メキシコは7月に大統領選挙が行われ、12月に新しい大統領が就任することが決まったばかり。すでに退任が決まり政治的影響力が弱体化したニエト現大統領に、今回のようなアメリカにとって都合がいい条件をのますことは、トランプ大統領にとって最も簡単なことだったろう。

 そして、次はカナダだ。このNAFTA2国と交渉して外堀を埋めてしまったら、次は日本。これは自民党の総裁選が終わった後を見込んで行われる。総裁選の最中に交渉すると、安倍首相は国民の手前、抵抗せざるを得ない。日本との交渉は9月20日以降の方がやりやすいというわけだ。そして日本が陥落すれば、次はイギリス、最後にEUへと矛先が向かうだろう。

 日本はアメリカとの2国間交渉で、10月中に即行で決着を付けさせられる可能性が高い。理由は、11月にアメリカの中間選挙があるからだ。下馬評ではトランプ氏率いる共和党が大敗北を喫するかのように言われているが、もしこのタイミングでトランプ氏の保護貿易政策によってアメリカの製造業が息を吹き返したら、そのシナリオは崩れるだろう。

日の丸自動車はエンジンを
北米で生産するしかなくなる?

 さて、トランプ政権にとって今回のメキシコとの交渉結果には「2つのウラ」がある。1つは、アメリカとメキシコでの部品調達率75%という数字にその秘密がある。簡単に言えば70%なら達成できても75%という数字はちょうど日本企業には達成できない水準に設定されているということだ。

 1990年代の日米構造協議の際に、日本車は北米大陸で62.5%を生産しなければならないという条件を突き付けられた。その結果、アメリカ、メキシコ、カナダに次々と日本車工場が建てられたのだが、北米に進出した工場は自動車メーカーだけではない。日本の名だたる部品メーカーがすべて北米大陸に進出した。自動車部品も北米産でなければ、62.5%は達成できないからだ。

 私は当時、日本の自動車メーカーからの依頼で「どうすればこのハードルを乗り越えられるか」を検討していた経験がある。わかったことは、日本車にはどうしても日本で製造しなければ理想とする性能を実現できない高精度部品が2つあるということ。それがエンジンと変速機で、この2つで全コストの30%を占める。一方、それ以外の部品の大半は北米産にしなければ62.5%は超えられない。ということで、日本の完成車メーカーは部品メーカーに大挙し、アメリカへの移動を指示することになったのだ。