調査スクープ!原発近隣住民の間で「悪性リンパ腫」多発の兆し(4/5)
調査スクープ!原発近隣住民の間で「悪性リンパ腫」多発の兆し ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第5回】~
宝島 3月9日(月)12時10分配信
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【表5】CDCレポートの「ガンの最短潜伏期間」 |
13年の最新人口動態統計データの検証作業を通じて判明した事実は、これだけではない。
昨年11月に逝去した俳優・高倉健さんの死因は「悪性リンパ腫」だったとされる。その悪性リンパ腫が、原発直近で暮らしていた「避難7町村」の人々を襲っていた。
改めて【図1】を見てほしい。本誌取材班では今回、「循環器系の疾患」年齢調整死亡率だけでなく、福島県における過去5年間の「悪性新生物」(ガン)年齢調整死亡率の推移も検証している。前述したように避難7町村では、循環器系疾患による同死亡率とガンによる同死亡率の上下が短期間に入れ替わる「逆転」現象が起きていた。
原発事故と発ガンの関係を考える時、重視すべきなのは、ガンの種類ごとに異なる「潜伏期間」である。
当連載の第2回でも触れたが、米国のCDC(疾病管理予防センター)では、01年9月の世界貿易センター事件(いわゆる「同時多発テロ」事件)を受け、ガンの最短潜伏期間に関するレポート『Minimum Latency Types or Categories ofCancer』(改訂:13年5月1日。以下「CDCレポート」)を公表している(【表5】)。
避難7町村の人々は、事故発生からの数日間だけで77京ベクレル(77×10の16乗ベクレル)にも及ぶ放射能が原発から漏れ出す中、防護服もゴーグルも防塵マスクも着けずに避難していた。
CDCレポートによれば、白血病と悪性リンパ腫の最短潜伏期間は「146日」である。最短潜伏期間はとうの昔に過ぎている。私たちはこの2つのガンに着目し、さらに検証してみることにした。
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【図5・6・7】「白血病・悪性リンパ腫」年齢調整死亡率の推移 |
【図5】は、避難7町村住民における過去5年間の「白血病」「悪性リンパ腫」年齢調整死亡率をグラフにしたものである。まず、白血病を見てみると、原発事故のあった11年に急上昇し始め、翌12年には全国と県の同死亡率を上回る。13年も、さらに上昇し続けている。全国の同死亡率を計算した【図6】や、福島県の同死亡率を計算した【図7】とは、見た目にもまったく違う折れ線グラフになっている。
最新13年における白血病の同死亡率は「10万人当たり3.4人」。この年は全国の値も若干上昇(同3.3人)したため、ほぼ同じレベルだが、福島県全体(同2.8人)と比べると1.2倍となり、何らかの“異常事態”が起きていると見て間違いない。
13年の時点で総人口およそ6万5000人の避難7町村における白血病死者数は、09年が4人、10年が2人で、11年、12年、13年はともに3人ずつ。実数では“横ばい”だった。
一方、原発事故前はおよそ7万人ほどだった避難7町村の人口は、11年以降、急減している。原発事故以降の3年間で5000人も減った計算になり、「10万人当たり」の値で示す年齢調整死亡率が、この影響を受けずに済むはずがない。
白血病の同死亡率を押し上げている最大の要因は、どうやらこの「人口減」にあるようだ。避難7町村で起きている“異常事態”とはつまり、急激な人口流出のことだったのである。ただし、白血病は近年、全国規模で増加する傾向にあるので、今後も注意が必要だ。
が、安心するのはまだ早かった。人口動態統計は、悪性リンパ腫のほうで「異変」を捉えていたのである。
リンパ腫は白血病と同様、放射線被曝によっても起こるとされ、被曝による労災認定の際の「労災対象疾患」になっている。
避難7町村における悪性リンパ腫死者数は、09年4人、10年7人、11年2人、12年6人、そして13年の9人である。原発事故以降は「毎年3人ずつ」の白血病とは様子が異なり、死者の実数で増加している。
【図5】の年齢調整死亡率グラフを見ると、悪性リンパ腫は直線的に増加しており、白血病とは明らかに異なる軌跡を描いている。
最新13年の同死亡率は「10万人当たり6.0人」。この数値は、全国(同3.7人)の1.6倍であり、福島県県全体(同3.4人)と比べれば1.8倍にもなる。「人口減」だけでは、とても説明がつかない。
避難7町村の住民たちの間では、悪性リンパ腫「多発」の兆しがすでに表れている──。
素直に検証結果を見れば、そう受け取るしかない。避難7町村でガンと循環器系疾患の年齢調整死亡率が短期間に「逆転」したことの背景には、こうした「異変」(=多発の兆候)が潜んでいたと考えれば、辻褄も合う。
循環器系疾患を見る限り、避難した人たちは健康被害から逃れられたかに見えた。だが、悪性リンパ腫からは逃げ切れなかったのかもしれない。
避難7町村における悪性リンパ腫は、特に「50歳以上」の「男性」たちの間で集中発生していた。放射能汚染地帯におけるガン多発は、どうも「子どもたちだけ」の問題ではなさそうである。
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