★米国の破綻は不可避
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米国が中国などに輸入関税引き上げの貿易戦争を仕掛けるなか、7月末に
BRICS諸国(中露印ブラジル南ア)の年次サミットが南アフリカで開かれた。
中国は、BRICSの5か国の中で最も経済力があり、BRICSを隠然と主導
している。今回のサミットで中国の習均平は、中国など世界に貿易戦争を仕掛け
て保護貿易(=悪)の姿勢を強めるトランプの米国を間接批判し、BRICSは
自由貿易(=正義)を信奉する機関であるとぶち上げた。トランプの就任以来、
米国は保護主義で、トランプに敵視される中国やドイツが自由貿易主義という
構図が定着している。善悪関係から見て、これは中国に有利だ。
http://www.atimes.com/article/china-builds-a-wall-of-brics-to-help-counter-us-trade-war-barrier/
China builds a wall of BRICS to help
counter US trade war barrier
http://m.scmp.com/news/china/diplomacy-defence/article/2157111/brics-nations-pledge-unity-face-us-china-trade-war
BRICS nations pledge unity in face of
US-China trade war
BRICSは今回のサミットで、自由貿易の理念に基づきつつ、5か国相互間の
貿易関係を強化することを決めた。新興市場諸国である5カ国は従来(冷戦後)、
世界最大の輸入消費国(経済覇権国)である米国に輸出して経済成長するモデル
に沿ってきたが、トランプによる米国の保護主義化に伴ってこの従来モデルを
あきらめて離脱し、5か国合計で世界の総人口の4割を占めるBRICSの消費
市場としての潜在的な力を利用し、BRICS内部や他の新興市場諸国との貿易
で経済成長していくモデルに移行していくことにした。その主導役は中国だ。
http://www.news18.com/news/world/brics-nations-call-for-strengthening-multilateral-trading-system-amid-rising-trade-disputes-1825005.html
BRICS Nations Call for Strengthening
Multilateral Trading System Amid Rising Trade Disputes
http://www.ecns.cn/m/news/politics/2018-07-18/detail-ifywhfmh2711709.shtml
BRICS to seek unity on trade
今後の世界経済は、牽引役が、高度成長期を終えて少子高齢化も進む先進諸国か
ら、BRICSなどの新興市場諸国に転換していく。トランプの保護主義は、こ
の転換を加速している。中国は、この転換の中心にいる。トランプの貿易戦争は、
中国を弱体化するどころか逆に、中国を今後の世界経済の主導役へと押し出して
いる。南アでのBRICSサミットは、中国主導のBRICSがこの転換を積極
推進していくことを宣言した点で画期的だ。
http://www.telegraph.co.uk/news/world/china-watch/business/brics-summit-2018/
Brics on right track to the future
http://www.economist.com/free-exchange/2018/07/27/has-brics-lived-up-to-expectations
Has BRICS lived up to expectations?
今後、米国の経済覇権の根幹にある債券金融システムがいずれ(前回の記事に書
いたように2020−24年ごろか??)バブル崩壊し、それが米国覇権の終わ
りにつながると予測される。リーマン危機後にQEなどによって再膨張した米国
中心の金融システムのバブルは巨大で、ひどい金融危機を起こさずに軟着陸する
ことが不可能だ。米国の政府と金融界は、バブルを縮小する気が全くない(日本
政府も)。バブルの危険性を無視して、どんどん膨張させている。政治的にも、
トランプは、いずれバブル崩壊を引き起こして米国覇権の解体につなぐべく、
高リスク投資に対する銀行規制を緩和し、バブルを意図的に膨張させている。
米国のバブル崩壊はもはや回避不能であり、いずれ必ず起きる。この大きなバブ
ル崩壊が起きると、世界経済の中心が、米国など先進諸国から中国など
BRICS・新興市場諸国に転換する流れが一気に進む。
http://tanakanews.com/180801boj.php
最期までQEを続ける日本
http://sputniknews.com/analysis/201807281066765965-trump-trade-wars-benefit-brics/
'Trump's Trade Wars Could Be Beneficial to
BRICS' - IR Specialist
BRICSは、今回のサミットで、この転換の準備を進めていく態勢づくりを加
速することを決めた。BRICSは、加盟諸国間の貿易で使う通貨を、米ドルか
ら、人民元など加盟諸国の5つの通貨に替えていく動きを続けている。いずれ米
国が金融崩壊したら、従来の米ドルの貿易決済システムへの信用が低下し、各国
が外貨備蓄を米国債の形で持つことも減る。戦後の世界経済の根幹が崩れる。
BRICSは、その後のことを考えている。
http://www.businesslive.co.za/fm/features/2018-08-02-ways-to-cement-brics/
To strengthen Brics, the bloc first has to
improve trade and investment between its members
米国が金融崩壊すると、その後、ドルの究極のライバルである金地金が、富の備
蓄や国際決済の手段として見直されるだろうが、金地金の国際的な価格管理の主
役は、今年初め、それまでの米英金融界から、中国政府へと、ほとんど知られぬ
まま、交代している。国際金相場は現在、人民元の為替と連動している。人民元
の為替は、金の価格にペッグしている。米国が中国の対米輸出品に高い関税をか
ける貿易戦争を仕掛けたのに対抗し、中国は、人民元の対ドル為替を意図的に下
落(元安ドル高)させ、対米輸出品の価格を下げることで、関税の引き上げを穴
埋めする策をとっているが、この元安の影響で、ドル建ての金相場が下落を続け
ている。
http://tanakanews.com/180718goldchina.php
金相場の引き下げ役を代行する中国
http://tanakanews.com/150314gold.php
金本位制の基軸通貨をめざす中国
中国はすでに世界の金地金取引の中心にいる。そしてBRICSは今回、5か国
の金鉱山の協力関係を強化し、BRICS内の金取引の制度を整えることにした。
世界最大級の金地金の消費国である中国やインドと、地金の大きな生産国である
南アやロシアとの結束が強まる。BRICSの金地金流通の新体制が、金本位制
を意識して金相場にペッグする人民元を裏打ちするようになる。当面、米中貿易
戦争の絡みで、人民元も金地金も安いままだろうが、いずれ米国がバブル崩壊す
るとともに、人民元と金地金の国際地位が上昇する。この上昇は、中国やBRICS、
非米諸国の、国際政治における地位の上昇や、覇権の多極化につながる。
いずれ米国のバブル崩壊とともに「金地金の取り付け騒ぎ」が起きるだろうが、
その時、金の現物の国際管理権は、中国が握っている。
http://www.miningreview.com/brics-gold-new-model-multilateral-cooperation/
BRICS Gold: A new model for multilateral
cooperation
http://tanakanews.com/130424gold.php
金地金の売り切れ
米国の経済覇権の根幹にある債券金融システムがいずれバブル崩壊し、それが米
国覇権の終わりになる。このとき、日銀のQE(量的緩和策)によって米金融シ
ステムをテコ入れしている日本は、米国のバブル崩壊によって大打撃を受ける。
中国やBRICSは、米国の金融崩壊後に備え、ドルの使用を減らし、金地金を
備蓄しており、きたるべき米金融崩壊から受ける打撃も少なくなる。中国や
BRICSは「ノアの方舟」を建造し始めている。日本は、米国とともに溺れる
運命にある。先日、中国がBRICSサミットでドル崩壊への準備加速をを決め
たのと同時期に、日銀がQEを2020年まで続けることを決め、崩壊が不可避
なドルの延命に邁進することにした。中国は賢い。日本は馬鹿だ。
http://tanakanews.com/180801boj.php
以上は「田中宇氏ブログ」より
世界経済の主役が交代する時期に来ています。これは必然的な歴史の流れです。以上
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