コレステロールは体にどうしても必要ですから、体内のコレステロールの約70%は自分で合成します。つまり、食品からコレステロールが入ってこなければ、自分で作り、食品から多く入ればそれだけ合成する手間(エネルギー)が省けるという訳です。

だから、基本的には「食品ではコレステロールの値を変えることはできない」ということで、食事療法などは有効ではありません。特に「病的」ではなく、「生活習慣的に油をよく採る」という場合、生活習慣の改善(たとえば油を控える)では、全く改善はできません。

この事実を、動脈硬化学会では「正式ステートメント」として、201551日に「アメリカが食品の制限を撤廃したから」という理由を最初で主要な理由として掲げている。これはかなりひどい声明でなにかの理由(たとえば厚労省からの圧力・・・学会に対する圧力は学問の自由に関する憲法違反だが)などがあったのかも知れない。

でも、それによって「日本人はどうなのか」が分からない。先回の記事で整理したように、コレステロールの値は北方白人と日本人ではかなり違う。日本食は「焼き魚、煮物、味噌汁」だから油で味をつけない。それに対して北方白人は「サーロインステーキ、ベーコン、オリーブ油」など油まみれの食事をするから、体質的にもかなり異なる。

だから、日本の学会は日本人に対する研究に基づいて判断してもらいたいところであり、コレステロールの問題のようにすでに50年を経る場合は多くのデータがある。このように私が書くのは、私の判断のソースの多くが「日本人の研究」に基づいているからだからでもある。

私は痛風で、プリン体の多い食事やビールを飲んでもさっぱり尿酸値が変化しない。おかしいと思って調べたら、尿酸も体内合成量が70%だから食事療法が有効ではない。私一人でも分かっているのだから、コレステロールも日本人を対象とする研究で「食物に影響はない」と声明を出すべきだろう。

ともかく、50年続いた、「油の少ないものはヘルシー」、「料理の時に油を落とす」というのはコレステロールについては間違っていたのだった。(もちろん、病的なものは除く。生活習慣病というのが間違っていたのだ。)

(平成27524日)