1万8194件、過去最多、福島いのちの電話昨年の相談
1万8194件過去最多 福島いのちの電話昨年の相談 震災3年深刻化
自殺を防ぐための電話相談「福島いのちの電話」の平成25年の相談件数が1万8194件と過去最多となった。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故関連の相談が依然、多く寄せられている。震災と原発事故から時間がたつにつれ、相談に変化が見られ、深刻度も増しているという。専門家は「震災や原発事故に起因する県民の悩みや苦しみは、日常生活の隅々まで影響を与えている」とみている。
23年は、震災で郡山市の相談事務所の電話回線の復旧に1カ月余りかかり、1万3677件と減少したが、24年は1万7881件と増加に転じた。25年は1万8194件で、前年を313件上回った。
事務局は、福島いのちの電話の認知度が高くなってきたことに加え、震災と原発事故の影響が増加の要因と分析している。23年度の震災と原発事故に関する相談件数は1068件。24年度の件数自体は826件と減少したが、1件当たり平均の相談時間は長くなっている。25年度は集計中だが、同程度とみている。
震災と原発事故から3年がたち、相談内容、深刻さも変化している。事務局によると、放射線をめぐる避難についての夫婦間の考え方の違いや、離れ離れで生活している家族間の心理的な溝に関する相談が増えているという。
震災と原発事故直後は「人のつながりを感じた」「あらためて命の大切さを実感した」などの声も聞かれたが、最近では喪失感や孤独感など、人生に対して否定的、悲観的な訴えが目立ち、自殺をほのめかされるケースもある。
「津波が来たときに人を助けられなかった。苦しい」「救助活動に携わったが、助けられなかった。今の仕事を続けていく自信がない」など、震災当時を思い出し、自責の念にかられて電話を掛けてくる相談者もいるという。
渡部信一郎理事兼事務局長(66)は「震災と原発事故は多くの県民に影響している。一人でも多くの人の相談に対応していきたい」と話している。
■悩み、苦しみ多様に 筒井福大教授
福島大災害心理研究所長で共生システム理工学類教授の筒井雄二さん(49)は「震災や原発事故に起因する県民の悩みや苦しみは、時間経過とともに内容を変化させながら日常生活の隅々まで影響を与えていると考えられる。相談件数の増加は、震災、原発事故による心理的影響の多様化の表れではないか」と話している。
※いのちの電話
60年ほど前に英国ロンドンで活動が始まり、日本では昭和46年に東京に設立された。現在、全国で51センター(25年4月現在)が加盟している。福島いのちの電話は平成9年に開設され、約2年間の研修を受けた約110人の相談員がボランティアで相談に当たっている。福島、郡山のどちらかの事務所に2人が常駐し、2回線で受け付けている。年中無休で毎日午前10時から午後10時まで。電話024(536)4343へ。
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