日中軍拡競争、戦力逆転の分水嶺(4/4)
中国が日本に仕掛ける軍拡競争 戦力逆転の分水嶺
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- 2014/6/30 7:00
中国は東シナ海での有事対応に一枚岩ではない米国を見透かしている。安保関係者らの話を総合すると、中国が尖閣奪取でとりうる策は漁民を装った大量の海上民兵が上陸し、続いて「中国国民を守る」という名目で海警や軍を上陸させるという「グレーゾーン」シナリオだ。尖閣の管轄権を一気に奪い「日本の施政下ではない」という米軍が介入しにくい状況をつくり出す狙いだ。
日本も備えを急いでいる。第5世代のステルス戦闘機F35や無人偵察機「グローバルホーク」、新型潜水艦、水陸戦部隊の配備のほか、陸海空部隊の統合作戦能力や部隊の南西諸島への緊急展開能力を引き上げている。だが、日本が防衛力を高めれば、次に中国は航空優勢確保のために、東シナ海に戦闘機を重点的に配備するなどの手を打ってくるだろう。
■中国がみせた隙
対抗上、日本も戦闘機の数を増やすオプションはあるだろうが、1000兆円の債務残高を抱えるなかで防衛費拡大には限界がある。
ただ、中国にも隙が垣間見える。「中国共産党は大まかな方針を示すだけで、具体的な動きは軍に丸投げしているため軍の挑発行動が頻発している」(中国軍に詳しい情報筋)。軍の暴走というよりも、軍事費拡大で手にしたばかりの新型装備を使ってみたくてたまらない子供のような心境に近い。結果的に、周辺国の警戒を呼び、軍事バランスを均衡させる力学が働く。
日本は限られた防衛予算の中、必ずしも中国と同規模の軍事力を持つ必要はない。現代の航空戦では相手の3分の1の戦力を失わせることができれば、相手は作戦を維持できなくなる。中国が「日本を攻めるのは厄介だ」と思わせることが戦略目標となる。
集団的自衛権の行使容認は米軍との連携深化で、尖閣有事の際に米軍が「見てみぬふり」ができない状況をつくる方策のひとつだ。中国の南シナ海での強硬姿勢の結果、フィリピンやベトナムなど日本の味方も増えている。有事への軍事面での備えはもちろんだが、あらゆる外交努力を含めた対応が欠かせない。
=敬称略
(高坂哲郎)

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