★ニクソン、レーガン、そしてトランプ
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米国の大統領を選ぶ2大政党の予備選挙で、共和党はドナルド・トランプ、
民主党はヒラリー・クリントンが優勢になっている。他の候補が意外な巻き返
しをしない限り、早ければ3月1日のスーパーチューズデーで、遅くとも3月
中旬までに2人が両党の候補に決まりそうだ(民主党はバーニー・サンダース
が巻き返す可能性がまだ少しある)。米国は「2党独裁制」で、まず2党がそ
れぞれ各州ごとの選挙を積み重ねて2人の大統領候補を決め、2人の候補に対
して11月初めに有権者からの投票が行われて決まる。
http://www.politico.com/story/2016/02/trump-shatters-the-republican-party-219711
Trump shatters the Republican Party
http://www.newyorker.com/news/john-cassidy/a-huge-week-for-donald-trump-and-hillary-clinton
Are Trump and Clinton Now Unstoppable?
トランプとクリントンのどちらが勝つかは、白人票がどのような配分になる
かによる。民主党は「有色人票の8割以上と白人票の4割以上をとれば勝つ」
と言われている。前回12年の選挙で有色人票を圧倒的に集めてオバマが再選
され、クリントンはオバマの後継者とみなされているため、有色人票に関して
民主党は盤石といわれる。その一方でトランプは、この20年あまりの「進歩
的」な社会傾向の中で地位が低下し、貧富格差の拡大で低賃金化や失業に苦し
んでいる中産階級以下の白人男性の圧倒的な支持を集めている。トランプは大
金持ちだが、言い回しが白人のおっさん好みだ。白人票の多くをとれば、トラ
ンプが勝つ。
http://nypost.com/2016/02/15/donald-trump-has-invented-a-new-way-to-win/
Donald Trump has invented a new way to win
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/0c983610-dc83-11e5-8541-00fb33bdf038.html
Trump has the White House in his sights
米国の2大政党は、民主=リベラル・共和=保守という区分で、従来おおむ
ねこの線引きに沿って論戦が展開し、大統領が選ばれてきた。だが今回の米大
統領選挙は、テロ戦争の失敗、金融救済の末の貧富格差の増大などへの人々の
不満が拡大し、2大政党の両方で、エリート(大金持ち、大企業、金融界、軍
産複合体、国際主義者)と草の根(庶民、貧困層、国内優先派=「孤立主義者」
)との対立が激化し、リベラルvs保守よりも、エリートvs草の根の戦いにな
っている。トランプは草の根に支持され、党内エリートが支援する他の候補た
ちに30%以上の差をつけている。
http://www.independent.co.uk/news/world/americas/us-elections/donald-trump-has-more-support-than-all-his-republican-rivals-combined-a6903346.html
Donald Trump now has more support than all
his Republican rivals combi
ned, says new poll
http://www.reuters.com/article/us-usa-election-republicans-idUSMTZSAPEC2ABMIA9Y
Trump shows his presidential bid is no mere
publicity stunt
民主党でも、草の根に支持されたサンダースが意外な健闘を見せ、一時はク
リントンを打ち負かしそうだったが、2月27日のサウスカロライナでクリン
トンの圧勝後、サンダースの勝算が下がった(同州は黒人票が決め手で、前回
大統領選でクリントンがオバマに大敗したが、今回クリントンはオバマの後継
者ということで票を集めた)。クリントンは、ゴールドマンサックスやモルガ
ンスタンレーから講演を頼まれて巨額の金をもらったと伝えられるなど、金持
ちに支持された候補という印象を多くの人にもたれている。
http://www.bostonglobe.com/news/politics/2016/02/25/clinton-sanders-tied-new-mass-primary-poll/ZHya2Pyz4BeKjm2ukAvCXP/story.html
Clinton, Sanders tied in new Mass. primary
poll
http://www.zerohedge.com/news/2016-02-27/hillary-poised-landslide-victory-south-carolina-amid-strong-african-american-support
Hillary Cruises To Victory In South
Carolina Amid Strong African American Support
http://rinf.com/alt-news/newswire/hillary-clintons-very-bad-night/
Hillary Clinton's Very Bad Night
共和党内でトランプ、民主党内でクリントンが勝ったとして、これで両党内
がまとまるのかが次の問題だ。エリート(主流派)と草の根が分裂する懸念が
両党ともにある。共和党の主流派は、トランプをひどく嫌っている。国会議員
の中には、トランプが候補になったらクリントンに入れると豪語する者が続出
している。不動産業で成功したトランプは大金持ちで、軍産や金融界からの献
金を必要とせず、大衆の不満をすくい取る形で軍産や金融界を好き放題に批判
しているので、軍産と金融界に取り込まれている党主流派がトランプを攻撃し
ている。トランプが候補になったら共和党は分裂崩壊するという見方が出てい
る(主流派の脅しという感じもするが)。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/a8894c88-de42-11e5-b67f-a61732c1d025.html
Republicans race to derail Trump
http://www.washingtonpost.com/politics/divisions-within-gop-over-trumps-candidacy-are-growing/2016/02/28/97b16010-de3a-11e5-8d98-4b3d9215ade1_story.html
The Republican Party's implosion over
Donald Trump's candidacy has arrived
同様の現象として、民主党では、クリントンが勝った場合、サンダースの支
持者である草の根層が離反し、同じ草の根派のトランプに投票するのでないか
と懸念されている。共和党のトランプ支持者の中にも、クリントンを「大金持
ちの傀儡」「好戦派」として毛嫌いする傾向が強い。放映されるトランプの演
説を見ようと大画面の前に集まって待っていたトランプ支持者たちが、クリン
トンが画面に映った瞬間に皆ブーイングしたが、サンダースが出てくると敬意
を表して静かに見ていたというエピソードをFTが紹介している。
http://www.zerohedge.com/news/2016-02-25/why-hillary-clinton-cannot-beat-donald-trump
Why Hillary Clinton Cannot Beat Donald
Trump
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/28c34f8c-d189-11e5-92a1-c5e23ef99c77.html
Hillary Clinton's big, complicated world
新種の候補者が勝ったり、2000年のように得票が拮抗して決着がつかな
かった時など、米国の2大政党制はこれまで何度も崩壊すると言われつつ、崩
壊していない。今回も平然と延命するかもしれない。だが、米国の実体経済は
悪化を続けており、貧富格差の拡大は今後も続く。近いうちに金融危機も起き
そうだ。エリートvs草の根の対立はひどくなる一方だ。リベラルvs保守の2大
政党制の構図は、911以来、ネオリベラル(人権主義を装った好戦派)vsネ
オコン(保守派の好戦派)の構図に転換しており、2大政党のどちらを選んで
も好戦性の点で変わらなくなっている。こうした選択性の低下が改善されない
ままだと、2大政党制は崩壊する。
http://www.theguardian.com/commentisfree/2016/jan/31/hillary-clinton-barack-obama-bernie-sanders-us-election-2016
Obama's true heir is Hillary Clinton. But
that is a blessing for Bernie Sanders
クリントンは、人権や民主主義を非常に重視する「モダンな進歩派」を自称
するが、実質的には、独裁政権を武力で倒すべきと考える好戦的な「ネオリベ
ラル」だ。それは、国務長官時代にリビアのカダフィ政権を倒すことを強く主
張してオバマに受け入れられ、リビアの大混乱を作り出したことに象徴されて
いる。彼女の好戦性は、人権や民主を重視した結果というより、大統領になる
ため軍産複合体にすりよったからだ。武力による政権転覆は、無数の市民の死
と、何十年もの大混乱、ISISなど残虐なテロ組織の支配など、人権や民主
と正反対の状況につながることは、すでにイラク、シリア、リビア、アフガニ
スタンなどで実証済みだ。政権転覆が人権や民主につながるとクリントンが本
気で考えているとしたら、大統領になる素質がない大間抜けだ。
http://www.nytimes.com/2016/02/28/us/politics/hillary-clinton-libya.html
Hillary Clinton, `Smart Power' and a
Dictator's Fall
http://en.wikipedia.org/wiki/Political_positions_of_Hillary_Clinton
Political positions of Hillary Clinton From Wikipedia
http://govtslaves.info/assange-vote-for-hillary-clinton-is-vote-for-endless-stupid-war-which-spreads-terrorism
Assange: Vote for Hillary Clinton is `vote
for endless, stupid war' which spreads terrorism
対照的にトランプは、イランとの核協約を破棄すると約束したり、イスラム
教徒の米国入国禁止を提案するなど、一見、好戦派で人種差別者に見えるが、
彼が打ち出している国際戦略は、意外なことに、非常に現実的だ。トランプの
政策顧問であるサム・クロビス(Sam Clovis)は、トランプが外国における民
主主義や人権を守るために武力を使うことはないと断言している。
http://nymag.com/daily/intelligencer/2016/02/donald-trump-candidate-of-peace.html
Donald Trump: Candidate of Peace?
http://ballotpedia.org/Sam_Clovis
Sam Clovis
外国の独裁状態を改善するには、市場開放させて経済発展に導くと、いずれ
政治的に開けていくので、そのような経済戦略の方が、軍事戦略よりも有効だ
とトランプは考えているという。トランプは「イラクのフセインやリビアのカ
ダフィがいた方が中東は安定していた」と発言している。クリントンは、外国
の人権や民主を守ることが米国の国益になると考えているが、トランプは国益
をもっと狭く、実際の軍事脅威を受けた場合にそれを排除することだけに限定
している。クロビスによると、トランプは「リアリスト」(現実主義者)だ。
http://news.antiwar.com/2016/02/25/trump-world-better-off-if-saddam-gadhafi-were-still-in-power/
Trump: World Better Off If Saddam, Gadhafi
Were Still in Power
http://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2016/02/01/so-when-will-realists-endorse-donald-trump/
So when will realists endorse Donald Trump?
「リアリスト」は、米国の国際戦略の歴史の中で特別な意味を持つ言葉だ。リ
アリストは、武力による「民主化」を標榜して大失敗するアイデアリスト(好
戦派)の対極にある姿勢で、アイデアリストが無謀な戦争をやりまくって大失
敗した後、リアリストが出てきて「敵」だった国々と融和して強化してやり、
国際政治の体制を根幹から覆すことが、戦後繰り返されてきた。最も有名なリ
アリストは、ニクソン政権時代の大統領補佐官として、ベトナム戦争の失敗か
ら米国を救うためと称して中国と和解する策を打ち出したヘンリー・キッシン
ジャーだ。
http://tanakanews.com/070327GOP.htm
歴史を繰り返させる人々
キッシンジャーは、国連安保理の体制など多極型の世界秩序を好んだロック
フェラー家の傘下にいた。彼らは、多極化を阻止するために軍産英複合体が作
った冷戦構造を壊す目的で、意図的に過激なベトナム戦争をやって失敗し、現
実策をやるしかないとうそぶいてリアリストを自称しつつ、米中関係を改善し
てこっそり中国を強化してやったのでないか、というのが私の「隠れ多極主義」
の見立てだ。
http://tanakanews.com/071218multipolar.htm
世界多極化:ニクソン戦略の完成
http://tanakanews.com/080427multipole.htm
隠れ多極主義の歴史
ニクソンが開始した冷戦態勢の破壊を完成させたのが、同じく共和党のレー
ガン政権だった。レーガンは好戦派を装って大統領になり、米ソ和解や東西ド
イツの統合、EU統合の開始など、世界を多極化していく流れを作った。レー
ガンは大統領選挙期間の初期、今のトランプに似て、共和党主流派から泡沫・
変人扱いされ、攻撃されていた。
http://investmentwatchblog.com/hillary-and-jebs-nightmare-donald-trump-brings-back-the-reagan-coalition/
Hillary and Jeb's Nightmare - Donald Trump
Brings Back The "Reagan Coalition"
911以来の米国は、ニクソンからレーガンにかけての時期と類似した流れ
を繰り返している。911で軍産複合体がイスラム世界を恒久的な敵とする
「第2冷戦」の体制を構築しようとしたが、それが共和党のネオコンらによっ
て、大失敗への道があらかじめ埋め込まれた無謀なイラク侵攻へとねじ曲げら
れ、米国は好戦的になるほど覇権(国際信用)を失う構図におとし入れられた。
これらの展開は「新レーガン主義」を標榜したブッシュ政権下で起きた。
http://tanakanews.com/g0331neocon.htm
ネオコンと多極化の本質
http://tanakanews.com/150517coldwar.php
◆負けるためにやる露中イランとの新冷戦
次の現オバマ政権は、リビアやシリアで好戦策の継続を容認する一方で、イ
ランにかけられた核兵器保有の濡れ衣を解いてイランの台頭を引き出したり、
シリア内戦の解決をロシアに任せるといった多極主義的な態度をとった。しか
も同時にイラクやアフガニスタンからの軍事撤退を挙行して覇権を温存すると
いう、単独覇権主義と多極主義が入り混じった姿勢をとってきた。
http://tanakanews.com/150420iran.php
◆イランとオバマとプーチンの勝利
http://tanakanews.com/151221syria.htm
シリアをロシアに任せる米国
ニクソン(共和党)からレーガン(共和党)への、アイデアリストが稚拙に
失敗した末にリアリストが席巻する隠れ多極主義的な展開が、ブッシュ(共和
党)の911から今後(2020年ごろ?)にかけて繰り返されるとしたら、
共和党のトランプがリアリストの外交戦略を掲げて次期大統領を狙うことは、
非常に大きな歴史的な意味がある。ロックフェラーや傘下のCFR(外交問題
評議会)が歴史の繰り返しを演出しようとしているなら、次の大統領は、クリ
ントンでなくトランプだ(かつてロックフェラーはキッシンジャーを政権に送
り込むのに4年待った。今回もクリントンが勝って4年待つかもしれないが)。
http://www.slate.com/articles/news_and_politics/politics/2016/02/cnn_debate_people_are_still_underestimating_donald_trump.html
People Are Still Underestimating Donald
Trump
トランプのリアリズム(現実主義)は「強い指導者が率いる国は、たとえ民
主的でなくとも、安定的な成長ができるので(必要悪として)評価すべきだ」
というものだ。トランプがロシアのプーチンを支持賞賛していることが、彼の
リアリズムを象徴している。トランプは「米国がプーチンを敵視し続けるほど、
中露が結束して米国に対抗してくる。これを防ぐためにロシアとの和解が不可
欠だ」と考えている。プーチンを支持するトランプは「ウクライナ問題は欧州
の問題で、米国が介入すべきことでない」という姿勢だ。この姿勢は、米国の
軍産がNATOや欧州を引き連れてウクライナの反露政権を支援し、ロシアと
の対立を続けている現状と真っ向から対立する。またトランプは「アサドより
悪い独裁者が世界にはたくさんいる(アサドはそんなに悪くない)」と言って、
シリアの停戦や安定化をロシアに任せる姿勢をとっている(すでにオバマが
この姿勢を隠然ととっている)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Political_positions_of_Donald_Trump
Political positions of Donald Trump From Wikipedia
http://tanakanews.com/150317russia.php
茶番な好戦策で欧露を結束させる米国
http://tanakanews.com/140404NATO.php
NATO延命策としてのウクライナ危機
共和党の選挙参謀を長く続けていたカール・ローブは、トランプが選出され
ると大変なことになると党主流派に対して警告している。共和党主流派は軍産
複合体と金融界の連合体だ。トランプが今の破裂寸前まで膨張した金融バブル
に対してどんな政策をとるか見えていないが、彼が軍産の好戦的な軍事策をつ
ぶそうとしていることは「リアリスト」の自称が雄弁に物語っている。(トラ
ンプは「本当の米国の失業率は当局発表の5%でなく28−42%だ」と、失
業率をごまかして景気回復を演出する米連銀のインチキを暴露している。それ
を拡大解釈すると、彼が大統領になったら金融延命策をつぶしにかかると予測
できるが、そんなことを本当にやるのかまだ不明だ)
http://www.nytimes.com/2016/02/28/us/politics/donald-trump-republican-party.html
Inside the Republican Party's Desperate
Mission to Stop Donald Trump
http://www.zerohedge.com/news/2016-02-10/why-trump-thinks-unemployment-42
Why Trump Thinks Unemployment Is 42%
2月25日ごろ以降、共和党の予備選挙でトランプの勝利が決定的になって
きたタイミングで「何が何でもトランプを引きずりおろす」という感じの動き
が党内やマスコミで始まり、共和党主流派に位置するCFRもトランプを非難
する宣伝を開始した。だが、これは明らかに遅すぎる動きで、茶番劇の感じが
する。マスコミの中にも「今ごろトランプ非難を強めても遅すぎる」といった
分析が目立つ。
http://www.zerohedge.com/news/2016-02-28/trump-must-be-stopped-plead-economist-and-cfr-financial-establishment-panics
"Trump Must Be Stopped" Plead
'The Economist' And CFR As Financial Establishment Panics
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/0c983610-dc83-11e5-8541-00fb33bdf038.html
Trump has the White House in his sights
共和党の予備選でトランプの後塵を拝しているルビオとクルズの陣営が合体
し、どちらかが大統領でもう一人が副大統領候補になれば、トランプに勝てる
かもしれない。だがルビオとクルズは互いに批判を続けており、合体を提案す
る党内の意見は無視されている。このあたりも、CFRの勢力が2人に対立を
けしかけて合体を阻止し、トランプを優勢にしている感じがある。
http://www.washingtonpost.com/politics/divisions-within-gop-over-trumps-candidacy-are-growing/2016/02/28/97b16010-de3a-11e5-8d98-4b3d9215ade1_story.html
The Republican Party's implosion over
Donald Trump's candidacy has arrived
http://www.motherjones.com/kevin-drum/2016/02/why-hell-wont-anyone-attack-trump
Why the Hell Won't Anyone Attack Trump?
共和党内のネオコンも、トランプを敵視するふりをして優勢にしているので
ないかと感じられる。共和党のネオコンの指導者的な論客であるロバート・ケ
ーガンは2月下旬、トランプ優勢の流れが決まった直後のタイミングを見計ら
って、トランプを阻止するためにクリントンを支持すると表明した。
http://consortiumnews.com/2016/02/25/neocon-kagan-endorses-hillary-clinton/
Neocon Kagan Endorses Hillary Clinton
ネオコンは共和党支持だが、歴史を見ると、1970年代まで民主党支持で、
独裁政権を転覆して民主化すべきと主張する好戦リベラルだったが、レーガン
政権の発足とともに共和党に移った「転向者」だ。ネオコンは共和党ブッシュ
政権で過激策をやって米国の覇権を自滅に追い込んだ後、近年また民主党に
再接近していた。ケーガンの妻のビクトリア・ヌーランドは、民主党の現オバ
マ政権の国務省に入り、ウクライナの政権を反露側に転覆させる画策をやった
張本人だ。ヌーランドは国務長官だったクリントンに引き上げられ、国務省内
で頭角を現した。
http://tanakanews.com/d1219neocon.htm
ネオコンの表と裏
http://tanakanews.com/140305ukraine.php
危うい米国のウクライナ地政学火遊び
ケーガンのクリントン支持表明は、妻の動きからして不自然でないが、クリ
ントンの選挙活動にプラスなのかどうか、大きな疑問だ。クリントンがサンダ
ースを破ったら、民主党内の草の根勢力をどう取り込むかがその後の課題にな
るが、ネオコンの頭目ケーガンのクリントン支持は、クリントンがネオコンの
一派である事実を民主党の草の根の人々にますます強く印象づける点でマイナ
スだ。
http://libertyblitzkrieg.com/2016/02/25/why-hillary-clinton-cannot-beat-donald-trump/
Why Hillary Clinton Cannot Beat Donald
Trump
http://www.washingtonpost.com/opinions/trump-is-the-gops-frankenstein-monster-now-hes-strong-enough-to-destroy-the-party/2016/02/25/3e443f28-dbc1-11e5-925f-1d10062cc82d_story.html
Trump is the GOP's Frankenstein monster.
Now he's strong enough to destroy the party
トランプは、軍産やネオコンの好戦策が失敗してもはや米国民に支持されて
いないことを見抜き、自分が金持ちで軍産から政治資金をもらう必要がないこ
とから軍産やネオコンの策を容赦なく批判することで選挙戦を成功させてきた。
軍産やネオコンと結託しているのがイスラエルで、イスラエル右派を支援する
財界人シェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson、カジノリゾート経営)が、
トランプを阻止するための政治資金を主に出してきた。アデルソンは今回
クリントンを支持している。
http://www.cbsnews.com/news/republicans-failed-attempts-blocking-donald-trump-election-2016/
Inside Republicans' failed attempts at
blocking Donald Trump's rise
http://mondoweiss.net/2016/02/and-the-winner-of-the-sheldon-adelson-primary-is-hillary-clinton/
And the winner of the Sheldon Adelson
primary is... Hillary Clinton
だが、トランプがユダヤ人やイスラエルと敵対しているかといえば、むしろ
逆だ。トランプの娘のイヴァンカは、正統派ユダヤ教徒の財界人(Jared Kushner、
新聞経営)と結婚し、ユダヤ教に改宗している。トランプはイスラエルの右派
のネタニヤフ首相を長く支援してきたことでも知られ、古くからの親イスラエ
ル派だ。トランプが軍産の言うことを聞かなくても、ネオコンやシオニストは
簡単にトランプを非難できない。
http://www.theamericanconservative.com/articles/is-trump-a-realist/
Is Trump a Realist?
これまで米国の世界戦略は、軍産やイスラエルや英国に牛耳られ、世界の面
倒を米国が見ることが良いのだという「国際主義」の立場がとられ、世界のこ
とより米国内を良くするのが先だという国内優先主義は「孤立主義」としてマ
スコミなどで批判されてきた(対米従属の日本でも、米国の孤立主義化は良く
ないことと喧伝されている)。しかし、911から15年間ずっと失敗ばかり
の国際主義という名の好戦主義につき合わされてきた米国民は、国内の貧富格
差の拡大、実体経済の悪化もあって、国際主義を嫌い、孤立主義の傾向を強め
ている。トランプはその流れに乗って、リアリストの姿勢を採用して孤立主義
的な政策をとろうとしている。これが成功すると、軍産やイスラエルは影響力
を失う。
トランプは表向き、好戦的な感じのことを言い続けている。イスラム教徒の
米国入国の一時禁止の提案は、軍産のイスラム敵視のテロ戦争の構図に乗って
いる。実際には、イスラム教徒の入国を禁止したとたん、米国内でいくつもの
提訴が裁判所に起こされ、米政府は裁判に負けてイスラム教徒の入国を認めざ
るを得なくなる。
http://www.theguardian.com/us-news/2016/feb/25/us-president-donald-trump-first-100-days-election-2016
What President Donald Trump's first 100 days
in office would look like
トランプは、オバマがイランの核兵器開発の濡れ衣を解いて締結した協約を
廃棄するとも言っている。これはイスラエルや軍産が強く希望しており、トラ
ンプはそれに応えてこの策を出した。しかしイランは昨夏に経済制裁を解かれ
た後、欧州やアジア諸国などと急速に経済関係を強化しており、米国だけが協
約を破棄してもイランは他の諸国と貿易して十分豊かになれる道を歩んでいる。
トランプがイランとの関係を断つことは、イランを弱体化せず米国を孤立させ
るだけの「隠れ多極主義」的な戦略になる。
http://english.alarabiya.net/en/views/news/middle-east/2016/02/29/What-a-Trump-presidency-will-mean-for-Iran.html
What a Trump presidency will mean for Iran
http://www.salon.com/2016/02/05/donald_trumps_iran_idiocy_the_interview_that_should_have_ended_his_candidacy_once_and_for_all/
Donald Trump's Iran idiocy: The interview
that should have ended his candidacy once and for all
延々と書いてしまったが、日本にとって重要な、日本や中国に対するトラン
プの姿勢についてまだ書いていない。トランプは「日本や韓国、ドイツやサウ
ジアラビアは、米国の安全保障にぶら下がるばかりで、米国の安全にあまり貢
献していない」と言い、在日・在韓米軍の撤退も含め、日本や韓国との安保関
係を再交渉する姿勢を見せている。軍産系の勢力は「日本は(思いやり予算な
どを米国が要求するだけ出し続け)米国に貢献している。トランプは日本を批
判するな」といった論調を流布している。
http://nationalinterest.org/feature/trump-shouldnt-bash-japan-15328
Trump Shouldn't Bash Japan
http://www.upi.com/Top_News/World-News/2015/12/31/Donald-Trump-slams-US-allies-South-Korea-Japan/9871451540782/
Donald Trump slams U.S. allies South Korea,
Japan
「米軍が日韓から撤退すると、安保的な支柱を失った日韓は独自に核武装しか
ねない。トランプは東アジアを核兵器開発競争に追い込もうとしている」とい
った批判も、軍産(日本外務省傘下?)っぽい駐日英文メディアが流している。
http://thediplomat.com/2015/09/donald-trumps-asia-policy-would-be-a-disaster/
Donald Trump's Asia Policy Would be a
Disaster
http://tanakanews.com/130515japan.htm
日本の核武装と世界の多極化
歴史を見ると米国は、かつてニクソン政権の時代にも、在日米軍の撤退を模
索し、日本政府はそれに呼応して米軍抜きの日本の自主防衛策を「中曽根ドク
トリン」として立案した。これは「米国が出ていくなら仕方がない」という感
じで立案されたが、その後米国でウォーターゲート事件が起きてニクソンが追
放され、日本でニクソンに呼応していた田中角栄首相もロッキード事件で失脚
させられ、日本は「まだ自主防衛できる力がついていません」と米国に懇願し
て沖縄に米軍基地を集中させて駐留を続けてもらう策に出た。これ以来、外務
省が握っている日本の安保戦略は、米軍に永久に駐留してもらう策になり、対
米従属が日本の絶対の国是になっている。
http://tanakanews.com/120222japan.htm
日本の権力構造と在日米軍
http://tanakanews.com/130816japan.php
終戦記念日に考える
http://tanakanews.com/160123japan.htm
見えてきた日本の新たな姿
トランプが大統領になると、ニクソンから40年あまりの時を経て、再び米
国が在日米軍を撤退させようとする動きを強めることになる。在日米軍の撤退
話は、ここ数年、海兵隊のグアム移転構想などで、すでに何度も浮上しては消
えている。日本は、辺野古の計画や思いやり予算など、米国の無体な要求を何
でも飲むことで、在日米軍を引き留めている。このような日本の強度な対米従
属策を、トランプがどんな方法で乗り越えようとするのか、まだ見えていない。
トランプ政権になると、日本の対米従属派にとって厳しい時代が来ることは
間違いない。
http://www.barrons.com/articles/asias-president-trump-nightmare-1454374248
Asia's President Trump Nightmare
http://www.washingtonpost.com/opinions/trumps-nationalism-is-corrosive-and-dangerous/2016/02/25/a844d504-dbfd-11e5-891a-4ed04f4213e8_story.html
Trump's nationalism is corrosive and
dangerous
http://tanakanews.com/110514okinawa.htm
再浮上した沖縄米軍グアム移転
トランプは「中国が米国の雇用を奪っている」「中国からの輸入品に45%
の関税をかける」「中国で生産する米国企業に、生産拠点を米国に戻すことを
要求する」などと、中国に対する強硬姿勢を見せている。すべて経済面ばかり
で、政治面では中国敵視のことをあまり言っていない。中国が米国民の雇用を
奪っているという言い方は、この四半世紀の歴代の大統領候補の多くが発して
おり、目新しくない。選挙戦では人気取りのために中国に対する強硬姿勢を示
しても、当選するとボーイングやGMの中国での販売増の方が重要になり、中
国におもねる姿勢をとるのが、歴代大統領によくある姿勢だ。対立候補のルビ
オは「君のネクタイも中国製だろ(中国からの輸入を拒否すると着るものがな
くなるよ)」とトランプを揶揄した。
http://www.realclearpolitics.com/video/2016/02/25/rubio_to_trump_are_you_going_start_a_trade_war_against_your_own_chinese-made_ties.html
Rubio to Trump: Are You Going Start A Trade
War Against Your Own Chinese-Made Ties?
トランプが大統領になって在韓米軍の撤退を考えるとしたら、まず北朝鮮の
核問題を解決せねばならない。北核問題に対する米国の態度はブッシュ政権以
来、一貫して「中国に任せる(押しつける)」ことだ。トランプは、在韓米軍
を撤退するために、政治的に中国の言いなりになるかもしれない。北が核を持
ったままの北核問題の「解決」がありうる。
http://tanakanews.com/160111korea.htm
北朝鮮に核保有を許す米中
このほか、トランプが地球温暖化問題を「インチキだ」「米国の経済成長を
阻害するための中国の謀略だ」と批判していることも興味深い。たしかに
COP15以降、温暖化問題は中国の主導になり、中国など新興諸国が米国な
ど先進国から支援金をむしり取るための道具に転換している。トランプは荒っ
ぽい言い方ながら、いろんなことを的確に見ている。
http://stevengoddard.wordpress.com/2016/02/27/trump-on-global-warming-hoax-mythical-a-con-job-nonexistent-and-bullshit/
Trump on Global Warming : "hoax,"
"mythical," a "con job," "nonexistent," and
"bullshit."
http://tanakanews.com/091227warming.htm
地球温暖化めぐる歪曲と暗闘
温暖化問題は、もともと米金融界の発案で捏造された構図である。共和党系
の分析者(David Stockman)は「共和党はカネに目がくらみ、かつての信奉し
ていた自由市場主義を捨てて、金融界が捏造した温暖化問題や、リーマン危機
後の金融界救済策など、自由市場主義と正反対なものをどんどん受け入れた挙
句、行き詰っている。共和党は、完全に行き詰って破綻しない限り再生しない。
トランプは、この行き詰りを突いて人気を集めている。」という趣旨の指摘を
している。
http://davidstockmanscontracorner.com/the-donald-the-good-and-bad-of-it/
The Donald - The Good And Bad Of It
長々と書いたが、まだ書き足りない。だがトランプが大統領になると決まっ
たわけでもないので、今回はこのぐらいにしておく。
この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/160301trump.htm
●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
◆シリアの停戦
http://tanakanews.com/160223syria.php
【2016年2月23日】ISISとヌスラ戦線というテロ組織2派がアサド
政権軍に勝っていた間は、反政府勢力のほとんどが2派の傘下にいた。だが昨
秋から露軍の支援を受けてアサド軍が盛り返し、今では2派の方が敗北寸前ま
で追い込まれ、傘下にいた多くの勢力が離反し、アサド政権の側に寝返ってい
る。今回の停戦は、この寝返りに拍車をかけるための、ロシアとアサドの策略だ。
◆ジャンク債から再燃する金融危機
http://tanakanews.com/160221junk.php
【2016年2月21日】米国の社債市場を悪化させている原油安と世界不況
は、今後も続く。原油相場は上がらない。米エネルギー産業の債券危機はひど
くなる。ジャンク債の金利は上昇傾向だ。当局による株価操作も繰り返される
うちに効力が減じ、株式と社債の両方で崩壊傾向が強まる。リーマン危機の時
は、QEという延命策があった。だが今後の金融危機は、その延命策が尽きた
ところで発生する。
◆万策尽き始めた中央銀行
http://tanakanews.com/160212bank.php
【2016年2月12日】今年に入って世界的に金融の混乱が加速し、それに
対して日米欧の中央銀行が十分な対策(追加的な緩和策)をとれないことが明
らかになり、混乱がさらに加速している。ジャンク債の金利上昇、株価の下落、
円高ドル安、金地金の上昇など、金融延命策の終わりを思わせる逆流の事態が
起きている。私の予測の中の「延命策の限界露呈」が起こり、その結果「金融
システムのバブル崩壊」が始まったと考えられる。
以上は「田中宇氏」ブログより
米国の次期大統領に誰が就任するかで世界は大きく変化します。ヒラリーは最悪です。戦争好きの悪女なのです。「3.11テロ」も彼女の指示で起きています。トランプ候補の方が無難です。 以上
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良い発言と感じますが、今までのことがあり、
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フランスは当初はアメリカと一緒に侵略の為にテロリストを支援していたが、ロシアの攻撃により分が悪くなり方向転換でもしたのか?
新しいコメントを読む (0)catss4
サルコジさんが言うと、なんらかの保身かと感じてしまい ・・・
hidea7889
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