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2016年3月31日 (木)

シリアで侵略軍の敗北が確定的になる中、サウジとトルコに続いてNATOも戦争の準備(その3)

シリアで侵略軍の敗北が確定的になる中、サウジとトルコに続いてNATOも戦争の準備(その3)              

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     トルコ軍機がロシア軍機を撃墜した後、シリア北部の制空権をロシア軍が握り、侵略勢力は追い詰められている。そうした中、サウジアラビアとトルコはシリアを軍事侵攻する姿勢を見せ、NATOは艦隊を地中海の東部に増派した。

 サウジアラビアとトルコはダーイッシュと戦うためにシリアへ軍事侵攻するとしているが、説得力はない。ダーイッシュはアル・カイダ系武装集団から派生したわけだが、本ブログでは何度も書いているように、そうした武装集団とNATOとの同盟関係はリビアで露呈している。

 ダーイッシュもアル・カイダ系武装勢力と同じようにワッハーブ派/サラフ主義者が中心で、体制転覆のために雇われた傭兵集団。つまり、タグが変えられただけで実態は基本的に同じだ。西側の政府やメディアはこの侵略軍を「人民軍」であるかのように宣伝していた。

 シリアの場合、そうしたプロパガンダに使われてきたのがロンドンを拠点としている「SOHR(シリア人権監視所)」。当初はシリア系イギリス人のダニー・デイエムなる人物も盛んに西側メディアは取り上げていたが、2012年3月1日にダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子が流出、彼の情報がインチキだということが判明してしまう。

 それでも西側メディアは反省しない。そして2013年3月、アレッポでアル・カイダ系武装集団が化学兵器を使ったとシリア政府は非難、調査を要求する。これもシリア政府軍が行ったという話が流されたが、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。

 2013年8月21日には再び化学兵器が問題になる。ダマスカス郊外が化学兵器で攻撃され、西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするのだが、現地を独自に調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている。

 例えば、攻撃が深夜、つまり午前1時15分から3時頃(現地時間)にあったとされているにもかかわらず犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずだが、明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのか・・・・・また、国連のシリア化学兵器問題真相調査団で団長を務めたアケ・セルストロームは治療状況の調査から被害者数に疑問を持ったと語っている。(PDF

 攻撃の直後、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使はアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出、その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。

 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。

 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

 昨年12月にはトルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の化家具兵器使用に関する責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。

 化学兵器の攻撃があって間もなく、NATOがシリアを攻撃すると噂され始める。そして9月3日、地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されるのだが、途中で海へ落下してしまった。イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、ジャミングなどで落とされたのではないかと推測する人もいる。

 1991年にソ連が消滅した直後、ネオコンなどはアメリカが「唯一の超大国」になり、アメリカに楯突ける国は存在しなくなったと信じた。それを前提に、潜在的なライバル、つまり旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどがライバルに成長することを防ぎ、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようと考える。それが1992年に国防総省で作成されたDPGの草稿、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」である。

 ウラジミル・プーチンがロシアを再独立させることに成功してからもネオコンはロシアの能力を過小評価、経済力を強めていた中国も支配層の子どもをアメリカへ留学させて「洗脳」していると安心していたようだ。2006年にフォーリン・アフェアーズ誌に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」にはロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張されていた。その過信を2013年9月のミサイル墜落は揺るがしただろう。

 2014年4月10日に黒海でもアメリカ軍を震撼させる出来事があったと言われている。ロシアを威嚇するため、アメリカ軍はイージス艦のドナルド・クックをロシアの領海近くを航行させたのだが、その際、ロシア軍のSu-24はジャミングで米艦のイージス・システムを機能不全にしたと言われている。その直後にドナルド・クックはルーマニアへ緊急寄港、それ以降はロシアの領海にアメリカ軍は近づかなくなった。

 昨年、ロシア軍がシリアで空爆を始めた直後、ロシア軍はカスピ海の艦船から巡航ミサイルを発射、正確にシリアのターゲットへ命中させている。アメリカ軍はこうしたミサイルをロシアは持っていないと信じていたようで、ショックを受けたと言われている。サウジアラビアやトルコがシリアへ軍事侵攻したなら、相当数の巡航ミサイルが発射されるだろうが、それ以上に注目されているのが弾道ミサイルのイスカンダル。

 このミサイルの射程距離は280から400キロメートルで、毎秒2100メートルから2600メートル、つまりマッハ6から7で飛行する。西側の防空システムは対応できないと考えられ、ロシアがその気になればトルコにある基地はこのミサイルで全て破壊されると推測する人もいる。NATOが軍事介入すれば、ヨーロッパも攻撃される。状況によってはアメリカや日本も戦場になる。ネオコン、サウジアラビア、トルコの動きは世界をそうした方向へ向かわせるものだ。
以上は「櫻井ジャーナル」より   
 
        
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