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2014年3月12日 (水)

プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動

★プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この記事は「危うい米国のウクライナ地政学火遊び」(田中宇プラス)の続きです。
http://tanakanews.com/140305ukraine.php

 EUの上層部で、ウクライナ新政権に対する懐疑の念が強まっている。2月
22日の政権転覆によってできたウクライナ新政権は、前回の記事に書いたよ
うに、ネオナチ・極右の指導者が安保、軍事、警察、教育などの政策決定権を
握っている。政権転覆の直前、極右を含む反露の反政府勢力が、親露的なヤヌ
コビッチ政権を倒そうと、首都キエフ中心街の広場などに集まって反政府集会
を続けていた時、何者かがビルの上から集会参加者や警察官を狙撃して、多数
の死者が出た。この時、反政府勢力は、ヤヌコビッチ配下の兵士が狙撃犯だと
非難する一方、ヤヌコビッチ政権は、反政府勢力の者が狙撃犯だと反撃した。
米欧マスコミの中には、ヤヌコビッチ政権による弾圧を大々的に報じ、狙撃も
その一環であるかのような印象が醸し出された。しかし政権転覆後の今になっ
て、狙撃が反政府勢力、つまり新政権の自作自演だった可能性が高まっている。

http://edition.cnn.com/2014/03/05/world/europe/ukraine-leaked-audio-recording/
Leaked call raises questions about who was behind sniper attacks in Ukraine

 政権転覆直後、EU加盟国であるエストニアのパエト外相がキエフを緊急訪
問し、知ったことや印象について2月26日にEUのアシュトン外相と電話会
談した。その電話を録音した内容が最近、インターネットのユーチューブに漏
洩した。この中でパエト外相は、問題の狙撃について、政権転覆前に反政府勢
力(つまり新政権)が負傷者や急病人のために中心街の広場に作った野戦病院
(テント)の主任医師から聞いた話として、状況証拠から見て、ヤヌコビッチ
前政権でなく、新政権が狙撃犯を雇っていた可能性が高いと話している。電話
の相方であるEUのアシュトンは、初耳だと答えた。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ZEgJ0oo3OA8
Full leaked recording

 パエトは、新政権が狙撃事件の真相について捜査したがっていないとも指摘
した。新政権を率いる極右指導者は過去に暗い過去があるので多くのウクライ
ナ人が彼らを信用していない、とも語っている。エストニア外務省は、漏洩し
た録音が本物であることを認めつつ、パエトはキエフで聞いてきたことをアシ
ュトンに報告しただけでウクライナ新政権を批判するつもりはない、と苦しい
釈明をした。実際には、アシュトンがパエトにキエフ訪問の印象を尋ね、その
答えとしてパエトが新政権に関する悪評を並べており、漏洩後の釈明と裏腹に、
パエト自身が新政権に対して悪い印象を持っていることが明白だ。

http://www.zerohedge.com/news/2014-03-05/behind-kiev-snipers-it-was-somebody-new-coaltion-stunning-new-leak-reveals-truth
"Behind The Kiev Snipers It Was Somebody From The New Coalition" - A Stunning New Leak Released

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2573923/Estonian-Foreign-Ministry-confirms-authenticity-leaked-phone-call-discussing-Kiev-snipers-shot-protesters-possibly-hired-Ukraines-new-leaders.html
Estonian Foreign Ministry confirms authenticity of leaked phone call discussing how Kiev snipers who shot protesters were possibly hired by Ukraine's new leaders

 エストニアはウクライナと同様、ロシアの隣にある小国で、1940年から
91年までソ連に併合され、厳しく支配された。ソ連崩壊でようやく独立し、
EUに入ったエストニアの人々(国民の3割を占めるロシア系以外)の多くは、
ロシアの覇権や威圧が大嫌いだ。それを考えると、ウクライナ新政権が反露的
であるにもかかわらず、エストニアの外相が新政権に悪い印象を語っているの
は、深い意味を持つ。パエト外相は、親露・反露という尺度を超えて、ウク
ライナ新政権がロシアと敵対するために混乱や暴力を扇動して、自国周辺の東
欧ロシアの広域が不安定化することの方を懸念しているのだろう。

http://news.antiwar.com/2014/03/05/ukraine-protest-leaders-hired-kiev-snipers/
Ukraine Protest Leaders Hired Kiev Snipers

 前回の記事に書いたとおり、2月初めには、米政府がウクライナの政権転覆
を支援し、新政権の首脳人事に介入していることが、米国の国務次官補と、駐
ウクライナ大使との電話会談のユーチューブへの漏洩で暴露されている。そし
て今回、米国が作ったウクライナ新政権の極右性や過激さをEUが懸念してい
ることも、ユーチューブによって暴露した。米国製のシステムであるユーチュ
ーブによって、米国の覇権が揺るがされている点が興味深い。

http://www.youtube.com/watch?annotation_id=annotation_2612647377
Victoria Nuland phoning with Geoffrey Pyatt

 ウクライナ新政権が、狙撃者を雇って自分たちの仲間を自作自演的に狙撃さ
せ、それをヤヌコビッチ政権のせいにして政権転覆を成功させようとしていた
となれば、新政権の国際信用は急落する。ウクライナ新政権は「テロリスト」
ですらある。ウクライナを政権転覆した極右勢力の指導者であるドミトリイ・
ヤロシ(Dmitryo Yarosh)は最近、何度もロシアで爆弾テロを行ってきたチェ
チェン人のテロリスト(Doku Umarov)を支援し、どんどんロシアでテロをや
ってもらおうと、極右のネットメディアのサイトに書いて提案している。ヤロ
シはその後、5月の大統領選挙への立候補を表明した。

http://news.antiwar.com/2014/03/02/report-ukraines-right-sector-leader-urges-terror-attacks-on-russia/
Report: Ukraine's Right Sector Leader Urges Terror Attacks on Russia

http://www.ibtimes.co.uk/ukraines-neo-fascist-right-sector-leader-dmytro-yarosh-run-president-1439324
Ukraine's Neo-Fascist Right Sector Leader Dmytro Yarosh to Run for President

 米国のネオコンは、以前からウクライナの反露極右だけでなく、チェチェン
の反露テロリストを支援し、チェチェン人の対露テロはテロでなくロシアの支
配に対する抵抗運動だ、と正当化してきた。その点で、ネオコンに支持された
ウクライナの極右がチェチェン人の反露テロを支持するのは当然といえるが、
この支持表明はロシア政府に「ウクライナ新政権はテロリストだ」と非難する
正当性を与えてしまい、国際政治的にウクライナ新政権自身を不利にしている。
露政府は、発言者のヤロシを、テロを公然と支持するテロリストとして逮捕
すべく、国際指名手配した。

http://rt.com/news/yarosh-interpol-wanted-terrorism-954/
Russia puts Ukraine far-right leader on international wanted list over calls for terrorism

http://tanakanews.com/e0928russia.htm
ロシア学校占拠事件とプーチンの独裁

 ウクライナの中でも、ロシア系が人口の6割を占め、古くからロシアの海軍
基地もあるクリミア自治共和国では、議会が3月5日に、ウクライナからの分
離とロシアへの編入を、全会一致で可決した(賛成78、反対0、棄権8)。
議会はあわせて、ウクライナから分離してロシアに編入することについて問う
住民投票を3月16日に行うことを決めた。この住民投票は当初3月30日に
予定され、住民に尋ねる事項も「ウクライナにおける自治拡大」についてだっ
たが、投票日が前倒しされ、問う案件も「ロシアへの編入」に変更された。住
民投票は賛成多数で可決されそうだ。

http://www.theguardian.com/world/2014/mar/06/ukraine-crisis-crimea-part-of-russia-local-parliament-declares
Ukraine crisis: Crimea now part of Russia, local parliament declares

 オデッサなど、ロシア系住民が多いウクライナ南部の3都市の議会も、クリ
ミアに合流してウクライナから分離独立すると表明した。東部地域でも、自治
拡大や独立の決議が相次いでいる。

http://en.ria.ru/world/20140304/188063761/3-South-Ukrainian-Cities-Want-to-Join-Crimea---Lawmaker.html
3 South Ukrainian Cities Want to Join Crimea - Lawmaker

 ロシアのプーチン大統領は先日の記者会見で、ロシアがクリミアを併合する
ことはないと明言した。クリミアが編入を望んでも、ロシアが同意しなければ
編入は実現しない。ウクライナから分離して、ロシアの影響下にある準州的な
半独立国(独立したが国際的にほとんど承認されていない国)になりそうだ。
前回の記事に書いたとおり、これは08年にグルジアから独立した南オセチア
と同じ道筋だ。南オセチアは国際的に数カ国からしか国家承認されていないが、
ロシアから政治経済の両面で支援されているので、国際承認は重要でない。
ロシア領にしてしまうと米欧が対露批判を強めるので、ロシアは南オセチアを
形式上、独立国にしている。クリミアに対しても同様のことが起こりそうだ。

http://www.ft.com/cms/s/0/ce064c7c-a3ac-11e3-88b0-00144feab7de.html
Classic performance as Russia's Vladimir Putin breaks his silence

 米欧やウクライナ新政権は、クリミアの分離を認めていない。米欧は、東チ
モールがインドネシアから、南スーダンがスーダンから、コソボがセルビアか
ら独立した時には、国内の一つの地域の住民の大半が分離独立を求めているこ
とを「民主主義」と評価し、分離独立を支持・支援している。しかし今回は、
クリミアという、すでにウクライナ国内で自治共和国になっている統一性のあ
る地域が分離独立を求めているのに、認めないと言っている。

http://jackmatlock.com/2014/03/ukraine-the-price-of-internal-division/
Ukraine: The Price of Internal Division

 米欧が、東チモールの独立を支持したのは、インドネシアというイスラム教
徒が多い国を困らせるイスラム敵視策(のちの「テロ戦争」)だった。コソボ
の独立を支持したのは、セルビアというロシアと親しい国を困らせるためだっ
た。南スーダンの独立を支持したのは、スーダンという反米的なイスラム主義
の国を困らせるためだった。いずれも「民主主義」は詭弁で、米国の世界戦略
に都合のいい分離独立だったので支持した。

 それらと対照的に今回は、ロシアという米国が敵視する国の傘下に入る分離
独立なので、米国は、絶対認めないと言っている。しかも米国はウクライナで、
自作自演の狙撃殺害行為を行い、テロを支援する極右ネオナチ勢力を、強い
反ロシアであるというだけで支援し、政権転覆を引き起こしている。米国の、
民主主義重視の姿勢は、ずるがしこいインチキである。日本や米欧の人々のほ
とんどが、そのインチキに気づかず、簡単に騙されている(しかもインチキだ
と指摘する人を「反米論者」「陰謀論者」扱いする)。

http://tanakanews.com/e1130ukraine.htm
ウクライナ民主主義の戦いのウソ

 日本や西欧諸国の多くは単一民族性が高いので、容易に国民国家になれた。
国民国家とは、単一の「国民」幻想で国内の人々を教育(洗脳)することに成
功した国であり、圧政でなく教育(洗脳)によって国家の結束力ひいては経済
力を高めることに成功した国だ。圧政は人々を疲弊させる(フランス革命以前
からの)古くさいやり方だが、教育(洗脳)は人々を自らやる気にさせる(フ
ランス革命を機に開発された)効率的で洗練された統治方法だ。うまく早く国
民国家になれた国々が「先進諸国」である。

 対照的にロシアや中国は、多民族で多様で広大で、多様性を圧政で支配した
前近代の帝国を、そのまま近代国家にせねばらなかった歴史があり、国民国家
になりにくい。露中とも、人々に国民幻想を植えつけられず、代わりに社会主
義の幻想を植えつける代替法で、近代国家になろうとした。ロシア帝国は、立
憲君主的な疑似国民国家になることに失敗し、革命で倒されて社会主義幻想に
立脚するソ連になったが、それも実体は独裁的な帝国だった。

http://tanakanews.com/120803uschina.htm
米中関係をどう見るか

http://tanakanews.com/080903russia.htm
覇権の起源(3)ロシアと英米

 ウクライナは、そのソ連の独裁体制の中で、今の国境線が形成されている。
ソ連の権力者は、社会主義政権を強化維持するため、ソ連東欧の国境線を意図
的に民族ごとの統一を乱すよう引き直し、ソ連東欧の諸民族のナショナリズム
の意識を根絶し、社会主義の「人民」の意識のみにしようとした。その一環と
してスターリンは第二次大戦後、傀儡国にしたポーランドやチェコスロバキア
から東部地域を割譲させ、ウクライナに編入した。後任でウクライナ系のフル
シチョフは、クリミアをロシアから分離してウクライナに編入した。このよう
にソ連の独裁者によって恣意的に国境線が変更されて今に至っているウクライ
ナは、簡単に国民国家になれない。

http://tanakanews.com/g0120ukraine.htm
続・ウクライナ民主化の戦いのウソ

 新政権が掲げるウクライナ民族主義は、国民の3割を占めるロシア系国民を
排除する運動であり、国民国家の形成と正反対の、内戦と国家崩壊しかもたら
さない。ウクライナの隣のベラルーシは、冷戦後も比較的ロシアの影響力がず
っと強く、ロシアの傘下にいたために、経済がウクライナよりも安定している。
冷戦終結の1990年の時点で、ウクライナとベラルーシの一人あたりGDP
はほぼ同額だった。しかし今、ウクライナの一人あたりGDPはベラルーシの
半分しかない。

http://www.ft.com/cms/s/0/1b964326-a479-11e3-9cb0-00144feab7de.html
Russia needs to defend its interests with an iron fist

 冷戦後おおむねロシアの傘下にいたベラルーシは安定を確保して発展できた
が、反露派と親露派との政争に終始し、政権交代が頻繁に起こり、政情の不安
定が続いたウクライナは、経済も発展できず、多くの国民が貧困にあえいでい
る。ウクライナの反露政権は、04年のユーシェンコ政権も今回のネオナチ政
権も、米国による政権転覆支援によってできている。米国は、ウクライナに貧
困と混乱をもたらしている。米国はベラルーシに対しても、ウクライナと同様
に野党勢力を扇動して反露的な政権転覆を画策したが失敗した。ベラルーシは
親露政権が続き、安定と発展を実現している。

 米国が冷戦後、もっとロシアと協調する戦略を採っていたら、ウクライナは
安定し、経済成長できたはずだ。実際のところ米国は逆に、ウクライナからロ
シアの影響力を排除することばかり重視し、ウクライナは米露対立の場となり、
発展できずにいる。しかも米国は、これまでウクライナに親米政権ができても
IMFを通じて緊縮財政を要求し、これがウクライナの成長を抑止する効果を
もたらした。前回の記事に書いたように、ウクライナはEUの傘下に入るより
ロシアに傘下にいた方が経済的に発展すると、米国の権威あるシンクタンク
が分析している。

http://www.prnewswire.com/news-releases/leading-us-think-tank-concludes-eu-deal-would-have-ruined-ukraine-236681611.html
Leading U.S. Think Tank Concludes E.U. Deal Would Have Ruined Ukraine

 ウクライナや東欧に対しては、戦前のドイツもソ連に対抗して影響力を行使
していた。ドイツは敗戦後、東欧ソ連地域への影響力をすべて失い、ソ連を敵
視する米国の覇権傘下に完全に入ったが、冷戦終結後、経済面主導で、再び影
響力を拡大している。ドイツは表向き、米国と協調してウクライナの極右新政
権を支持し、ロシアを非難しているが、ドイツは米国に比べ、ロシアと協調し
ようとする傾向が強い。米国はロシアをG8から追放したがっているが、ドイ
ツは「米欧とロシアが定期的に直接話し合える場はG8しかない」と言って、
それに抵抗している。

http://www.reuters.com/article/2014/03/02/us-ukraine-crisis-germany-g-idUSBREA210Q620140302
German foreign minister against excluding Russia from G8

 ロシア自身は多極型のG20を重視、米英主導のG8を軽視しており、G8
から追放されてもかまわない。プーチンは、これを機にG8を潰したいとすら
思っている(ロシアのG8加盟は一昔前のゴルバチョフの遺産だ)。客観的に
もリーマンショック後、世界の経済運営の中心はG8からG20に移っており、
G8やG7は米欧日プロパガンダの中だけに生き続ける「亡霊」だ。

http://tanakanews.com/090929G20.htm
G8からG20への交代

 米国は地理的に東欧から遠く、この地域がどんなに混乱しようが自国に直接
影響がなく、過激にロシアを敵視する。ドイツは地理的に近いので混乱の影響
を大きく受け、現実的に振る舞わざるを得ず、ロシアとの協調を重視している。
ドイツが消費する天然ガスの40%、石油の35%をロシアから輸入している
現実もある。ドイツは本格的なロシア制裁に反対で、ロシアとEUとのビザの
相互自由化を延期するぐらいしかやりたくない。

http://news.yahoo.com/russia-ties-compound-german-dilemma-ukraine-crisis-140924646.html
Russia ties compound German dilemma in Ukraine crisis

http://www.theguardian.com/world/2014/mar/03/ukraine-crisis-us-europe-putin-crimea
Ukraine crisis: US-Europe rifts surfacing as Putin tightens Crimea grip

http://voiceofrussia.com/2014_03_04/Anti-Russian-sanctions-are-not-profitable-to-West-experts-6380/
Anti-Russian sanctions are not profitable to West - experts

 米国とドイツはいずれも、ウクライナ新政権に対し、IMF主導の緊縮財政
策をやるよう求めているが、その意図は微妙に食い違っている。米国は「財政
緊縮を実現した方が強い政府ができ、経済成長につながる」と考えており、新
政権に緊縮財政を求める一方で、ロシアが融資をやめた150億ドルの穴埋め
として、100億ドルの緊急融資を約束している。対照的にドイツは、ウクラ
イナ新政権が財政緊縮をやりきれず、人気を失っていずれ親露政権に取って代
わられることをあえて看過し、ウクライナがロシア傘下に戻ることで再び安定
することをひそかに望んでいるように見える。今回のウクライナ騒動は、ドイ
ツの再台頭をも加速しそうだ。

http://tanakanews.com/140227german.htm
ドイツの軍事再台頭

 ウクライナ新政権は、前政権が金を持ち逃げしたので、政府の国庫が空っぽ
で、緊急融資が不可欠だと言っているが、ドイツなどEUとIMFは、国庫は
空っぽでなく資金がまだあるはずだと言って、この言葉を信じていない。EU
はIMFに働きかけ、ウクライナ新政権に対する融資を5月の総選挙後までや
らないことをIMFに決めさせた。

http://www.ft.com/cms/s/0/d55bffd2-a3be-11e3-aa85-00144feab7de.html
Kerry unveils $1bn in US aid for Kiev's transitional government

 前回の記事に書いたように、ウクライナ新政権の首相にアルセニー・ヤツェ
ニュクを据えたのは、米政府が決めた人事だ。ヤツェニュクは中央銀行副総裁
や経済担当相、外相を歴任しており、緊縮財政をめぐる米欧の要求について熟
知している。米国は、傀儡として打ってつけと考えてヤツェニュクを首相に据
えたが、ヤツェニュクは「国庫は空っぽだ」と主張し、より多くの資金を米欧
から引き出そうとしている。ドイツは、これを芝居だと言って金を出さず、結
果的にロシアを有利にしている。

http://www.nytimes.com/2014/03/02/world/europe/after-initial-triumph-ukraines-leaders-face-battle-for-credibility.html
After Initial Triumph, Ukraine's Leaders Face Battle for Credibility

http://www.digitaljournal.com/news/politics/op-ed-new-prime-minister-may-be-washington-s-man-in-ukraine/article/373657
Op-Ed: New prime minister may be Washington's man in Ukraine

 ドイツと米国はやり方こそ違え、結果的にプーチンのロシアを有利にしてい
ることに違いない。米国は過激にやってウクライナの極右に政権をとらせ、ク
リミアに駐留権があるロシア軍の行動を「侵略だ」と言って騒いでいる。新政
権が極右だということが暴露され、ロシアの行動は問題でないと中国やインド、
発展途上諸国が言い出し、過激策を弄する米国に対する国際信用が今回も失墜
している。

http://www.thedailysheeple.com/russia-and-china-stand-in-agreement-on-ukraine-and-that-is-very-bad-news-for-the-united-states_032014
Russia And China Stand In Agreement On Ukraine - And That Is Very Bad News For The United States

http://intellihub.com/india-sides-russia-ukraine-crisis/
India sides with Russia over Ukraine crisis

 半面、プーチンの冷静な対応が注目され、国際社会でのロシアの信用が拡大
している。昨夏のシリア空爆騒動の時と似ている。西側では、米国の極端な対
応との対照性で、ドイツの現実的で冷静な対応が目立ち、最終的にウクライナ
問題は、ロシアとドイツの協調によって危機が回避されていきそうだ。その分、
国際社会における米国への信用は低下し、世界の運営が米国抜きの、露中な
どBRICSや独主導のEUによって行われる「多極化」が進行していく。

http://www.ft.com/cms/s/0/86b2c84a-a3c1-11e3-aa85-00144feab7de.html
US considers sanctions on Russian banks

 米国はロシアの銀行にドルの使用を禁止する経済制裁も検討しているが、こ
れをやると逆にロシアが中国の助けを借りてドルの基軸通貨制を壊そうとする
動きが強まり、最終的にドルと米国の覇権にとって不利になる(現時点で中国
はまだ消極的だが)。プーチンは以前から、中国などBRICS諸国との間で、
ドルを使わず相互の通貨で貿易決済する新体制を進めており、米国の対露金融
制裁は、それを加速するだけだ。米国のロシア制裁は、プーチンを不必要に
強硬にし、米国自身の覇権失墜につながる。

http://www.presstv.ir/detail/2014/03/04/353185/kremlin-warns-us-over-sanctions/
imp5  dollar  Kremlin warns US over potential sanctions

 今回の事態に喜んでいる国の一つはイランだ。イランは、米国が自国に対し
てやったのと同じ制裁をロシアにやろうとしているのを見て、ロシアに関係強
化を持ちかけ「制裁されても実害はない。恐れるな。制裁されたら貿易関係を
強めつつ、一緒にドル潰しの攻撃をやろう」とロシアに提案している。ロシア
とイランは、今回のウクライナ騒動の前に、ドルを使わない物々交換の貿易の
拡大も決めている。

http://english.pravda.ru/news/world/03-03-2014/126993-iranian_ambassador_sanctions-0/
Iranian Ambassador calls Russia not to pay attention to Western sanctions

http://www.ft.com/cms/s/0/6c33013c-7ab4-11e3-80ff-00144feabdc0.html
Iran and Russia negotiating big oil-for-goods deal

 米国がロシアや中国への敵視策を強めるほど、露中やその他の非米・反米諸
国が結束し、米国の覇権を引き倒そうとする動きを強め、多極化が加速する。
その点で、露中敵視の米国の強硬派は、米国覇権を自滅に誘導し、世界の政治
構造を転換して新興諸国主導の世界的な経済成長の加速につなげようとする
「隠れ多極主義者」である。

 米国は長らく、プーチンの人気を失墜させてロシアを再混乱に導こうとして
きた。しかし今回の件で、ロシア国内でのプーチンの人気は逆に高まっている。
ソ連時代、ロシア人は、ソ連の諸民族の上に立つエリート的存在だった。中央
アジアやウクライナなどソ連傘下の各共和国に多くのロシア人が移民し、現地
の民族より良い暮らしをしていた。しかし冷戦終結後、これらの旧ソ連諸国は
地元の民族のナショナリズムに基づく国家が作られ、そこに居続けたロシア人
(ロシア系住民)のほとんどは、仕事を奪われ、ロシア語教育や国籍、福祉
などの権利を奪われ、貧困層におとしめられ、窮してロシア本国に戻っても再
起は難しかった。

http://www.theguardian.com/world/2014/mar/06/ukraine-olympics-vladimir-putin-russia-crimea
Ukraine crisis and Olympics boost Vladimir Putin's popularity in Russia

 ウクライナ東部に住むロシア系住民は、そうした困窮するロシア人の一例だ。
バルト3国の独立をめぐり、エストニア人やラトビア人のナショナリズムの
再獲得は美談として世界で華々しく報じられたが、人口の2-3割を占めるロ
シア系住民に対するひどい差別はほとんど報じられない。プーチン自身を含め
ロシア人の多くが、このような冷戦後の状況に心を痛めている。「クリミアや
ウクライナ東部のロシア系住民を守る」と宣言したプーチンの支持率が急騰し
たのは当然だった。



以上は「田中宇氏」ブログより

現在の国際社会の情報化は、いくら既存のマスコミが嘘の情報を流しても、インターネットなどの他の情報源があるので瞬くまに真相が世界に知れてしまうことになります。プロパガンダ情報は一時は効力を示しますがやがては真相情報に打ち負かされる運命になります。最終的には正義が勝利することになります。                 以上

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