”夢のエネルギー”核融合発電技術の今、(6/7)

順調に建設が進む“影のITER”
日本はITER建設地をフランスに譲った代わりに、人的資源以外にもう1つの“特権”を確保した。それが、冒頭で触れたJT-60SAだ。名前こそかつてのJT-60シリーズを踏襲しているが、実際にはEUとの共同プロジェクトである。それまでのJT-60シリーズが常電導による巨大なコイルを用いていたのに対して、JT-60SAは、超電導コイルを用いるため、大型化したものの見た目はむしろスリムになった。
JT-60SAの第1の目的は、ITERの技術的バックアップで、「サテライトトカマク」とも呼ばれる。D-T反応は試さず、重水素(D)だけでプラズマの制御実験を進める。ただし、それ以外はITERよりも先進的な設計を採用した。ITERの次に各国が実現を目指す原型炉を先取りした格好になっている。装置についての費用は約435億円だが、日本とEUがほぼ折半する。周辺システムの費用200億円は日本が独自に負担するが、総額600億円超で、ITERの1/100という低コストで済む見通しである。
ITERに比べて費用が安い理由はまず、寸法がITERの約1/2(体積では約1/8)の規模であること、電流はITERの1/5であること、D-T反応を扱わず、システムが簡素で済むこと、コストが高いコイルが先進的な設計のおかげなどでITERよりも少なくて済むこと、同じ東海村でかつて稼働していたJT-60Uの周辺装置を一部使えることなどが挙げられる。ただし、低コストの実現で決定的だったのは、ITERほど「船頭」が多くないことだという。「7カ国・地域で意見や技術水準を一致させるのは非常に大変」(ある核融合技術者)。対して、JT-60SAは、EU(実質はイタリアとスペイン、フランス、ベルギー、ドイツ)と日本の2カ国・地域で進められ、意思決定が容易だという。
NEXT ≫10m規模の装置の許容誤差は±1mm
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