芳ちゃんのブログさんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.jp/2017/11/nato.html
<転載開始>
西側の軍事同盟(NATO)が必要であるか否かは質問をする相手によってその答えが大きく分かれる。
歴史的な大きな流れを見ようとする人たちは、90年代のソ連邦の崩壊に伴う東西冷戦の終結に伴ってNATOの存在意義は全面的になくなったと言う。
40年間程続いた東西の冷戦ではNATO軍とワルシャワ条約機構軍とが対峙していた。しかしながら、1989年の夏、オーストリアとの国境に位置するハンガリーのショプロンで起こった汎ヨーロッパ・ピクニックから始まって、西側への亡命を求める東ドイツ市民が大挙西側に雪崩れ込んだ。数か月後、ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦は終った。ワルシャワ条約機構軍は199171日に解散。ソ連邦は19911225日に解体され、クレムリンに掲げられていた赤い国旗は降ろされ、それに代わって現在の白・青・赤の三色旗が掲揚された。
そのような現実とは対照的に、米国の軍産複合体を擁護する人たちはNATOの必要性を何とか説明しようとする。
その説明においては大手メディアが喧伝するロシアの脅威が重要な要素として登場し、新冷戦が自己完結的に議論される。歴史を見ると、この議論の進め方は第一次世界大戦や第二次世界大戦に先立って米国で行われた世論操作のプロセスと酷似している。政治を我が物顔に率いようとする資本家勢力はまたもや自分たちの、つまり、既存勢力の利益を最大化し、覇権構造を長引かせるために世界規模の戦争を企んでいるように感じられる。
米国の大統領が戦争をどのように捉えるのかについては、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の発言を見るのが最適だと思う。詳しくは、2012107日に掲載した投稿「ふたりの大統領」を参照願いたい。幸か不幸か、米国の支配層が持つ典型的な考え方が手に取るように理解することが可能だ。
NATOは西側の利益を防護し、それを温存するための軍事組織である。それは自衛組織ではなく、多くの場合、非常に攻撃的で、侵略的な側面を見せる。
歴史を紐解けば、これは明らかである。湾岸戦争(1991年)では、NATOは国連安保理の委任を受けて軍事行動をしてはいたが、最近は国連安保理からの委任も無しに、NATOの同盟国だけで標的の国家に対して軍事行動を起こしている。その典型的な例はコソボ紛争時の旧ユーゴスラビアに対する攻撃(Operation Allied Force1999年)から始まった。空爆が3ヶ月近くも続いた。このNATOの軍事行動はNATO域外の国家に対する攻撃であったことから、激しい議論を呼んだ。当時のことについてはご記憶の方も多いと思う。
そして、今は、NATOの分裂の可能性が取り沙汰されている。
震源地はトルコである。トルコは長年にわたるNATOのメンバーである。しかしながら、最近、NATOとの亀裂が報じられている。昨年の7月、トルコで軍事クーデターの未遂事件が起こった。その背景に米国の支援があったと指摘されており、トルコ政府は米国離れを鮮明にし、今やロシア寄りの姿勢を強めている。ロシア、イラン、トルコの三国はシリア内戦の終結を目指して、政府側と反政府組織との間で対話を開始し、新憲法の制定、等、統治の在り方について話し合うことで歩調を揃えている。また、トルコ政府はロシアからS-400ミサイル防衛システムを導入することを決定したという。
ここに、「NATOは非常に厄介な分裂に向かっている」と題された記事がある [1]
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。
<引用開始>

Photo-1: ヴォイス・オブ・アメリカ/AP  五月、エルドアン大統領の警護員がワシントンで抗議デモのメンバーを襲撃。
もしも、あなたが米国市民であるならば、トルコで休暇を過ごすという計画は諦めた方がいい。トルコ人の友人を米国へ招くことも止めた方がいい。最近、トルコと米国は相手国の市民に対するビザの発行を停止した。これは単にもうひとつの旅行禁止措置が取られたというだけの話ではない。これは現代史に特徴的となっている地政学的な光景なのだ。つまり、ふたつの同盟国同士がお互いの国家間を旅行する市民を引き止めようとしているのだ。古くから存在していた友好関係はひどく悪化してしまった。

米国人旅行者がトプカピ宮殿から締め出され、トルコ人はグランドキャニオンへの観光旅行ができないなんて状況は想像するだけでも難しい。確かに、限定的なビザの発給が月曜日から再開されている。しかしながら、たとえビザを巡る抗争が完全に解決されたとしても、これが象徴する不和はそう速やかに完治されることはないだろう。トルコは65年間にもわたってNATOのメンバーであって、米国の軍事的同盟国であった。公式には今もそうである。しかし、現実はまったく違う。トルコは西側の同盟から脱出することを自ら書きしたためたのである。ワシントンやブリュッセルのNATO本部が決めたことを受け入れるのではなく、トルコは今や自国の国益を追求するために中東の一国のように振舞っている。トルコはNATOを離脱する最初の国家となった。

しかし、これが最後と言う訳ではなさそうだ。

この亀裂の原因は魔女の煮物のようにごちゃ混ぜである。この煮物の具はロシア製の武器から始まり、クルド人ゲリラの問題、経済制裁を破壊しようとする金の取引業者、ふたりの説教師、大統領の警備職員によるならず者的な行動、等から成り立っている。この煮物はトルコの社会に深く浸透した米国に対する懐疑心によって味付けがされているのだ。最近の調査によると、トルコ人の13パーセントは米国の理想を称賛しているが、72パーセントは米国の覇権の影響を危惧している。この反感は西側がトルコのことを長い間誤解していたことを示すものである。

1920年代、ムスターファ・ケマル・アタチュルクに率いられた世俗主義者たちは権力を掌握した後、自分たちのイスラム主義や中東の遺産からは脱却し、西欧化すると宣言した。数世代がこの宣言を鵜呑みにしてきた。こうして、トルコの政治システムは十分に開放され、一般大衆が自分たちの本当の意見や見方を公表することができるまでになった。数多くの有権者や政治家たちは平和を愛好する国家主義者であって、米国が君臨する世界に住むことを嫌っていることが判明した。このことはトルコ人に関するふたつの幻想の正当性を疑うことになる。つまり、第一には、ほとんどのトルコ人は心の底から西欧化した世俗主義者であるという点、二番目には、彼らは忠実なNATOの同盟国であって、中東戦争や他のワシントン政府の安全保障のためのプロジェクトにも喜んで参加するという点だ。 


















Photo-2

米・トルコ間の最近の危機の要因は少なくとも2003年に遡る。当時、トルコは米軍がイラクへ侵攻する際にトルコ領内を通過したいとする米国の要請を拒んだ。その23か月後、イラク北部に駐留していた米軍が11人のトルコ人治安将校を逮捕し、彼らを連行する際に彼らに頭巾を被せた。これらのイメージがトルコ人社会の記憶に焼き付けられたのである。シリアの内戦は戦略的な不協和音をいっそう先鋭化させた。米国はトルコが敵と見なすクルド人のグループを武装化した。これに対して、トルコはアルカエダや他の武装ゲリラ・グループに対してトルコ領内を通してシリアに向けて武器やゲリラ兵を輸送することを許して、返礼をした。

ワシントンでは反トルコ感情が高まった。5月にトルコ大使館の外で警備職員が抗議デモ参加者らを拳で殴るのをエルドアン大統領が明らかに楽しんでいる様子が映像に収められていたからであった。エルドアンは米国がペンシルバニア在住のトルコ人聖職者をトルコへ送還するよう求めているが、これは昨年のクーデターを企てた中心人物であるとトルコ政府が見ているからである。交換条件として、同大統領は刑務所に入れられている米国人を釈放することを提案した。先月、彼は米国大使館に勤務するトルコ人従業員を逮捕することによって掛け金をさらに吊り上げた。

また、金の取引行為に不正があったとしてニューヨークで近い内に裁判にかけられるトルコ系イラン人の金の取引業者についてもエルドアンは心配をしている。彼はロシアからミサイル防衛システムを導入する旨を公表した。これはNATOの同盟国としては考えられないことだ。地中海の近くに位置し、乱雑に広がったインジルリック空軍基地から米軍の軍用機を締め出す交渉を行うことさえも彼は容認した。米軍はこの地域における戦争業務をこの空軍基地から遂行しているのである。

トルコの離脱はNATO21世紀に適応することに失敗したことを示す出来事であり、その病状をもっとも鮮明に示したものでもある。そもそも、NATOはひとつの脅威、つまり、ソ連邦の脅威に対抗するために設立されたものだ。この脅威はこの同盟に明確な使命を与え、メンバー国を団結させ、ヨーロッパにおいては米国が軍事的優位性を保つ役割を正当化した。ソ連邦の崩壊後、米国は勝利宣言をすることが出来た筈であるし、NATOにおける役割を軽減することも可能であった。また、ヨーロッパの安全保障はヨーロッパへ戻すことだって出来た。ところが、それに代わって、米国はまったく反対の行動をとった。NATOは米国の覇権を維持するための道具として残されたのである。NATOは何カ国もの新メンバーを迎え入れ、ブリュッセルには新たな本部を拡張している。

しかしながら、NATOは決して冷戦の頃と同じように強力で、協調的な同盟軍にはならないであろう。トルコは自国の安全保障は同盟国のそれよりも大切であると見て、離脱しようとしている。他の国々も同じような計算をすることだろう。彼らもトルコの例に続くことだろう。つまり、自国に合った道を辿りながらも、NATOのメンバーの振りをするだけである。

内部崩壊だけがこの硬化し切った同盟が直面する問題であるという訳ではない。もっと性質の悪いのは目的の欠如だ。NATOを率いる米国の将軍たちは新たな使命を定義することによってその存在理由を正当化しなければならない。彼らはふたつの目的を提示した。

今日、NATOは部隊を移動し、武器を備蓄し、ロシアとの国境で演習を実施して、組織的にロシアに対抗しようとしている。それと同時に、NATOはイラクやシリアならびにアフガニスタンといった米国の「域外」での戦争を支援する。トルコはこれらのプロジェクトに参加することには興味を示さない。そうする義務は感じないのだ。これがトルコがNATOから脱退することに正当な資格を与えているのである。

厄介な国家主義や募るばかりの利己心がトルコをこの点に向けて追いやったのだ。冷戦が終わった後でさえも古いスタイルのままのNATOを維持しようとした米国のこだわりもそれに拍車をかけた。他にもうひとつの要因が最近表面化して来た。トルコは何年にもわたってEUへの参加を求めて来た。しかし、それは繰り返して拒絶されて来たのである。そのような歴史的選択肢を持ちながら、ヨーロッパはトルコの面前でその扉を閉めたのである。トルコ人はごく自然と何処か他所に友達やパートナーを見い出そうとし始めた。戦略的同盟でさえも恒久的に存続するという訳ではない。
スティーブン・キンザ―はブラウン大学のワトソン国際公共問題研究所にて上級研究員を務める。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終わった。

この記事によってNATOという軍事同盟が一枚岩ではないことがはっきりと分かる。もしもトルコが正式にNATOから離脱したならば、それは英国のEUからの離脱に匹敵するような混乱を招来させるかも知れない。

NATOの内部崩壊はEUという政治経済の統合組織においても内部に亀裂があることとまったく同様の現象であると言えようか。

英国は今EUからの離脱の最中だ。これに続くのはどの国か?EU圏を二分する問題は、たとえば、経済難民の問題である。難民の受け入れでは割り当て制に反対する国が少なくはない。また、圏内の経済格差によって一部の国々にもたらされた緊縮経済政策は非常に不人気である。ギリシャの困窮は記憶に新しい。さらには、対ロシア政策である。対ロ経済制裁では、ロシア側の農産物輸入を禁止する政策に見舞われ、国によっては大きな経済的損害を被っている。また、ロシア市場を失った産業界も同様だ。EU圏内には大きな亀裂が走っている。しかも、幾つかの性格が異なった亀裂である。

総合的に見て、今後どのような政治理念が現れるのかによって、ヨーロッパ全域が現在の繁栄を維持するのか、あるいは、ドカ貧に落ち居るのかに大きく分かれるように思える。それは経済や政治の分野だけではなく、軍事同盟についてもまったく同じことであろう。

中・長期的に見ると、ひとつのあり得る筋書きはロシアや中国を中心としたユーラシア経済圏の台頭であろうか。

すでにロシアと中国は天然ガスの輸出入ではロシアのル-ブルや中国のユアンを使い始めていると報じられている。国際決済での米ドルの使用を止めたのだ。今後、米ドルの使用から離脱する国家が増えると、オイルダラーの力は徐々に衰退する。米国最大の同盟国と言われて来たサウジアラビアさえもが中国との原油の取引でユアンを使い始めるのかも知れない。

その一方で、この新たな経済圏の台頭を抑えようとして米国は軍事力による反撃を準備している。ロシアを取り巻くNATO圏の拡大策はそのひとつである。2014年のウクライナでの政権転覆も然りである。また、ポーランドやバルト三国、ならびに、黒海で展開されるNATOの軍事演習もその一部である。しかしながら、シリアの内戦では米国を中心とする西側は大失敗を喫した模様である。

こうした一連の動きの中で、世界中の人たちが抱く最大の懸念は米国特有の戦争嗜好であろう。

米国は世界で最強の軍事力を持っていると自他共に認める国である。NATOという軍事組織が内部崩壊し、解体し、他のすべての策に窮した暁には、米国は気に食わない相手国には核弾頭を打ち込むことにやぶさかではない。将軍らは先制核攻撃を主張するだろう。何の根拠もなしに、自分たちは生き残れると主張する。政治家たちもそれに賛同する。繰り返してそう喋っていることによって、単なる言葉の綾として使われて来た文言はその政治家自身さえもが信じ込み、洗脳されて行く。大手メディアがそれに続く。そして、最終的には一般庶民だ。

核戦争に伴う人類の滅亡などは知ったことではないとする米国社会の短絡的な心理状態がすべてを破壊してしまうことだろう。

そんな結末にならない方策はいったい何か?これを考えることこそが今人類全体が抱えている課題を解く上で根本的な鍵になるのではないか。

答が何も見えて来ない方々には、2016816日に掲載した投稿「ロシア人たちからの警告」、ならびに、つい最近の1120日に掲載した投稿「米国の二大神話を暴く」を推奨したいと思う。ご自分の答えを導いてくれる何らかの切っ掛けが見つかるのではないかと期待する次第だ。




参照:
1NATO is headed for a very messy break-up: By Stephen Kinzer, Boston Globe, Nov/11/2017, www.bostonglobe.com/.../nato-headed...very-messy-bre...

<転載終了>