社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1065697405.html
<転載開始>
【自信過剰になった最高経営者の蹉跌が繰り返された】

【自信が慢心になり,伝統ある大会社を破綻させたり,公益的事業経営体の海外進出を失敗させたりしている著名な経営者,その「負の手腕」】

【海外市場に進出に失敗している日本郵政の醜態】



 2017年4月25日(火曜日),郵便が自宅に配達されたので,郵便受けから配達された郵便物を開けとりだしてみると,ほかの郵便物とともにつぎの画像のような「ハガキ大の文書」(表・裏2面)も投函してあった。これは郵便局(これは旧名で,正式名は日本郵政だが)からの通知である。(画面 クリックで 拡大・可)
   郵便局値上げ通知2017年4月25日表郵便局値上げ通知2017年4月25日裏
 本ブログ筆者がしるかぎりでは,こうした郵便局(日本郵便)の値上げが予定されているという事実は,この通知によって初めてしった 註記)。郵便は通信手段としてあまり使わなくなっていたせいか,そのへんの関心もほとんどなく,郵便局にはときおり出向いて用事をするものの,はっきりと気づくことがないままに過ごしていた。
 註記)「プレスリリース
郵便料金等の改定」,
http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2016/00_honsha/1222_01.html
 それにしてもずいぶんな,と感じるような「値上げの仕方」である。人によって感じ方に違いもあるかもしれないが,ともかく値上げ率が高い。ヤマト運輸が最近,どうしようもない経営状態の苦境に追いこまれ,つまり,荷扱いは増大しているのに売上げが伸びないし,発生していた残業手当の未払い問題が社会的にも注目を受けているなどのために,料金を値上げすることになった。

 だが,日本郵政の場合は同じ業種(運輸業)を事業部門にかかえてはいるものの,ヤマト運輸とは事情が異なるはずである。日本郵便は元来,国営事業として,儲かるような商売を担当していなかった。この点は郵便の歴史をしればすぐに了解できるのだが,民営化されてからは徐々にその経営体質を変質させてきた。
 補注)日本郵政の沿革は「郵政の創業から今日までの軌跡・・・」(← リンク)を参照されたい。 

 ところが,この郵便関係の値上げの通知(文書)が,あらためて自宅に配達された同じ4月25日には,① 以下に論述していくような日本郵政グループの経営問題に関する報道が大きくなされていた。これが本日の本題である。

 ①「日本郵政 赤字400億円超 前期最終,民営化後で初」(『日本経済新聞』2017年4月25日夕刊)

 日本郵政は2017年3月期の連結最終損益が400億円超の赤字になった模様だ。オーストラリアの物流子会社で発生した損失を4000億円程度計上する。連結最終赤字になったのは,2007年10月の民営化以来初めて。赤字の責任を明確にするため,持株会社の日本郵政と事業会社の日本郵便の首脳は報酬を一部返上する。〔4月〕25日夕に発表する。
『日本経済新聞』2017年4月25日夕刊郵政赤字図表
 2015年に6200億円で買収したオーストラリアの物流会社,トール・ホールディングスで損失が発生する。国際物流の強化を狙ったものの郵政との協業は進まず,豪経済の減速に伴いトール社の業績が悪くなった。このためトールの買収額と純資産の差額にあたりブランド価値を示す3860億円の「のれん代」を見直し,損失を計上する。

 日本郵政が公表していた2017年3月期連結決算の見通しは,最終損益が3200億円の黒字だった。ゆうちょ銀行,かんぽ生命保険の金融子会社2社の業績は堅調だが,巨額の損失を補いきれず,最終赤字に転落する。今後,長期的に海外案件で損失を計上するより,一括で償却したほうが投資家にとっての不透明感は下がると判断した。

 政府は株式上場した日本郵政株を今夏にも追加売却する方針。郵政は前期の赤字を受けて事業戦略を見直さざるをえず,株式の売り出し時期などにも影響が出そうだ。(記事引用終わり)

 ところで,「日本郵政グループの決算ハイライト」は2017年4月25日時点で,つぎのような図表を情報公開している。これにはまだ赤字は反映(記入・表現)されておらず,2016年度の各四半期ごとに(3期までは)黒字が累積されている報告がなされている。(画面 クリックで 拡大・可)
日本郵政会計報告2017年3月期まで
出所)https://www.japanpost.jp/ir/library/index04.html

 ②「日本郵政,誤算の買収 豪子会社巡り巨額の損失計上へ」(『朝日新聞』2017年4月22日朝刊)

 1)記事本文
 日本郵政が巨額の損失を計上し,民営化以来初めて純損益が赤字になる可能性が出てきた。買収した豪州の物流子会社の業績が振るわず,会社の資産価値を切り下げる「減損処理」をする必要があるからだ。買収に慎重論もあったが,西室泰三前社長が主導した。日本郵政が減損処理を検討しているのは,2015年に6200億円で買収した豪州の物流大手「トール」。資源価格の低迷を受け,2016年4~12月期の営業利益が前年同期に比べ7割も減るなど,業績は買収前の予想を下回る。
『朝日新聞』2017年4月22日朝刊日本郵政業績
 買収額はトールの純資産額より約4700億円も高かった。トールのブランド力やノウハウが収益につながると期待したためで,この差が「のれん代」と呼ばれる。のれん代は買収した企業の資産になるが,期待ほど収益が上がらなければ損失として計上しなければならない。東芝が巨額損失を計上したのと同じ構図だ。
 補注)後段の記事にも言及されるが,東芝が金儲けできるみこみでもって,原発事業として買収したウェスチングハウスが「多額ののれん代」を大きく “こみ” にしていた事実(合併戦略の失敗要因)を彷彿させる報道である。しかも,同じ元東芝の最高経営者が,この日本郵政の問題でも直接かかわっていたのだから,ある意味では耳を疑うというか,覆いたくなるような,つまり,既視感そのものであるような〈経営の失敗〉を再度起こしている。

 買収発表は日本郵政が株式を上場する約9カ月前。「上場前に郵便事業の成長戦略を描く必要があった。国際物流で成長するというメッセージ」(当時の幹部)だったが,巨額の買収費用に「高値づかみだ」との声も出ていた。

 トールののれん代は2016年12月末時点で3860億円あり,日本郵政は来週前半の取締役会でこの大半について減損処理を決める見通しだ。日本郵政は2017年3月期決算の純損益を3200億円の黒字と予想するが,減損額によっては2007年10月の民営化以来,初の赤字に転落する可能性がある。業績の大幅悪化は,政府が東日本大震災の復興財源に当てこむ日本郵政株の売却益を減らしかねない。

 政府は2022年度までに郵政株の3分の2を売って計4兆円を確保する計画。2015年に約2割の株を1.4兆円で売却済みで,早ければ7月にも追加で売却するとみられる。日本郵政株の終値は,減損の検討が明るみに出た〔4月〕20日に前日比で2.6%下落。翌21日に1.6%戻したものの,今後も不安定な値動きが予想される。

 財務省理財局は「売却時期や規模については,市場環境などをふまえて適切に判断する」と話す。株価の下落が続く場合,売却時期の先送りもありうる。

  ★「内部検討ほとんどなし」★

 日本郵政グループ幹部によると,西室前社長は2015年春の取締役会で初めてトールの買収を説明し,「もう決めた」と語った。取締役から批判が上がったものの,西室氏の意思は変わらなかった。巨額買収を心配する声は当初からあった。別のグループ幹部は「買収について内部の検討はほとんどなかった。上から降ってきた話」と明かした。元幹部は「とにかく上場を乗り切ろうという姿勢で,会社の将来を考えての判断とは思えない」と語っていた。

 2016年初めの日本郵政の経営会議。トールの現状について「かろうじて黒字」などと報告されたのに対し,社外取締役から「日本郵便にとって意味があるから買ったのでは」「いくらもうかり,いくら損して,これからいくら負担しなければならないのか,数字で示してくれ」などの懸念が出た。グループ内でも「すぐに減損処理せざるをえない」との見方が強まっていた。

 このころ,西室氏がかつて社長を務めた東芝の子会社,ウェスチングハウスも原発の受注悪化などから減損が避けられないとの見方が出ていた。だが,東芝はまだ「将来の収益がみこめる」として損失の計上は不要との姿勢を続けていた。2016年2月に取材に応じた日本郵政幹部は,同年3月期にトールの減損を実施するかを問われ,こう答えた。「しない。ウェスチングハウスと同じだ」。(引用終わり)

 --以上の記事は『朝日新聞』2017年4月25日夕刊の最終版(確定版:電子版で閲覧できる版)に出ていたが,筆者自宅に配達された3版にはまだ掲載されていなかった。さて,同紙の翌日〔4月26日〕朝刊はこの記事をあらためて報道していた。その全文を引用するわけにもいかないので,注目したい段落のみを次項に紹介しておく。この記事のなかには追って「赤字を表現した図表」が用意されていたので,これをさきにかかげておく。
『朝日新聞』2017年4月25日朝刊日本郵政赤字計上
 2)2017年4月26日の報道(『朝日新聞』朝刊)
 「日本郵政は〔4月〕25日」,「2007年10月の郵政民営化以来初めて」の大幅赤字計上の「責任をとり,長門正貢社長ら役員が報酬の5~30%を6カ月間返上する」。「西室泰三・日本郵政前社長(元東芝社長)が主導し」て買収した「トールの業績は豪州経済の減速を受けて想定を下回り」,「2017年3月期にのれん代の全額と商標権など計4003億円を損失として一括して計上する」。

 「記者会見した長門社長は『減損と赤字を重く受け止める』としたうえで,『買収価格がちょっと高すぎた。見通しが甘かった』と述べ」,「トールの売り上げの伸びを高くみこんだ当時の経営陣の姿勢を『能天気だった』とも語った」。また「今回の減損は監査法人に求められたわけではなく,自主的に実施したという」。
 註記)『朝日新聞』2017年4月26日朝刊3面。

 今回報道されるに至った日本郵政の赤字計上問題のタネを,さきに蒔いてくれ,育てはじめていた西室泰三・日本郵政前社長(元東芝社長)は,その「 “能天気” な最高経営者」であったと糾弾されている。もっとも,いまの段階になってであれば,このようにであれ日本郵政が西室泰三のことを批判する自由はあっても,西室泰三が日本郵政の社長に君臨していた時期には,この社長の行動(独走)に歯止めをかけられるような,まわりの経営陣は存在しなかった。いまごろ反省するようなそぶりをしても,そしてしかも,当時において一番の責任があった前社長を “能天気” だったと批判したところで,ここにまで至ってしまった事態が,それでどうにかなるものでもない。結果の事態が深刻そのものである事実だけが目前に突きつけられている。

 前段の記事につづき『朝日新聞』朝刊は8面「経済」でも日本郵政を記事にとりあげていた。見出し「海外の活路,落とし穴 日本郵政『捨てる気はない』」のもと,こう報じていた。この記事は国内事業(郵便業務)しか経験のなかった日本郵政が犯した失敗を解説している。(画面 クリックで 拡大・可) 
『朝日新聞』2017年4月25日朝刊8面郵政問題画像
 --日本郵政が買収した豪州子会社をめぐって巨額損失を計上することになった。国内市場が先細るなかで,この子会社を足場に海外で物流事業を広げる戦略だが,2年でつまずいた(3面〔 1)のこと〕参照)。「買収価格がちょっと高く,買収後の経営管理も不十分だった」。日本郵政の長門正貢社長は〔4月〕25日の記者会見で,豪物流大手トールの買収をそう総括した。
 補注)この発言を聞いて呆れる。そもそも『経営のいろは』が判っていない。さらに,戦略を立案・実行するに当たっての初歩的な手順に手抜かりがあった。いわく「買収価格がちょっと高く」(この表現:〈ちょっと〉には「ちょっと ?」であるが),さらに「買収後の経営管理も不十分だった」といういいぐさには絶句するほかない。いまの社長にその責任が直接ないとはいえ,このように断わっておく余地はある。

 経営原則(the  principles  of  management)に照らしてもきわめて単純な失態は,経営学の
実践的な入門教科書のなかには,とりわけ「特筆大書してある基本事項」である。この手のミスを「犯してはいけない」と書いてある教科書に反したかたちで,わざわざ犯してしまう経営者たちなのであれば,いまからもう一度「経営学の理論と実際」に関する勉強をしなおすつもりで経営大学院にでも通ってもらいたくも感じる。

 もっとも,その大学院に入学したくても,もしかしたら院生として合格させてもらえないかもしれない。それでもともかく,いまからでもいい,入学してもらい「勉強しなおさせる」のもいいか? いずれにせよ,なにもかももう手遅れだが……。


〔記事本文に戻る→〕 買収を発表したのは,日本郵政の株式上場の9カ月前。金融市場では,同社の柱の一つである郵便事業は国内の成長がみこめず,不安材料とみなされていた。日本郵政としては海外展開で成長するという道筋を示す必要があった。日本郵政は当時,トールについて「アジア太平洋地域を中心に50カ国超,1200拠点で事業を展開する国際物流企業」と説明。買収を主導した当時の西室泰三社長は「最高の買収相手だ」と強調していた。

 だが,トールにとって海外事業は全体の一部で,売上高の7割,営業利益の8割は豪州国内の事業が占めており,豪州一国の景気低迷が業績を直撃した。一方,日本郵政との連携も目立った進展はなかった。長門氏は会見で「株式上場前に成長ストーリーを示したいという意図もあったのでは,と思う」と指摘。「ぱっとわかる相乗効果はいまのところない」と語った。

 一方で「日本でやっていては成長の壁に当たる」とも強調。「トールを捨てる気はまったくない。これからも海外の中核事業であり続ける」と述べ,トールを軸にアジアなど海外に物流事業を広げていく考えを明らかにした。日本企業が海外企業を買収するのは,国内事業の伸び悩みを打開するため,海外に活路を求めることが多い。だが,東芝や第一三共など,巨額損失を出す例も少なくない。買収の難しさがあらためて浮き彫りになった。

 ③「東芝に続き…日本郵政の巨額損失招いた西室元社長の罪」(『日刊ゲンダイ』2017年4月25日)
『日刊ゲンダイ』2017年4月25日日本郵政西室泰三画像
 日本郵政の巨額損失をめぐり,市場の判断が揺れている。日本郵政は2015年に子会社の日本郵便を通じて,オーストラリアの物流会社トール・ホールディングスを6200億円で買収した。ところが,オーストラリア経済の低迷などでトール社の業績は悪化。3000~4000億円程度の減損を計上する可能性が指摘されている。2017年3月期の最終損益で赤字転落する恐れも出てきたのだ。「ウミを一気に出し切ることは悪くない。ダラダラと損失を処理するより,よっぽどマシでしょう」(株式アナリストの黒岩 泰氏。)

  ★「悪材料がまだあるのでは…」★

 一方で,トール社買収を主導した人物が西室泰三元社長だったことから市場がざわついている。「西室氏といえば東芝の元社長です。  “東芝の天皇”  とすら呼ばれ,その影響力は計りしれません。東芝が不正会計に手を染めたキッカケとされる経営トップの人事抗争をつくり出した張本人ともいわれます。日本郵政の巨額損失は,東芝と同じ海外M&Aに絡んでいます。もしかすると日本郵政も東芝と同じように,つぎつぎと悪材料が出てくるのではないか……と勘ぐっているのです」(市場関係者)。
 補注)『日刊ゲンダイ』の記述は「東芝の元社長」で「東芝の天皇」だといわれていたこの西室泰三が,今回における日本郵政の大幅な赤字計上の問題に関して,その「張本人」だと指名している。別の東芝においては,ここ2年来,話題になってきた経営破綻の問題の元凶(基盤)も,この西室泰三が提供・準備していたが,さらに今回における日本郵政の初めての赤字,それも「3000~4000億円程度の減損を計上」しなければならなくなった「2017年3月期の連結最終損益が400億円超の赤字になった模様だ」と伝えられている。 

 西室氏はトール社買収にさいし,「日本郵政は世界をリードする物流企業だ。アジア太平洋で最大級のトール社との組み合わせは強力」と自信満々にコメントした。だが,西室氏の見立ては,わずか2年あまりで崩壊。買収当時,市場がささやいていた「株式上場(2015年11月)に向けた  “お化粧”  にすぎない」「高い買い物」が正解だった。

 東芝の米ウェスチングハウス(WH)社買収(2006年)に暗躍したのも西室氏だ。当時,西室氏は相談役に退き,社長は西田厚聰氏に譲っていた。WH社をめぐっては日立製作所や三菱重工も熱心だったが,最終的には東芝が手中にした。決め手は,院政を敷いていたといわれる西室氏が人脈を駆使し,ベーカー元駐日米国大使に働きかけたからだといわれている。

 「ただ,その過程でWHの買収額は倍以上の約6000億円にハネ上がっています。日本郵政のトール社買収も西室氏の鶴の一声で決定したといいます。企業価値をキチンと精査しなかったので,今回のような巨額損失が生じるのです」(証券アナリスト)。日本郵政にとって「西室つながり」は悲劇だが,投資家の不安は高まるばかりだ。
 註記)https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204179
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204179/2

 東芝によるウェスティングハウスの買収は「ババを引いた」と形容するほかない顛末を生んでいた。そして,またもや起きていたが,西室泰三に固有である「手腕(辣腕?)のおかげ・せい」で,こんどは,日本郵政がその「ババ」に相当する「企業赤字:結果」を発生させられていた。  “東芝の天皇”  と呼称されたこの西室泰三であったけれども,ここに至っては「落ちた偶像」も同然(「ツル」などではなく,ただの「ガチョウ」だった)とみなすべき前社長,という評価に落ちついた。

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<転載終了>