独立行政法人である国立研究開発法人の一つ、「産業技術総合研究所」(産総研)の地質調査総合センターでは、日本全国にある活断層の地質調査を行っているが、その結果を「活断層データベース」としてWeb上に公開している。昨年は熊本地震(M7.3)、鳥取県中部地震(M6.2)と2つの大きな地震が日本を襲ったが、どちらも大陸プレート内地震(活断層地震)だった。恐らく多くの読者が、次にどこで大きな活断層地震が起きるのか知りたいと考えているだろう。そこで、産総研のデータベースをもとに、今後30年のうちに活断層地震が発生する確率の高い順にランキング形式で紹介することにしたい。
【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2017/02/post_12356.html】
■活断層地震の発生確率ランキング(今後30年間)
第10位:根来断層(和歌山県) …… 発生確率7% 日本最大級の断層である中央構造線の一部。九州から茨城県まで延びる日本最大級の断層であり、2016年4月の熊本地震はこの延長線上で発生した。根来断層は、和歌山県北部の岩出市根来に位置する。歴史上の記録はないが、西暦635~750年頃に大地震が起きたと考えられている。この断層を含む中央構造線が大きく動いた場合、M8相当の巨大地震も起き得るとされている。
9位:紀伊水道(徳島県)…… 発生確率8% 中央構造線のうち、和歌山市と徳島県鳴門市を結ぶ海上の部分。1789年に徳島県南部でM7.0の地震が起きたが、震源は紀伊水道だった可能性がある。この時は、徳島県南部の沿岸地方で家屋などへの被害や山崩れが生じた。次に地震が起きる場合も同程度の規模になると推定される。
8位:茅野断層(長野県)…… 発生確率8% 新潟県から静岡県まで延びる糸魚川静岡断層線(糸静線)の一部。この断層線の主軸と平行するように、長野県諏訪郡富士見町あたりに存在している。糸静線のうち、この断層を含む長野県の諏訪湖北方から富士見町下蔦木付近に至る約33kmの一帯を中南部と呼ぶが、同区間全体が一度に動く地震が起きた場合、M7.4程度の大地震となると想定される。糸静線が大きく動く結果として、日本列島が分断する大災害になるという予言もある。
© TOCANA 提供
7位:武山断層(神奈川県)…… 発生確率9% 神奈川県三浦郡葉山町から横須賀市を経て浦賀水道に至る、三浦半島断層群主部のうち南部にあたる11kmの断層。1923年の大正関東地震の際に、武山断層帯の陸域部の東端付近で、地震断層が出現した。ここが動くとM6.6以上の地震が想定されるが、約25kmにわたる三浦半島断層群主部が一度に動く可能性もあるとされ、その際には、より大規模な地震となる。
6位:饗庭野(あいばの)断層(滋賀県)…… 発生確率10% 滋賀県の琵琶湖西岸活断層系の一部。琵琶湖西岸の高島市を南北に貫いている。活断層が動いた場合の地震の規模はM7.8程度と推定されるが、人口5万人の高島市の中心部を縦断しているため、甚大な被害につながる恐れがある。被害想定では死者が最大で約2万3千人となっている。数年前から八ヶ岳南麓天文台代表の串田嘉男氏がFM電波によって地震を予知して話題になっているが、まだ現実のものとなってはいない。
5位:石動山(せきどうさん)断層(石川県)…… 発生確率10% 石川県の能登半島南部を横断する全長44kmの邑知潟(おうちがた)南縁断層帯石動山断層の一部、長さ8kmの活断層。この活断層だけが動いた場合はM6.3の地震が想定されている。同断層から北約10kmのところに志賀原発があり、2006年に志賀原発2号機運転差し止め訴訟が起こされた際には、「邑知潟断層帯の全体が動いた場合の想定がされていない」として問題となった。その場合には、M7.6程度の地震が発生すると考えられているのだ。
4位:北武(きたたけ)断層帯(神奈川県)……発生確率12% 三浦半島を平行して横断する三浦半島断層群の一部で、長さは約14km。M6.7程度の地震が想定されている。6~7世紀に大地震があったことがわかっている。3位の衣笠断層帯と平行して存在するため、次項で併せて解説する。
3位:衣笠断層帯(神奈川県)…… 発生確率13% 三浦半島断層群の一部。4位の北武断層帯と平行して半島を横断し、衣笠・北武断層帯と総称される。政府の地震調査委員会は2011年7月、東日本大震災の影響によって「三浦半島断層群での地震発生確率が高まった可能性がある」と発表した。それこそ13%という確率だ。三浦半島には多くの活断層があるため、それらがずれることによって直下型の大地震が起きる恐れがあると指摘する地震学者もいる。三浦半島断層群が一度に動くと、より大きなM7クラス以上の地震となると考えられ、横須賀市、三浦市、鎌倉市、藤沢市、横浜市といった人口集中地帯でも震度6強の揺れに襲われる恐れがある。この規模になると地面に亀裂が入る可能性もあり、甚大な被害が予想される。
2位:五条谷(ごじょうや)断層(和歌山県)…… 発生確率16% 和歌山県伊那郡に位置し、県北端あたりの和泉山脈南縁で、中央構造線の北を平行に東西方向に延びている。M7.7程度の地震が想定されている。1946年の昭和南海地震から10年以上が過ぎた頃から現在に至るまで、和歌山県北部で小規模の地震が多発しているが、これは昭和南海地震の前には見られなかったことだ。五条谷・根来断層の活動と何らかの関係があるか、または南海トラフ地震の前触れでなければ良いのだが。
1位:牛伏寺(ごふくじ)断層(長野県)…… 発生確率25% 糸魚川静岡構造線の一部。長野県松本市の中心街付近から南へ10kmほど延びている。活動間隔がおよそ1000年とされるが、この1200年間に大地震が発生していないため、いつM7~8クラスの地震が起きてもおかしくないといわれる。2016年9月放送の「NHKスペシャル」で、地震学者の遠田晋次氏(東北大学理学部教授)が、過去20年間の地震データから導き出した「地震の火種」がある危険エリアとして2カ所の活断層を挙げているが、その1つがこの牛伏寺断層だという。松本市の人口は約24万人で、市街地に近いところを通る活断層が動いてM8前後の巨大地震が起きれば、甚大な被害となることが予想される。
■地震の規模と発生確率について
活断層地震は直下型地震とも呼ばれるが、海溝型地震に比べて規模が小さくても、人口が多い地区の直下にある活断層が動けば、甚大な被害をもたらすこともある。通常は数千~数万年という気の遠くなるような期間を周期として繰り返されると考えられるが、そのため地震発生の予測が極めて難しいとされる。
1995年の阪神淡路大震災より以前、該当地域における30年の地震発生確率が0.02~8%だったことを考えると、たとえ発生確率が1%程度であっても決して安心はできない。昨年4月の熊本地震の前、地震が起きた布田川断層帯は、30年以内の発生確率がほぼ0~0.9%とされていたのだ。東大教授の平田直氏は、「たとえ0.9%でも発生確率は高い」(「リスク対策.com」、vol55)と語っている。
このように、地震発生リスクが低いと思われていたことが、住民の地震に対する防災意識の低さにつながり、大きな被害を生む一因となった面も否めない。やはり、日頃からの大地震に対する備えが極めて重要であるということがいえるだろう。(文=百瀬直也)
※イメージ画像:「Thinkstock」より
コメント