本ブログは2日前〔2018年1月25日〕の記述中において,東電が公表している「最大電力実績カレンダー」を引用して,ある疑問を提示していた。以下にも,本日時点のそのカレンダーをあらためて引用し,これをみながら本日の記述全体に対して前提になる議論を,事前に少しおこないたい。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可,大きく鮮明になる)
東京電力ホールディングスは〔1月〕26日,電力の不足時に使う予備の火力発電所2基が不具合で稼働できなくなっていることを明らかにした。容量は原子力発電所2基に相当する200万キロワット。首都圏では26日も電力不足がつづき,東電は4日連続で他の電力会社から融通を受けた。記録的な寒波による需要増にくわえ,供給側のトラブルも電力需給逼迫の一因になっている。
補注)のっけから疑問のような指摘をしておく。いわば「原発2基分」の「予備の火力発電所」の2基が,現在ちょうど「不具合で稼働でき」ずという状態は,次段の記事にはその理由が「出ている」。だが,「東電は〔その〕原因を明らかにしておらず,復旧の見通しは立っていない」という事情であるならば,これは実に奇妙な説明になっている。 火力発電所が稼働できないとき,その原因が分からないから「その原因も明らかにできない」のではなく,「東電側がその原因を明らかにし」ようとしていないと読みとるほかない(といったふうに解釈可能な)記事になっている。新聞社の担当デスクが記事の整理・編集に入っているうえで,こうした文章の記事を出しているからには,読み手側ではそういうに解釈していてもかまわない記事だという受けとめ方をしておく。ということでも,けっしておかしくないはずである。 〔記事に戻る→〕 不具合が起きたのは鹿島火力発電所6号機(茨城県)と広野火力発電所4号機(福島県)。いずれも石油を燃料とし,発電コストが高いため平時は使っていない。
寒波に備え1月中旬に稼働準備に入ったところで問題が発生。東電は原因を明らかにしておらず,復旧の見通しは立っていない。
東電管内の電力需要は寒波による暖房の使用増などで,26日に最大5139万キロワットまで上昇した。管内全体の需要量の公表を始めた2016年4月以降,冬季としては最大だ。この結果,供給可能量に対する需要の割合を示す電力使用率は26日夕方に95%まで上昇した。需給が「厳しい」と判断する水準だ。
東電は需給逼迫を受けて26日も東北電力などから最大137万キロワットの融通を受けた。2日以上続けて融通を受けるのは東日本大震災があった2011年以来,7年ぶりだ。事前に契約しておいた工場などに時限節電を要請する「ネガワット取引」も,初めて実施した22日から5日連続で26日も発動した。
卸売市場での電力売買も増えている。日本卸電力取引所の取引量は27日渡しが2億2626万キロワット時と過去最高を更新した。取引価格(24時間平均)は1キロワット時12.81円に続落し,26日渡しまで3日続いた18円台の高値が一服した。同取引所は「土曜日はオフィス需要がなくなるためだが,逼迫感は引きつづき強い」とみている。
補注)2011年「3・11」直後に,東電ははたして,絶対に不可避であったかどうかいまだに疑問をもたれている「計画停電」を実施していた。ウィキペディアには,当時の事情が以下のように説明されている。 ピーク時の需要超過が予想されたため,東京電力と東北電力の管内では〔2011年〕3月14日から,供給不足に陥ると予想される時間帯に地域を区切って順々に停電させる,輪番停電(計画停電)の実施の可能性があることを発表した。
東京電力の管内では,3月14日から28日にかけて計画停電をおこなった。周知の方法や区割りなどをめぐって混乱が発生したほか,停電に伴って社会活動全般に影響が生じた。東北電力の管内では他社からの融通などにより供給を確保し,実施せずに済んだ。
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【 参考画像 】(2015年の資料である)
出所)http://www.garbagenews.net/archives/2050101.html
「3・11」直後当時は「非常に混乱した状況」にあったとはいえ,東電によるその「計画とはいえるようなシロモノではなかった」「停電実施の強行措置」は,管内の製造業や流通業に大きな損害を与える結果をもたらしていた。はたして,その「計画停電」という名の,ある意味では「脅迫的な対応」は,現時点から回顧してみるに “東電社史に一大汚点” を残した。
あの大地震の直後,東電福島第1原発事故が発生し,狂乱状態だったとも形容できそうな東電内の混沌ぶりであった。肝腎の社長清水正孝は当事者能力をまったく発揮できずに,途中から東電傘下の付属病院に逃げこむなど,経営者としては落第の人間である醜態そのものをさらけ出していた。そこで,その穴埋めをしてきたのが当時会長の勝俣恒久であった。清水は,居たとしても居ないも同然の人物であったが,その代わりに会長職の勝俣が,現役の社長自身であるかのように采配を振るっていた。 〔記事に戻る→〕 電力会社が供給責任を果たすには,発電所を大量に確保するのが従来の考え方だ。だが,人口減や低成長で電力需要が減少に向かうなか,やみくもに発電所を建設するわけにはいかない。安定供給体制を維持するには新たな知恵が必要だ。
発電所を使わずに需給を調整できるネガワット取引はその一例だ。取引に応じる工場を増やせば,より大規模な調整が可能になる。予備の発電所を電力会社が共有したり,電力会社間の送配電網をつなぐ「連系線」の容量を増やして融通できる量の上限を引き上げたりすれば,1社当たりの発電所投資を抑えられる。
(引用終わり) この時期,「数十年ぶりの寒波襲来」といった気象状況になっていた。気象庁によるとこの強い冬型の気圧配置の影響で,1月26日(昨日の)朝も厳しい冷えこみがつづき,たとえば関東地方のさいたま市では,1977年の観測開始以来もっとも低い零下9. 8度を記録したというのである。つづく27日(今日),同市が午前中に記録した最低気温は零下4. 3度であった。
このような時節に(26日に),東電の火力発電所の2基が稼働できない状態にある事実を取材した日経のニュースが,なぜか「東電は原因を明らかにしておらず」といったごとき “東電側の広報” に不満も不審ももたずに,そのまま世間に向けて筒抜けに通知し,しかもその「復旧の見通しは立っていない」ということまで報道していた。この新聞社側の姿勢じたいについて,奇妙だという印象をもたざるをえない。
日経の記者は「どうしていま,このときに鹿島と広野の火力の2基は稼働できないのか」,「なぜ,その故障の原因が明らかになって(されて)いないのか,あるいはしていないのか」などと,詰めた取材をしなくてよかったのか? 新聞社勤めなどしたことのない本ブログ筆者でもその程度の〈疑問〉は抱く。だから「奇妙だ」と形容している。
「3・11」当時において,「東電が保有し,稼働可能であった」火力発電所の供給能力のうち,とくに有力〔出力の大きい〕であった鹿島と広野の状況を思いだしてみたい。
◇ 2011年「3・11」当時の鹿島火力発電所能力 ◇
1号機 60万kW 復旧日 5月16日(1号機・4号機は停止中だった)
2号機 60万kW 4月7日
3号機 60万kW 4月6日
4号機 60万kW 4月1日
5号機 100万kW 4月8日
6号機 100万kW 4月20日
◇ 2011年「3・11」当時の広野火力発電所能力 ◇
1号機 60万kW 復旧日7月3日(2011年4月22日まで福島第2原発
の屋内退避指示区域内だった,また1・3・5号機は
停止中だった)。
2号機 60万kW 7月11日
3号機 100万kW 7月16日
4号機 100万kW 7月14日
5号機 60万kW 6月15日
註記)https://ja.wikipedia.org/wiki/東日本大震災による電力危機#東京電力
前段の記事には,「東京電力ホールディングスは〔1月〕26日,電力の不足時に使う予備の火力発電所2基が不具合で稼働できなくなっていることを明らかにした。容量は原子力発電所2基に相当する200万キロワット」と書いてあった。鹿島と広野のそれぞれ100kwの火力が1基ずつが稼働できていない状況のなかで,「東電は〔その〕原因を明らかにしておらず,復旧の見通しは立っていない」という「2018年1月下旬現在での説明」がなされていた。
とはいえ,その故障の説明がきちんと説明できていないのではなく,「原因を明らかにしておらず」という記事の文面からは,東電という電力会社の《主体的な意志》が,消極的なかたちでであっても,なんらかの意図がそこには秘められていたと推理されて(邪推にはなるまい)当然である。このあたりの疑問を探るために,おそらく役に立ちそうな報道が,つぎのニュースである。
② 福島第1原子力発電所事故をめぐる裁判-日本経済新聞と朝日新聞の報道には若干であっても相違もある- 1)「4月から集中審理 原発事故,東電旧経営陣の公判」(nikkei.com 2018/1/27付)
福島第1原子力発電所事故をめぐって刑事責任を問われた東京電力旧経営陣3人の公判が〔1月〕26日,東京地裁で約7カ月ぶりに再開した。4月からは月に4~5回の集中審理を進め,20人以上の証人尋問がおこなわれる予定だ。
出所)東京地裁に入る東京電力元会長の勝俣恒久被告(左端)=1月26日午前,東京・霞が関。
https://www.jiji.com/jc/p?id=20180126103451-0026031505
安全対策を怠ったとして業務上過失致死傷罪で強制起訴されたのは勝俣恒久元会長(77歳),武黒一郎元副社長(71歳),武藤 栄元副社長(67歳)の3人。いずれも無罪を主張している。巨大津波の襲来を予見できたかが最大の争点となっている。
26日の第2回公判は,東電の事故調査報告書のとりまとめに携わった担当者が証人出廷。「津波や浸水を防ぐ対策を事前おこなっていれば,事故を防げた」と述べる一方,巨大津波を想定しなかった当時の対策については「余裕のある想定だと思っていた。10メートルの敷地を越えるような津波は考えていなかった」と証言した。
永渕健一裁判長は,東電の社内資料やメールのやりとりなど300点以上の証拠を採用。東電関係者や専門家らの証人尋問を本格的に進めるため,4~6月に計13回の公判を開くことを決めた。今秋までに被告人質問を終える方針。東電が2008年に試算した最大15.7メートルの津波想定について「海抜10メートルの敷地の上に高さ10メートルの防潮壁が必要」と指摘する会議資料なども証拠採用された。
註記)https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26233640X20C18A1CC1000/
以上,日本経済新聞の報道であるが,つぎに引用する朝日新聞の記事とよく比較対照してみると興味深い。こまかい表現に着目して読みこんでみると,はっきりした違いも感得される。冒頭だけを比較しても,日本経済新聞は最初に「事故をめぐって刑事責任を問われた」と書きだしているが,朝日新聞は最初に「業務上過失致死傷罪で強制起訴された」と書きだしている。このところは,記事の内容における記述の順序の違いではあるとはいえ,両紙の〈書き方〉がかなり異なっていたと観てもよい。
2)「福島原発事故訴訟,東電社員が出廷 報告書の調査責任者」(THE ASAHI SIMBUN DIGITAL,2018年1月26日12時44分)
福島第1原発事故をめぐり,業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力元会長の勝俣恒久被告(77歳)ら旧経営陣3人の第2回公判が26日,東京地裁(永渕健一裁判長)であった。
東電の事故調査報告書をとりまとめた社員が証人として出廷し,津波対策などについて証言した。公判では,原発を襲った巨大津波を予見できたかが争点のひとつになっており,勝俣被告らはいずれも「予見できなかった」として,起訴内容を否認している。
昨〔2017〕年6月の初公判後,地裁は証拠の読みこみや証人の選定をしてきたため,開廷は約7カ月ぶり。この日の公判で永渕裁判長は約300点の証拠,二十数人の証人を採用したと説明。2月から6月15日までの間に15回の公判を開き,証拠調べや証人尋問をすると述べた。今秋ごろまでに被告人質問をおこなう方針も明らかにした。
この日出廷したのは,東電が2012年6月に作成した事故調査報告書で,調査責任者だった男性社員。検察官役の指定弁護士から,緊急時に原発事故を防ぐ装置の設置箇所などを問われると,図面をもとに説明した。
事故について,この社員は「地震後,津波が来なければ,(被害は)収束していた。今回の事故の反省点は,自然災害は対策工事を上回ることが起きうるということ」と証言。今回の事故を防ぐため,事前にとりえた対策を問われると,「津波を防ぐため,防潮壁や防潮堤をつくる。建屋に水を入れないようにする。さらに重要機器を水密化させ,高台に消防車を配備する」などと述べた。
起訴状によると,勝俣被告と原発担当だった元副社長の武藤 栄被告(67歳)と武黒一郎被告(71歳)の3人は同原発が巨大な津波に襲われ,重大事故が発生することを予見しながら適切な安全対策を取らず,2011年3月の東日本大震災に伴う津波で同原発の電源喪失などで近隣病院の入院患者ら44人に避難を強いて死亡させたなどとされる。
指定弁護士側の冒頭陳述などによると,東電は2008年3月以降,国の専門機関が2002年に公表した長期地震予測「長期評価」にもとづく津波高(15.7メートル)の計算結果や,津波対策として原発が立つ標高を上回る防潮堤の設置図面を子会社から得た。3人はこうした情報をしりながら適切な対策を怠り,事故を防がなかったとされる。
註記)https://digital.asahi.com/articles/ASL1V2SV4L1VUTIL002.html
以上に引用した各記事は,これをもってなにをいいたいかといえば,ごく単純にいえば「東電のヒステリー」的な経営姿勢の現われが示唆されていたということである。
つまり,東電はこの1月下旬に襲来した寒波を迎えているなかで,「原発2基分の『予備の火力発電所』の2基が『不具合で稼働でき』ずという状態」について,それも「東電は原因を明らかにしておらず,復旧の見通しは立っていない」と答える態度を採っている点については,つぎのような解釈をくわえておく。
すなわち,「3・11」のために発生した原発事故の刑事責任を問われ,強制起訴された3名の元幹部,勝俣恒久元会長(77歳),武黒一郎元副社長(71歳),武藤 栄元副社長(67歳)の3人に対する裁判が,本格的に再開された事態を迎えてこれを側面から支援する態勢を暗示したつもりなのである。この推理が邪推そのものであり,完全に的をはずしていると断言できる人は,多分いないと考えている。
※ 参考画像 ※
(『朝日新聞』2015年7月31日)
③ 現在における東電火力発電所 東電のホームページのなかに「発電所一覧」があって,「各火力発電所の設備概要や特徴をご紹介します」という箇所もある。ここから,鹿島火力発電所と広野火力発電所の各基の発電能力(出力)を紹介しておく。主な諸元のみ参照する。
出所・註記)http://www.tepco.co.jp/fp/thermal-power/list/index-j.html (画面 クリックで 拡大・可 ↓ )
1)鹿島火力発電所
「世界最大級の大容量火力(認可出力国内第1位) 高効率ACC発電と需給調整機能を担う石油火力が混在 1~4号機: 長期計画停止中」。「最大出力 566万kW,最大設計熱効率 57. 2%」。
1号機(運転開始年月 1971年3月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 42.7%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
2号機(運転開始年月 1971年9月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 42%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
3号機(運転開始年月 1972年2月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 42.7%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
4号機(運転開始年月 1972年4月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 42.7%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
5号機(運転開始年月 1974年9月)
単機容量 1,000,000kW
設計熱効率 (LHV) 43.2%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
6号機(運転開始年月 1975年6月)
単機容量 1,000,000kW
設計熱効率 (LHV) 43.2%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
7号系列[7-1号~7-3号](運転開始年月 2014年6月)
単機容量 420,000 × 3 kW
設計熱効率 (LHV) 約57.0%
発電種別 ACC
使用燃料 都市ガス
(注)LHV:低位発熱量
註記)以上,http://www.tepco.co.jp/fp/thermal-power/list/kashima.html
2)広野火力発電所
「東京電力フュエル&パワー全火力発電所のうち,唯一供給エリア外立地の発電所 石油・石炭と多種の燃料を使用 1号機:長期計画停止中」。「最大出力 440万kW,最大設計熱効率 45. 2%」
1号機(運転開始年月 1980年4月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 43.1%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
2号機(運転開始年月 1980年7月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 43.1%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
3号機(運転開始年月 1989年6月)
単機容量 1,000,000kW
設計熱効率 (LHV) 44.3%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
4号機(運転開始年月 1993年1月)
単機容量 1,000,000kW
設計熱効率 (LHV) 44.2%
発電種別 汽力
使用燃料 重油,原油
5号機(運転開始年月 2004年7月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 45.2%
発電種別 汽力
使用燃料 石炭
6号機(運転開始年月 2013年12月)
単機容量 600,000kW
設計熱効率 (LHV) 45.2%
発電種別 汽力
使用燃料 石炭
(注)LHV:低位発熱量
註記)以上,http://www.tepco.co.jp/fp/thermal-power/list/hirono.html
この鹿島と広野の各火力発電所のうち,どの何号機(100万kw相当の)が稼働不可になっているのか,新聞で読むかぎり不詳である。鹿島であれば5号機か6号機,そして広野のほうは3号機か4号機である。
なぜか,偶然かもしれないのだが,その稼働不可の発電総量は2基で200万kwだから,100万kwの火力発電機がそれぞれ1基ずつが,しかも「東電〔側から〕は原因を明らかにしておらず」に,かつまた「復旧の見通しは〔まだ〕立っていない」などとも,ずいぶんわざとらしくも,またもったいつけたかのようにも聞こえる説明(?)になっている。
その点は,いまどきの企業経営のあり方に関する『倫理的な立場・主義・理念』に則して評定するとすれば,東電側は肝腎な点に対する「情報公開を完全に忌避している」とみなされてもしかたがないほど,ただ一方的に宣告(伝達)していた。
その東電の経営姿勢は,すでに「3・11」を契機に企業形態・支配実態を大幅に変更させられた会社であるにもかかわらず,いまもなお「地域独占企業」時代の〈時代感覚〉が,そのまま露骨に表出されているといえないか。
すなわち,それは「3・11」当時の東電「最高経営責任者」陣--のうち勝俣恒久元会長(77歳),武黒一郎元副社長(71歳),武藤 栄元副社長(67歳)--の3人が,いま,あの「原発事故の刑事責任を問われて強制起訴され,その裁判が本格的に再開された」事態に対する,ひそやかなかつささやかな,それも嫌らしくも陰湿な抵抗なのである。
ところが,このたびの寒波襲来にさいしては,つぎのような電力事情の変化を指摘しておかねばなるまい。
日本全体における電力の生産・配電網なかで,各電力会社などがたがいに融通ができる相対の総量は,「3・11」時に比較するといちじしく増している。また,各電力他会社やその他の発電施設を常備している諸会社,さらには再生可能エネルギーの開発・利用による電力提供も徐々に高まりつつある。
そうした事情なかでは,原発をまだ1基も再稼働できていない東電側の内部経営事情そのものが,実は「正常(=日常・通常)な発電態勢」になりつつあること,そして今後においては「望ましい電力生産体制」であることを表現してもいる。
今回における東電の元幹部に対する強制起訴,「3・11」を原因とした原発事故をめぐる旧幹部3名の裁判(強制起訴)は,東電にとってみれば《癪の種》である。結局,この寒波を利用(悪用?)しては,ささやかな抵抗を試みていると解釈できる。
3)安倍晋三の政治責任
しかし,「3・11」原発事故の最終責任「論」が,当時東電の幹部であった経営陣にのみ問われるのはおかしい。それまでこの原発事故を起こさせるに至るまで,その原因(前提条件)を “揃えていた” とでもいうべき「政府側要人・政治家の存在」もみのがせない。
安倍晋三がその代表的な人物である。すでに本ブログ内でも言及していた話題であったので,ここでは,つぎのように復習しておく。
2006年の国会におけるやりとりに,こういう原発問題に関連する質疑応答があった。「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」という質問主意書が,当時,国会議員吉井英勝(日本共産党)から安倍総理大臣に対して提出されていた。なお吉井は,京都大学工学部原子核工学科卒である。
吉井英勝「海外(スウェーデン)では二重のバックアップ電源を喪失した事故もあるが日本は大丈夫なのか」。
⇒ 安倍首相「海外とは原発の構造が違う。日本の原発で同様の事態が発生するとは考えられない」
吉井「冷却系が完全に沈黙した場合の復旧シナリオは考えてあるのか」
⇒ 安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」
吉井「冷却に失敗し各燃料棒が焼損した(溶け落ちた)場合の想定をしているのか」
⇒ 安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」
吉井「原子炉が破壊し放射性物質が拡散した場合の被害予測を教えて欲しい」
⇒ 安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」
吉井「総ての発電設備について,データ偽造が行われた期間と虚偽報告の経過を教えて欲しい」
⇒ 安倍首相「調査,整理等の作業が膨大なものになることから答えることは困難」
吉井「これだけデータ偽造が繰り返されているのに,なぜ国はそうしたことを長期にわたって見逃してきたのか」
⇒ 安倍首相「質問の意図が分からないので答えることが困難。とにかくそうならないよう万全の態勢を整えている」
今月〔2018年1月〕から国会が開催されているが,この国会のなかで質疑に応答する安倍晋三の態度も,前段に紹介した原発問題とまったく同じ調子である。単なる無責任で済ませられるような,この日本国の「首相の問題:基本姿勢」か?
「とにかくそうなった」のであり,いまだに東電福島第1原発事故現場は ”out of control” である。ウソは一度ついたら止められないというわけか。ということで,アベのウソだけは,under control である。ただし,この under control ということじたいが「ウソ」なので,付言しておきたい。
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<転載終了>
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