コレステロールと同じように「疑問満載」なのが「血圧」だ。この血圧の問題はこのブログでも取り上げているが、コレステロールを抑制する薬より遙かに膨大な売り上げを上げているのが、「降圧剤」で、良心的な医師、特に開業されている医師が毎日のように苦しんでいる。

というのは、厚労省が異常に低い「ガイドライン」を出すので、そのガイドラインを越えた患者さんに対して降圧剤を処方せざるを得ないという事態になっている。

たとえば、風邪で病院に訪れた患者さんが他の病気も疑われるし、やや全身の状態も悪いので、医師が血圧を測ったとする。そうしたら、厚労省のガイドラインから言えば「高血圧」ということになるので、医師が血圧を下げるのはかえって病状を悪くすると思っても、降圧剤を処方せざるを得ない。

その結果、降圧剤の市場は1980年代は約3000億円だったのが、2010年にはその3倍の9000億円に増えた。日本人の血圧は若干低下傾向にあり、血圧は低下しているのに血圧の降圧剤はどんどん増えるという奇妙なことが起こったのである。

表紙の乗せた×のグラフは実に奇妙な現実を示している。「減塩」という健康指導が行き渡って日本人の平均の血圧は低下を続けているのに、それに反比例して血圧の降下剤が爆発的に売れている。

本来、減塩で血圧が低下すれば、それの伴って降圧剤の処方は減るのが当然だから、こんなことは起こらない。降圧剤のメーカーにしてみれば、あまり減塩をすると降圧剤が売れなくなると心配するだろう。それが逆なのだ。

このようなことは国の指導で行われるものに多い。つまり何かの利権などが絡んで現実と離れた政策が「国単位」で行われていることを示している。女性の所得と子供の数の関係に関する内閣府の少子化対策のグラフ(ダイヤモンドに記載してもらった)、男性の喫煙率と肺がんの関係のグラフや男性の喫煙率と女性の肺がんの関係のグラフなどがその例である。

なぜ、血圧が低下しているのに降圧剤が3倍も売れているのか? それこそ現在の日本が「万機公論に決すべし」という明治天皇の教えを守らず、「個別の利益だけ、国民の健康は考えない」という恐るべき現状を示している。

(平成27527日)