「福島第一原発」東京五輪に向け、政府が描く「汚染水問題」解決のための”虚構”シナリオ
安倍首相が言及した「0.3平方キロ」のエリア
東京五輪最終プレゼンにて、安倍晋三がフクシマ原発の「汚染水問題」について、「完全にブロックされている」「コントロール下にある」と発言したことが物議を醸している。
いくらその発言の場が、民間の”一営利団体”に過ぎないIOCの総会の場とはいえ、安倍晋三の無責任発言によりフクシマの「汚染水問題」が事実上の「国際公約」となってしまったゆえ、騒ぎになるのも当然であろう。
実態は、以下の朝日新聞記事にあるように、安倍晋三が言及した「0.3平方キロのエリア」とはまったく別ルートの排水溝を通じて、汚染水が外洋にダダ漏れ状態であるというのが”事の真相”である。
政府は従前の東電コメントのままに、防波堤に囲まれた港湾内0.3平方キロ範囲内に汚染水拡大防止のための「シルトフェンス」(水中カーテン)が設置されていることを理由に、汚染水を「完全にブロック」と称しているが、以下の朝日新聞記事の解説図をみれば、それがまったくのデタラメであることは明らかであろう。
ここで意外なのは、これまで事あるごとに”グル”となって国民を騙してきた政府・官僚(今回は規制委)と東電や大手マスコミ報道が”食い違い”をみせており、東電・大手マスコミが安倍発言を否定し、疑問符を投げ掛ける立場を取っている点である。
実際、本日(9/13)も、東電が「今の状態はコントロールできているとは思わない」と発言したのに対し、”食わせ者”菅義偉が「放射性物質の影響は発電所の港湾内に留まっている」と反論する始末である。
東京五輪決定直後のエントリー「【雑感】 「2020年東京五輪」考 ~今後、日本国民に待ち受けていること~」にてコメントしたように、正直、安倍汚染水発言が「国際公約」となった現状、これまで以上に政府・官僚・東電・マスコミらによる情報操作・隠蔽工作が加速されるものと想像していたが、少し”意外な展開”と言ってよく、今後の成り行きを注視する必要があるであろう。
で、ここからが本日の本題である。
まず、以下のJ-CASTニュース記事をご覧いただきたい。
フクシマ原発事故直後、大量の冷却水をろ過するべく導入されたのが、仏アレバ社と米キュリオン社の汚染水処理システムである。
少し前の話ゆえ記憶が薄れている方もいらっしゃるであろうが、以前のエントリーにて指摘してきたとおり、このアレバ・キュリオン社製の汚染水処理システムは、トラブルばかりを起こしてマトモに実稼働しないという”トンでもない代物”であり、事実上の詐欺商品だったのである。
即ち、火事場泥棒よろしく、事故直後のドサクサに紛れて、米仏の原子力産業からまんまと多額のカネを毟り取られたのである。
個人のブログや一部新聞・雑誌等にて「海外の知見を結集せよ」という言葉をよく目にするが、いわゆる”世界の原発ムラ”の住民たる「アレバ」「キュリオン」といった”インチキ企業”に相談などしても、カネを騙し取られるのが関の山である。
”世界の原発ムラ”の呪縛から逃れない限り、本質的な解決などまずもって不可能だということである。
そしてこのインチキ装置に取って代わり、現在、主に使用されているのが、国内原発メーカーたる東芝を中心に開発された装置(「サリー」)であるが、汚染除去の”本命”として間もなくフクシマに投入されようとしているのが東芝製の「アルプス」である。
この「アルプス」はトリチウム以外の62種類もの放射性物質を除去可能というフレコミであり、この安定稼働が実現されれば、フクシマの「汚染水問題」は劇的に改善すると言われている代物である。
『「アルプス」を早期に稼働させ、トリチウムのみが残留した汚染水を希釈して海洋投棄する』
これが東京五輪に向け、政府が描く「汚染水問題」解決のための”虚構”シナリオであろうというのが個人的見解である。
先月末に経産相・茂木敏充が「アルプスに国費を投じて9月中での本格稼働を目指す」との考えを示すと共に、以下のNHK記事にあるように、東電が、わざわざアメリカからレイク・バレット氏なる、どこか胡散臭い専門家を呼び寄せて、氏に「まずは国内外の基準以下になるまで放射性物質を取り除き、非常に膨大な量となる汚染水を溜め続けることは不可能なため、次の段階で”海洋投棄”するべき」と発言させているのであるから、これは確信犯に違いないであろう。
このレイク・バレット氏はスリーマイル島原発の事故の廃炉作業を4年間指揮したという”素晴らしい”肩書きの持ち主であるが、今回はフクシマ原発にて現場指揮する訳でもなければ日本に駐在する訳でもなく、この後また母国に帰ってアメリカより遠隔にて助言するというのであるから、如何にも胡散臭い話であることがお解りいただけるであろう。
本気でフクシマを収束させるつもりがあるなら、現場の最前線に立って指揮することが必要であることは言うまでもないことであろうことは、危機的状況の福1の現状をみれば明らかであろう。
にも拘らず、現場をサラッとみてコメントを発し、あとはアメリカから遠隔で助言するだけで「アメリカより専門家招致」などと謳うのであるから、政府も東電も完全に国民を舐めていると断じてよい話である。
早い話、これは「欧米の知見」という言葉に弱い国民性を逆手に取り、「欧米の専門家もそう言っている」というミエミエの”既成事実づくり”だということである。
もう一点、ここで指摘しておかなければならないのが、「アルプス」でも唯一除去できないとされるトリチウムについてである。
分子構造が水素と類似しているトリチウムについては、その分子構造ゆえ汚染水処理システムにて除去が困難であるとされているが、トリチウムが大量に海に流出すれば、所謂「自然界の水の循環システム」にて、やがては雨となって大地に降下する故、海産物ばかりか「除染して安全」とされている農地で生産した農作物も汚染されるということである。
即ち、政府が目論む『「アルプス」を早期に稼働させ、トリチウムのみが残留した汚染水を希釈して海洋投棄する』というシナリオは見事に”論理破綻”しているのであり、これが小生がこのシナリオを”虚構”と断じている所以である。
以上、長々と個人的な仮説・想像(妄想)を書き連ねたが、今後、「アルプス稼働」という報道がなされれば、その後、必ずや「汚染水の海洋投棄」を正当化・追認する報道が渦巻くであろうと予見されるゆえ、よくよくこれを注視することが肝要であろう。
(転載開始)
◆汚染水、外洋まで流出か 海近くの排水溝、一時高濃度
9月13日(金)12時36分配信 朝日新聞デジタル
1リットルあたり220ベクレルのストロンチウムなどを検出
【木村俊介】東京電力福島第一原発のタンクから高濃度の汚染水が漏れた事故で、海近くの排水溝で放射性ストロンチウムなどの濃度が11日に一時的に高まっていたことがわかった。東電はこの日まで、排水溝の上流で除染作業をしていた。「汚染水の一部が海に出ている可能性は否定できない」という。
排水溝は雨水などを流す設備で、直接外洋につながっている。外洋から150メートルの地点で、11日に採取した水からストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が1リットルあたり220ベクレル検出された。放射性セシウムも104ベクレル検出された。12日に再び水を採取して測ると、放射性物質は検出限界値未満だった。
上流には、300トンの高濃度汚染水漏れを起こしたタンクがあり、漏れが発覚した直後に汚染水が排水溝に流れ込んだ。このため、11日に排水溝を高圧洗浄して、たまっていた泥などを除去する作業をしていた。その作業で放射性物質の一部が下流に流れた可能性があるという。
◆アレバとキュリオンは結局「役立たず」 汚染除去の本命東芝製「アルプス」はいつ稼働
9月9日(月)19時6分 J-CASTニュース
汚染水処理装置「アルプス」の吸着塔
「汚染水による影響は福島第1原発港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」。国際オリンピック委員会(IOC)総会における安倍晋三首相のメッセージが、2020年の東京五輪決定への流れを引き寄せた。
しかし、汚染水が今も増え続けているのは確かだ。海への流出や貯蔵場所の確保と、頭の痛い問題が残る。原発事故発生当初から懸念材料だった汚染水の処理は、現在どんな形で行われているのか。
○アレバ、キュリオンの装置は今や「バックアップ用」
放射性物質を含んだ汚染水は、東京電力福島第1原発の事故処理を進展させるうえで大きな壁となっている。事故発生時は、原子炉内の核燃料を冷やすために注水を続け、その分汚染水は増える一方だった。そこで東電は、汚染水からセシウムを吸着したのちに再び原子炉に循環させて冷却に利用する仕組みを取り入れた。最初に採用したのは、事故処理にノウハウのある仏アレバ社と米キュリオン社の装置だった。
急ごしらえのシステムは、稼働時からトラブルの連続。当時の報道は、本格稼働初日から数時間後に不具合で停止し、その後何度も運転を中断したと伝えている。運転開始1か月後の稼働率は53%にとどまっていた。2012年11月29日付の日本経済新聞電子版記事は当時の様子を、「汚染水には溶けた核燃料に津波の海水が混じり、さびや油、魚までが浮いていた」と描写している。さまざまな障害物が、本来のセシウム除去という目的を邪魔していたようだ。
このため新たに導入されたのが、東芝を中心に開発された新装置「サリー」だ。東芝のウェブサイトによると、2011年10月から主力装置として稼働を始めたという。東電広報部に取材したところ「現在でも、サリーが汚染水処理のメーン」と説明する。一方でアレバとキュリオンの装置は、サリーの「バックアップ用」として残っている。実際にキュリオン製のものは、今もたびたび作動している。アレバ製は動いていないようだが、はっきりと「使用停止」が宣言されたわけではないようだ。ただ緊急事態だったとはいえ、一説には「60億円」とも言われるアレバの装置には、費用対効果の面で疑問の声が上がる。
さらなる処理能力アップのため、「サリー」に加えて東芝の「アルプス」という「多核種除去設備」も開発された。2013年3月29日付の東電の発表資料を見ると、サリーは主にセシウム除去が目的だが、アルプスの場合は62種類の放射性物質を取り除けるという。2013年9月以降の本格稼働という工程表も、資料の中で明らかにされていた。
○トリチウム以外の62種類を除去
ところが東電広報に聞くと、「アルプスの本格稼働時期は未定」だという。2012年8月下旬から試験稼働していたが、2013年6月に装置の処理タンクから水滴がたれた跡が見つかった。溶接部分の一部変色も認められ、アルプスは運転を停止し、原因究明のための調査が現在も行われている。
アルプスへの期待は大きい。放射性物質のうち、トリチウム以外の62種類を基準値以下にまで除去できるためだ。日本原子力学会の事故調査委員会は9月2日に発表した最終報告書の中で、汚染水処理の対応として、トリチウムの濃度を十分薄めた後で海に放出する案を提示した。生態系での蓄積の影響が比較的小さいので環境リスクが抑えられるのに加えて、希釈排出の技術的な確実性が高いためだ。もちろんさまざまな議論はあるだろうが、国内外の理解を得られたうえで放出できた場合、汚染水を一気に減らせるめどがつき、問題解決に向けて前進するだろう。茂木敏充経済産業相は8月29日、アルプスの増設に国費を投じて9月中にも本格稼働を目指す考えを示した。
~後略~
◆米専門家「スリーマイルより状況複雑」
9月12日 19時57分 NHKニュース
東京電力福島第一原子力発電所で汚染水の問題が深刻化していることを受けて、アメリカスリーマイル島原発の廃炉作業を指揮した専門家が現場を視察し、「福島第一原発の場合、地下水が関係しているためスリーマイルよりも状況は複雑で難しい」と述べました。
視察を行ったのは、スリーマイル島原発の事故のあと、およそ4年間にわたって現場で廃炉作業を指揮した、アメリカ原子力規制委員会の元職員、レイク・バレット氏です。
バレット氏は、福島第一原発で汚染水の問題が深刻化していることを受けて、東京電力が新たに立ち上げた対策本部のアドバイザーとして招かれました。
視察では、先月およそ300トンの汚染水が漏れ出した山側にあるタンクや汚染された地下水の海への流出を防ぐため港の護岸沿いに行っている工事の現場などを見て回りました。
バレット氏は、すべてのタンクから汚染水が漏れたとしても周辺に流出しないよう周りのせきの高さを設定するなどの設計思想が必要だったとして、東京電力のリスク管理の甘さを指摘しました。
東京電力の廣瀬社長と会談したバレット氏は「スリーマイルでは汚染水が原子炉建屋の中にとどまっていたが、福島では地下水が関係しているので状況はより複雑で難しい」と述べました。
バレット氏は、13日、東京電力の本店で開かれる会議に出席し、今後の対応について助言することにしています。
バレット氏は、「汚染水を完全に管理するためには複雑なプロセスが必要だ。特に地下水など低レベルの汚染水は動きが複雑になるのでその管理は大きな課題だ」と話していました。
増え続けるタンクの汚染水については、「まずは国内外の基準以下になるまで放射性物質を取り除いていかなければならないが、次の段階はどう処分するかが課題となる。非常に膨大な量なのでため続けることはできず、おそらく海に流すことになると思うがその際は、技術的な課題よりも社会の合意を得るためのコミュニケーションが重要な課題になる」と述べました。
東京電力の廣瀬社長は、「スリーマイル島原発の事故を収束させたバレット氏の専門性やノウハウを今後、活用していきたい」と話していました。
(転載終了)
以上は「神風カムイ」より
安倍総理の嘘発言は問題です。2020年には安倍氏は既にこの世にはいないかも知れません。だから無責任な発言を平気で国際公約してしまうのです。酷いリーダーです。以上
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