膨張する「中国の夢」に日本はどう向き合うか(4/5)
膨張する「中国の夢」に日本はどう向き合うか
そのような状況の中で、中国は、自らが主体となるAIIB構想について、アジアには膨大なインフラ需要があり、既存機関を損ねるものではないと主張する。そして欧州諸国の加入により多分、当初考えられていた構想とは多少異なる方向に動き出しているようである。当初は中国が牛耳る銀行の構想で始まったが、現在は国際的なスタンダードを意識し、かつこれまでの国際開発金融機関の官僚主義や高い管理コストを削減するという改革の方向性も打ち出している。
中国の出資比率は当初想定された50%から30%程度に下げられ、調達について加盟国に限られない公開入札制、理事の常駐はせず管理コストを最小限にすることなどが、考えられているようである。確かに中国は最重要事項の決定に拒否権を持ち得るし、理事を本部に常駐させないのも中国の意向を通しやすくする工夫かもしれない。しかし建前は「正当性」を維持できる工夫がほどこされているようである。
中国をこちらの世界に引き込む努力を
AIIB参加はその手段の一つ
さて、このような「中国の夢」に日本はどう向き合っていくべきなのだろうか。日本は価値観の大きく異なる中国の世界に入っていくわけにはいかない。中国を孤立させることも同国をめぐる相互依存関係の大きさからすれば現実的ではあるまい。むしろ中国をこちらの世界に引き込む努力を続けなければならない。このために幾つかの施策は重要な意味を持つのだろう。
中国は「力には力」と捉えがちであり、日本が日米安保条約の下、万全の安保体制を構築するのは正しい。その意味で日米防衛協力の新ガイドラインや集団的自衛権の限定的行使を容認する安保新法制は正しい方向である。米国が内向きとなり、一方的行動よりもパートナーとの協調を求めるとき、日本は日本の役割を増やさなければならない。
その上で、日本は将来の対中関係のビジョンを語る時が来ているのではなかろうか。安全保障能力を上げることと、安全保障環境を良くする外交努力を表裏一体で進めなければならない。例えば、偶発的衝突を避け、この地域の軍事的透明性を上げるため地域信頼醸成枠組みを語る時ではないか。今こそ中国を巻き込む環境やエネルギー協力の未来図を示す時ではないか。そして今こそAIIBへの参加を語る時ではないだろうか。
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