合意のための原発論その6、金目
2015年05月15日
合意のための原発論その6 金目
原発を再開したいという人の第一の理由は「金目」です。もし、原発より石炭火力が安く、今ある設備をタダで廃棄できれば原発を再開したいという人はほとんどいなくなるでしょう。お金以外に原発を進める理由としては「原爆を作る、温暖化を防ぐ、資源」の3つがありますが、これはまた別の機会に整理をします。
経済学者などがもっとも重要視しているのは「今ある原発がもったいない」ということです。原発は一基3000億円から4000億円。それが日本で50基ほどありますから、現在の価値が作ったときの半分ぐらいとして一基2000億円とすると、10基で2兆円ですから、その5倍の10兆円ほどの資産になります。もう少し厳密に計算すると、すでに老朽化したり、小型の原発もありますし、さらに今後の運転で補強なども必要ですから、優良資産としての原発という意味では5兆円程度と算定されます。
原発を捨てた方が良いという考え方・・・5兆円は日本のGDPの100分の1程度だから、事故の被害の大きさを考えれば、原発を捨てる費用はそれほど大きくはない。この際、安心するためには捨ててしまった方が良い。
原発を捨てるのはもったいないという考え方・・・5兆円は大きい。それに個別の電力会社の負担能力を超える。東電福島で死んだ人はいないのだから、大げさに言うな。
ということと思います。
原発についてはものすごく日本が分裂していますから、私は5兆円ぐらいのお金より「合意して日本の行く先をはっきりする」という方が「金目でも得策」と思いますが、どうも経済評論家などはやはり5兆円が大きいと思っておられるようです。
「原発を捨てる」と言いましたが、実は「捨てられない」のが現実です。これも「廃炉が決定」などと報道されていますが、今のところ廃炉にする方法は存在しません。どのようにして原発を切り刻んで、格納すれば良いか、どの程度にすればどこかに埋められるか、まったく見通しがないのです。現在130万本ある核廃棄物も捨てる場所がないので、まずは原発を捨てる方法と場所を決めてからでないと、正確な議論はできないということがわかります。
つまり、「捨てた方が良いと言っても、捨てられないから運転をしよう」というのと、「どうせそのままにしておいても危険だから運転しておく」という考えもあります。
原発は運転中でも停止中でも危険ですが、運転中に比較して停止中の危険度はやく10分の1ぐらいで、30年ほど経つとほぼ危険性は「核廃棄物」程度になります。だから早めに停止しておいた方が安全という点では有利です。
現在電力会社の合計の売り上げが21兆円、営業利益が合計6000億円程度ですから、5兆円の資産を捨てるには、ちょっと荷が重たいということは理解できるのですが、原子力関係予算が年に5000億円程度あるので、仕方が無いから国が原子力の税金を原発の廃棄に使えば処理できることになります。
しかし、原発の研究は廃炉、格納などに必要ですので、それが約1000億円程度と思います。そこで4000億円を廃炉に当てるというのが現実的でしょう。
事故を起こした経営責任をとらない電力にさらに税金を補填するのは実に残念ですが、私たち国民にも原発をやった責任がありますので、この際、思い切ってお金を出してしまうというのはどうでしょうか?
(平成27年5月13日)
以上は「武田邦彦氏」ブログより
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