破滅に向かう中国経済(3/4)
破滅へ向かう中国経済 四面楚歌の習近平 政治介入する軍
Wedge 6月30日(月)12時20分配信
不動産市場の崩壊がもたらす経済面の負の効果も大きい。たとえば不動産市場の不況を受け、今年1月から4月までの全国の不動産投資の着工面積は前年同期比で22.1%減となったが、不動産投資がそれほど減ると、今後は鉄鋼やセメントなどの基幹産業から家具・内装などの民需産業にも不況が襲ってくるのは必至だ。対外輸出がすでにマイナス成長に転じた中で大変苦しんでいる中国経済は今後、さらなる減速と衰退を避けられないであろう。
まさにこのような経済衰退の惨憺たる未来を見越して、著名経済学者の許小年教授は5月21日、多くの国内起業家に対して「中国経済の長い厳冬に備えよう」と勧めた。台湾出身の名物経済学者の郎咸平氏も同27日、「中国経済は既に長期的不況に入った」と喝破した。
どうやら中国経済は陽春の去る5月からすでに厳しい冬の時代に突入しているようだが、この厳冬の先には「春」がやってくるような気配もまったく見えない。むしろ、破滅的結末へと確実に向かっているようである。
中国経済の置かれている現状を考えると、まさに今という時期において慣例を破って中央財経領導小組の組長に就任した習主席の行動は、少なくとも彼自身にとっては、まさに火中の栗を拾うような愚行であることがよく分かる。どう考えても今から破綻していくであろう中国経済の運営を、彼は最高責任者として自ら引き受けたわけである。今後、経済破綻の責任問題が彼自身にふりかかってくることは火を見るより明らかであり、権力を掌握するどころかむしろ、彼自身の権威失墜と権力基盤の弱体化に繋がるに違いない。
しかしそれでも彼は一体なぜ、本来ならならなくてもよいはずの中央財経領導小組の組長に自らなってしまったのだろうか。
習主席自身がどうしてこのような判断を下したかは今でも不明であるが、彼の下したこの判断に大いに助けられた一人の人物がいる。そう、現役の国務院総理の李克強氏である。本来なら、この李氏こそが国の経済運営の最高責任者として中央財経領導小組の組長に就任すべき人物であり、彼こそ今後における中国経済破綻の責任を一身に背負っていかなければならないはずだった。しかし習主席が自ら貧乏くじを引くような形で経済運営の最高責任者の役割を引き受け、李総理は責任を負わずにして逃げることが出来たのである。
おそらく李氏の腹積もりとしては、今後は経済運営の最高責任を習主席に負わせたまま、自分が何とか国務院総理の責務を一期限り果たした後、4年後に開催予定の全国人民代表大会で総理の職を辞して、総理よりも序列が上の次期全国人民大会委員長の「名誉職」に昇進する魂胆であろう。そうすると、中国経済が破綻しようがしまいが、彼は無傷のまま自らの地位を守り通すことが出来るのである。
もちろんその場合、政治的地位が守られるのは李克強氏という個人だけではない。実はそれは、李氏自身が所属する党内最大派閥の共青団派(共産党主義青年団派)の政治勢力の保持にとっても大変重要なことである。
共青団派というのは、共産党元総書記の胡錦濤氏がその在任中に、自らの出身母体である共産主義青年団から幹部を大量に抜擢して作り上げた派閥であるが、胡氏が退任した今でも、この派閥は党と政府の中で大きな勢力を擁している。
とくに今の共産党政治局には汪洋氏(国務院副総理)、孫政才氏(天津市党委員会書記)、胡春華氏(広東省党委員会書記)などの50代そこそこの共青団派若手幹部が控えている。そして2017年開催予定の次期党大会で今の政治局常務委員の大半が年齢制限によって一斉に退陣した後、彼ら共青団派の若手が一挙に政治局常務委員会入りを果たして最高指導部を掌握する構えである。
それこそが共青団派による次期政権戦略であるが、それを達成するためには、現政権における共青団派の代表的人物である国務院総理の李克強氏が無傷のまま総理職を全うことが前提条件である。逆に大きな失敗を犯して責任を問われるようなこととなれば、共青団派の次期政権戦略が狂ってしまう可能性は大であろう。
だとすれば、国務院総理としての李氏ではなく、習主席自身が経済運営の最高責任を負って例の中央財経領導小組の組長に就任したことは、共青団派にとってむしろ大変都合の良いことなのである。彼らはそれで、胸を撫で下ろしたはずである。
そうすると、考えられる可能性の一つとしては、李氏とその所属の共青団派は何らかの「謀略」をもって、習主席が例の組長に就任するよう仕向けた、ということもあり得るのであろう。そうすることによって李氏自身と共青団の保身を図れたのと同時に、経済破綻の責任を習主席に投げつけることによってライバル派閥の太子党の力を削ぐこともできるはずだ。つまりそれは、共青団にとって一石二鳥となるのである。
逆に習主席自身の立場からすれば、中央財経領導小組の組長就任という愚行は、将来においては自らの墓穴を掘ることになるのかもしれない。どうやら習近平氏は、知らず知らずのうちに窮地へと追い詰められているようだ。
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