米日の後を追うギリシャ
米日の後を追うギリシャ
「森喜朗記念ラグビー競技場」とも、「森喜朗古墳」ともネットで揶揄(やゆ)されている新国立競技場が、ついに見直しになるようだ。
安倍晋三は、総工費が2520億円に膨らんだことに対する国民の批判に慌てて、建設計画を見直す。支持率低下の理由に、この高騰した建設費があると進言する者もいて、戦争法案で支持率低下が必至のことから、見直しを決めたようだ。
この男らしく、支持率低下という、あくまでも個人的な理由からだった。
建設費を少しだけ下げて、批判が下火になったところで、今度はお得意の隠蔽で、建設費を上げていくことになろう。とにかく自民党、財界(ゼネコン)、官僚にとっては、千載一遇の儲けのチャンスなので、手放すことはないだろう。
メディアが監視し続けねばならないのだが、これも尻すぼみになる可能性大である。
見直すと、工期が遅れ、19年W杯には間に合わなくなる。それで安倍晋三は、森喜朗と17日に首相官邸で会談して、了解を得る。実態は、W杯のための「森喜朗記念ラグビー競技場」であることが証明された形だ。国民は、ばかにされきっているのである。
今日のメルマガではギリシャ問題を考えてみる。以前のメルマガを読んだ購読者の皆さんは、米日こそギリシャの先達であり、反面教師であることをご存知だろう。けっして遠い外国の問題ではないのである。
『AFP』(7月16日)が「ギリシャ、債権団の厳しい財政改革案を可決」と題して、次のように報じている。
「ギリシャ議会は16日未明、債権団が支援再開の条件として要求している厳しい改革法案を大差で可決した。
採決の結果は賛成229、反対64、棄権6。
アレクシス・チプラス(Alexis Tsipras)首相に対しては与党・急進左派連合(SYRIZA)内からも反発の声が出るなど、改革案の採決まで党の分裂も懸念されていたが、欧州連合(EU)支持派の野党の協力により法案は可決された。
チプラス首相は、増税や年金制度の見直し、国有資産の民営化など、厳しい改革案の大半には同意できないと主張する一方で、ギリシャがユーロ圏にとどまるには他に選択肢がないと述べた」
ギリシャのチプラスに一貫しているのは、(1)EUへの残留(隷属)と(2)民意無視、である。
このスタンスは、EUを米国と置き換えれば、そのまま安倍晋三の政治的スタンスである。これで、今後、ギリシャはEUの奴隷国家としての道を歩むことになる。
『Foreign Affairs Report』(7月10日)が、ギリシャ融資の正体を暴いている。
「ギリシャがディフォルトに陥り、独仏の銀行がその損失を埋めようと各国の国債を手放せば、債券市場が混乱に陥り、欧州全土で銀行破綻が相次ぐ恐れがあった。これが危機の本質だ。EUはギリシャに融資を提供し、独仏の銀行を助けたに過ぎない」
『マスコミに載らない海外記事』(7月16日)に「今や我々全員ギリシャ人」という Chris Hedges の論文が載っている。
「アメリカ合州国の貧者と労働者階級の人々は、ギリシャ人であることが何を意味するかを知っている。不完全雇用と失業を彼等は知っている。年金のない生活を彼等は知っている。一日数ドルでの暮らしを彼等は知っている。料金を支払えない為に、ガスや電気が止められるのを彼等は知っている。借金の壊滅的な重みを彼等は知っている。病気になっても、医者にかかれないことを知っている。国が、彼らのわずかばかりの資産を没収するのを彼等は知っている。
アメリカ合州国で“国民財産没収”として知られるものにより、アメリカの警察が、30億ドル以上の現金や資産を没収することを認めている。学校、図書館、近隣の診療所、デイケア・サービス、道路、橋、公共の建物や支援プログラムが、放置されたり、停止されたりした際の深い絶望と放棄の感覚を彼等は知っている。金融エリートが、民主的組織をハイジャックし、緊縮策の名の下で、広範に、窮乏を押しつけるのを彼等は知っている。彼等は、ギリシャ人同様、見捨てられるのがどういうことかを知っている」
ここでは米国市民は、ギリシャ市民と同じだと語られている。もちろん日本国民とてギリシャ国民と同じである。
深刻なのは、日本のお花畑は、東京の大手(「記者クラブ」)メディアが「ギリシャ人怠け者」イメージを刷り込んだこともあって、「日本人はギリシャ人の窮状を知らない。日本人はギリシャ人とは違う」となっていることだ。日本国民の多くは、相変わらず「日本スゲー系」のお花畑で遊んでいる。
Chris Hedges は続けて書いている。
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「刑事司法は、正義や更生よりも何よりも、主として、アメリカ合州国の市や州政府の収入源だ。ミズーリ州ファーガソンでも、どこでも、貧者は、ささいなことで逮捕され、罰金を科される。芝生を刈らないかどで、ニューヨーク市の地下鉄車輛に足を載せたかどで。
もし罰金を払えないと、実際多くが払えないが、連中は刑務所行きになる。刑務所では、彼等は、部屋代と食事代を課されることが多い。そして、もしこの請求が払えないと、彼等は再度刑務所行きになる。循環する、果てしない、貧者からの強奪ゲームだ。未払いの罰金は利子までつけられ、逮捕状が出されることになる。貧しい人々は、駐車違反や、交通違反で、何千ドルもの罰金を負わされる結果になることが多い」
貧困と刑務所が限りなく近付いてきた。日本では、国民年金滞納者も差し押さえられる。まず厚生労働省が督促状を送る。指定した期限までに年金を払わない場合は、財産を差し押さえる。
冷酷なことには、督促状が届くと同時に延滞金が発生する。完全に犯罪者扱いだ。この官僚の傲慢さは、現在の安倍政権の傲慢さと足並みを揃えたものだ。
奨学金の滞納者も裁判で取り立てられる。奨学金は金融事業と位置づけたうえで、支援と称して貧しい大学生に金を貸す。返済が滞ったら、延滞金を年10%もとる。どんどん追い詰めていき、経済徴兵制に追い込んでいく。こういうことだから、経済徴兵制の実態は貧困徴兵制と呼んだ方が、より剴切だ。
延滞が9か月を超えると、機構が簡裁に支払い督促を申し立てる。財産を差し押さえるか、相手に異議があれば犯罪者扱いして告訴する。若者は将来の納税者であり、国の希望である。こういう仕打ちを受けた若者が国を愛するはずがない。
政治がやるべきは、国内の貧しい若者に返還義務なしの給付をすべきなのだ。
もっと読んで見よう。
「“アメリカは、福祉制度を、刑事制度に変えた国だ”と、カレン・ドランと、ジョディ・L・カーが、“貧者は監獄に行く”と題する政策研究所の報告書に書いている。“余りに貧しくて住む所が無い人々の、生きる為の活動を、我々は犯罪扱いしている。アメリカは、世界中の他のどの国より多数の人々を投獄している。
アメリカでは、事実上、服役をつとめあげた後、社会参加させずに、彼等を一生、牢獄に閉じ込める政策を制度化している。債務者刑務所の復活を我々は認めてしまったのだ。貧しい子供達や、黒人やラテン系の子供達に対して、二流の公教育制度を作り上げ、彼らの行為を不均衡なほどに、犯罪者として扱い、早くから、彼等に支援や機会をあたえずに、投獄への道を辿らせる。”
大企業による市民社会解体が、ギリシャでは、ほとんど完了した。アメリカ合州国では、それより遥かに進んでいる。我々は、ギリシャ人同様、世界中のオリガルヒ(ユダヤ財閥 注 : 兵頭)がしかけている政治戦争をしかけられているのだ。誰も彼等を選挙したわけではない。連中は世論を無視する。ギリシャでと同様、もしある政府が国際金融界に逆らえば、その政権は死刑対象となる。銀行は民主主義のルールに則って活動してはいないのだ」
先頭を米国が走っている。日本が続き、その後をギリシャが追うことになる。
「アメリカは、福祉制度を、刑事制度に変えた国」というのは、もう日本にも定着している。日本の福祉制度は、貧困層からの収奪制度のことだ。
国際金融資本による市民社会解体が、米日とも完了し、ギリシャでも完了した。
今時、国会前の戦争法案反対運動を「市民革命」などと呼んで粋がるのは、市民社会そのものが解体されていることを知らない時代錯誤のばかである。国会前の運動は、あくまでも戦争法案反対運動であり、せいぜい安倍政権打倒運動である。その方が運動は持続性と広がりをもつだろう。
ギリシャのチプラスはなぜまだ生きていられるのか。その答えは、オバマは、そしてわれらの安倍晋三はなぜまだ生きていられるのか、という問いへの答えと同じである。3人とも、世界の1%のために国内の99%を捨てたからだ。
「アメリカは、福祉制度を、刑事制度に変えた国だ」とは、すでに日本でも進捗している。今では生活保護を受けにくい、貧しいことは悪いことであるかのような空気が日本国内に充満している。
自力で生きていけない人を国が助ける必要はない、といったアンケート結果も、日本は世界でずば抜けて高い割合を示している。
「日本 38%
アメリカ 28%
イギリス 8%
フランス 8%
ドイツ 7%
中国 9%
インド 8%」
日本と米国が際立って高いが、日本は2位の米国を10%も引き離している。この冷酷さのバックボーンがあるから、いずれ、米国並みに日本も投獄されるようになるだろう。
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