膨張する「中国の夢」に日本はどう向き合うか(5/5)
膨張する「中国の夢」に日本はどう向き合うか
日中の戦略的将来ビジョンを示せ
70年談話は大きな機会
AIIBへの参加については幾つかの点について十分な考慮を払う必要がある。
第一に、アジアで質の高いインフラ構築を実現していくのは日本政府の方針であろうし、これを実現するために日本もAIIBに入って中から影響力を行使していくべきである。欧州諸国の出資比率は域外の諸国に割り当てられる25%の枠内での話となり大きな発言力を担保するのは難しい。日本が入れば75%の枠の中で相当高い出資比率と発言力を担保できる。アジアの諸国は日本が参加し、一定の発言力を担保することで安心をし、歓迎をするであろう。頑なに突っ張る日本より柔軟で能動的な日本が求められている。
第二に、アジア開発銀行(ADB)とAIIBの協力関係を確立することである。ADBは質の高いプロジェクトへの融資を実行してきた訳で、その知見を役に立てるべきである。ただアジア開発銀行自身も融資枠の拡大や新興国の発言権の拡大など、改革を加速していかねばならない。
第三に、他方、日本は唐突に参加を打ち出すわけにはいかないだろう。何故この時期に参加表明をするのか理屈がいる。その意味でも日中関係の将来ビジョンを首脳が語るときに、その一部としてAIIBへの参加を打ち出すべきなのだろう。
本年8月15日は終戦後70年であり、首相談話が想定されている。過去に対する真摯な総括(筆者は侵略・植民地支配・心よりのお詫びという村山談話のキーワードを外してはならないという立場である)と共に、未来へのビジョンを打ち出す好機となるだろうし、その際AIIBへの参加も語るべきである。このような首相談話は世界に歓迎されるだろうし、日本の地域および国際的な地位は上がる。
第四に、対米関係である。対米関係は先の首相訪米により極めて良好な関係にあると考えられる。米国は日本が戦略的将来ビジョンを示し、AIIBへの参加をその中に位置づけることができれば納得をするはずである。米国が参加できなくとも日本の参加が米国にとっても利益である世界をつくることこそが、同盟関係の役割分担なのだと思う。
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