスポンサーがいるのか、いないのか不明だが、このまま2人の暴走を許したら、日本経済は破滅に一直線である。
バブルが膨らむだけ膨らみ、最後に破裂することは目に見えているからだ。この状況でバブルが破裂したら、日本経済は持たない。
「バブルの崩壊は、国民生活に深い傷を残します。80年代後半の日本のバブル崩壊は、その後、金融危機をもたらし、失われた20年を招いた。サブプライムローンが原因となったリーマン・ショックは、いまだにヨーロッパ経済を揺さぶっている。恐ろしいのは、日本の国力は80年代後半に比べて、かなり落ちていることです。人口が減少し、貿易収支まで赤字に転落している。もし、バブルが崩壊したら、巨額の借金を抱えている政府は財政出動もできない。国民は辛酸をなめますよ」(広瀬嘉夫氏=前出)
それにしても、どんなに金融緩和をやっても実体経済は良くならず、カネがカネを生む金融資本だけがバブルに便乗して大儲けするというのは、世界の「資本主義」も、行き着くところまで来てしまったのではないか。素朴な資本主義は機能しなくなっている。
資本主義の最終局面に生きる現代人は、たとえコツコツ生きたいと願っても、汚いカネ儲けはしたくないと思っても、他人を出し抜く投機に走らなければ、豊かに生活できないのかもしれない。なんとも、切ない時代である。
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