「日米同盟と原発」と「再稼働推進論」の背後にあるもの(5/5)
カーター政権が日本に懸念を示したのは、1977年に稼働を目指していた茨城県東海村の再処理施設だったとされる。使用済み核燃料から原爆に転用されるプルトニウムを抽出する再処理施設は、当時の核保有国の米ソ英仏中以外では初めてだったからだ。
カーター政権は核不拡散の基本理念を貫き、日本を例外として認めようとしなかった。カーター特使としてグレン上院議員(元宇宙飛行士)が来日し、日米で再処理について話し合われた。
その後、例外を認めなかった米国の方針が変わった。取材班キャップの寺本氏は
「再処理を許す見返りに、貿易摩擦解消のために米側は自動車の輸出自主規制求めたのではないか」
と指摘する。自主規制は再処理交渉が決着した4年後に始まる。自主規制とは名ばかりで、米国は自由貿易を謳いながらも、再処理交渉を利用して自国の自動車産業救済のために強制に近い形で日本からの輸入を排除したのである。
福島原発事故処理における「真の国益」とは
本書を読んでいく限り、権力者は秘密を隠すものであるということが改めて分かる。
筆者は、軍事に関する安全保障などの情報は隠して当然のものもあると思う。すべてを公開せよと言わない。しかし、それは、国民が経済的にも精神的にも安定的に暮らせ、不利益を被らないため、いわば「真の国益」を守るために敢えて情報を秘匿することもあるということではないか。福島原発の事故後の情報隠しは、原発利権を守るための情報隠しであって、国益を維持することにそぐわないと思う。
昨今の特定秘密保護法の制定における議論でも、真の国益を守るための秘密とは何かという視点が欠けていたようにも思う。だから国家や権力者の体裁やメンツに関わることは隠してもいい法律と受け止めてしまう。国家や権力者の体裁やメンツを守ることが真の国益ではない。
取材班キャップの寺本氏が、筆者の取材にこう話した。
「この取材では、原発に反対してきた人ではなく、これまで推進してきた人やその関係者を中心に取材してきた。その推進してきた人たちが今、日本が原発を再稼働させることに懐疑的になっていることを重く受け止めなければならない」
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