米太平洋軍が米インド・太平洋軍へ名称変更された背景には戦略の変更
米太平洋軍が今年(2018年)5月30日から米インド・太平洋軍へ名称変更になった。その名の通り、太平洋とインド洋を担当、太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うという。ディエゴ・ガルシア島も重要な役割を果たすことになる。
太平洋とインド洋を統合する意味として、少なからぬ人は中国の一帯一路のうち「海のシルクロード」を連想しているだろう。南シナ海からマラッカ海峡を通り、インドのコルカタとコロンボ、ケニアのナイロビ、紅海からスエズ運河を通過してヨーロッパへというルートだ。すでに南シナ海でアメリカ海軍は中国とつばぜり合いを演じている。中国はマラッカ海峡を警戒してミャンマーにパイプラインを建設したが、アメリカはミャンマーの属国化を目論んでいる。
新体制で鍵を握る国はインドだが、この国の現政権はイスラエルと緊密な関係にある。昨年6月にはドクラム高原でインド軍と中国軍がにらみ合いになった。中国側の説明によると、インド軍は中国の進めていた道路の建設工事を妨害したのだという。
インドと中国との間で緊張が高まった直後の6月27日、インドのナレンドラ・モディ首相はワシントンでドナルド・トランプ大統領と会い、7月7日にはイスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談している。
このときは8月下旬にインドと中国が双方の部隊を速やかに撤退させることで合意、軍事的な緊張は緩和された。日本はインドを支持している。
アメリカの戦略に会わせ、安倍晋三政権は2016年11月、一帯一路に対抗する目的でモディ首相とAAGC(アジア・アフリカ成長回廊)を誕生させたが、中国の戦略に比べると見劣りする。2016年11月には日本からインドへ核燃料のほか原子力発電に関する施設や技術を提供することで両国は合意した。日本、インド、アメリカはインド洋で合同艦隊演習も実施している。
これだけ見るとインドはアメリカ、イスラエル、日本に取り込まれているようだが、経済面ではBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やSCO(中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン)に参加している。なお、SCOにはオブザーバー国としてアフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴルも加わっている。
アメリカはカスピ海周辺の石油利権を独占しようとしているので、これからSCOに揺さぶりをかけてくるだろう。中央アジアにアル・カイダ系の武装集団(ジハード傭兵)を送り込む動きもある。
太平洋軍からインド・太平洋軍への名称変更は単に名前を変えただけでなく、中国やロシア、特に中国を封じ込めようという戦略に基づくものだと見られている。今後、アメリカは中国の一帯一路に合わせ、軍事行動の中心を少し西へ移動させるのかもしれない。
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