芳ちゃんのブログ さんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.com/2018/10/blog-post_22.html
<転載開始>
1980年、世界保健機関(WHO)は天然痘が世界から根絶されたことを宣言した。(天然痘の根絶活動が進んでいた日本では種痘の接種は1976年に中断。)
私らの世代は子供の頃に種痘を接種され、左肩にその痕跡が残っている。しかしながら、今の若い世代は接種を受けてはいない。したがって、もしも何らかの理由で天然痘ウィルスが現れた場合、免疫性を持たない若い世代は世界的な大流行の危険性に曝されるかも知れないと言われている。
最近、ある研究論文がその種の懸念を呼び起こした。世界から根絶されたはずの天然痘の仲間である馬痘ウィルスが遺伝子操作によって再合成され、人への感染力があることが研究の結果分かり、そのことが論文で報告されているのだ。

問題視されている馬痘ウィルスの再合成は致死性の高い天然痘に対するワクチンを作る上で有用であると研究者らは述べている。つまり、今や入手することができなくなった馬痘ウィルスを再合成することによって現在用いられている天然痘のワクチンに比べて毒性がより低いワクチンの開発に成功したとして研究者らはこの論文を発表した。毒性が弱く、天然痘のワクチンとして効力を発揮してくれるならば、そのこと自体に医療面での価値がある。これは研究者としては妥当な考え方であろう。
問題は世の中には邪悪な考えを抱く輩がおり、新技術には悪用のリスクがついてまわるという点だ。いわゆる「バイオテロ」の懸念である。いやな時代になったものだ。今や、インターネット上では特定の科学論文がクリックひとつで入手することが可能だ。

ここに「遺伝子操作によって再合成された馬痘が引き起こすかも知れない天然痘の大流行の可能性に科学者たちはびびっている」と題された記事がある [注1]。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>すでに根絶された馬痘ウィルスを再生するために、研究者らはDNAの断片を結び付けて同ウィルスを合成する手法を確立し、その成果が今年の始めに報告された。それを受けて、悪意を抱く輩がこの研究成果を悪用して天然痘の大流行を引き起こそうとするかも知れないとして、一部の科学者らはすっかりびびっている。

長期間にわたる種痘の接種を行った結果天然痘は全世界から根絶されたとWHOが宣言するまでに、天然痘による犠牲者は3億人に達していた。それ故に、天然痘に非常に近いウィルスを再合成する手法を報告したこの研究論文は科学者の間に警戒の赤信号を発せしめた、とfuturism.comが報じている。



Photo-1 

批判の論点はこうだ。たとえば、この論文は非常に危険な病原菌を再合成する手法を示しており、サイエンス誌によればその研究費用はたった10万ドルで済んだという。そればかりではなく、どのように再合成を行うのかに関して安心していられる限度を超して微に入り細にわたって説明している。
馬痘の研究者仲間の間では何人かがこの点に関して依然として困惑したままでいる。「PLOS One」誌の姉妹誌である「PLOS Pathogens」誌はこの混乱について3件の意見を掲載し、著者であるカナダ人教授からの反論を公開したばかりである。
全体的に見ると、誰もがすごく紳士的である。しかしながら、微生物の専門家は誰かが天然痘の流行を引き起こすのではないかとして非常に大きな懸念が存在することを認識している。(futurism.comからの引用)

根絶の前は、天然痘は主として人と人との直接的接触、あるいは、長期間に及ぶ暴露によって感染した。最初の発疹が口や喉に現れた場合(初期段階)、最後の天然痘のかさぶたが剥がれ落ちるまでは感染力を持っている。CDC [訳注:米疾病対策センター] によると、「これらのかさぶたや患者の発疹部からの漿液はバリオラ・ウィルスを含んでいる。ウィルスはこれらを介して感染し、これらによって汚染された寝具や衣類を介して感染する。天然痘患者の面倒を見たり、患者の寝具や衣類の洗濯をする者は感染を防止するには手袋を使用しなければならない。」 

 

Photo-2: 天然痘の発疹 (写真: CDCの提供)

 

天然痘によるバイオテロとは?

CDCによると、こんな具合だ。バイオテロの目的で天然痘ウィルスが米国内でばらまかれたとすれば、最初の患者が未知の病気の治療のために病院にやって来た時点で公衆衛生当局はそのことを発見するであろう。医師らはその患者を調べ、患者の兆候や症状が天然痘に該当するかどうかを確認するためにCDCが開発したキットを使用する。その患者が天然痘に感染していると医師が判断した場合、患者は病院に隔離されて、他の人たちが天然痘ウィルスに暴露されないようにする。病院の職員はその地域を管轄する公衆衛生当局に連絡をとり、天然痘に感染した患者が病院に居ることを報告する。

地方の公衆衛生当局は州政府や連邦政府レベルの公衆衛生の担当部局、たとえば、CDCへ警告を発し、この疾病の診断に当たって専門的な支援を求める。専門家がこの疾病が天然痘であると判断した場合には、CDCは州政府や地方の公衆衛生当局と共に天然痘によるバイオテロに対する対応策を実施することになる。
MITの生化学者であるケヴィン・エスヴェルトは、木曜日(10月11日)に、テロの脅威は非常に高く、「論文の著者や論文審査を行う同僚の科学者、編集者、専門誌に対してリスクに関する規範を推奨し始めることが重要だ」と述べている。
この時点ではわれわれは用心し過ぎるくらいに用心する。
DNAの再合成における技術の進歩は全体的に予見できるにもかかわらず、インターネット接続が可能な人は誰でも何百万人もの殺害を可能にするウィルスに関して遺伝子の青写真を入手することが可能だ。

(テロリストにとって)好都合なことには、これらの危険物質やさらに大きな危険物質が特定のウィキペディアのサイトに概略されており、そこには悪用に活用されそうな技術文献が参照されているのである。

 

上記の段落においては詳細な引用を敢えて控えていることに留意されたい。公知の事実となっている情報を引用したり、リンクを張ることはほとんど無害であるとは言えようが、個々の過程が一般市民に悲劇をもたらすことに繋がる。この悲劇では、真の意味で危険極まりない技術情報の詳細が誰にでも容易に入手することができるのである。
隠喩的な壷から危険な技術情報を放出することがたったひとりの善意の学者によって取り返しのつかない形で行われてしまう可能性を考えると、論文の著者や論文審査を行う同僚の科学者、編集者、専門誌にはリスクに関する規範を推奨し始めることが重要であろう。PLOSからの引用)

エスヴェルトはメディアが天然痘の危険性を増幅したとして非難し、次のように述べている。
DNAの合成手法に関する情報は非常に広範な人々に入手が可能となっており、危険極まりない行為を行うために必要となりそうな詳細な指示事項さえもがオンライン上で無料で入手可能である。

たとえば、馬痘の研究においては情報の普及によって生じる危険性は部分的には論文そのものであり、記述の仕方にも見られる。
とは言え、メディアもこのリスクの一端を担っているのである。メディアは悪用が可能であることを殊更に強調する傾向がある。そして、この情況は警告を与えられた連中によってさらに悪化されてしまうのだ。何故ならば、われわれがリスクに関して話をする相手はジャーナリストであり、話の内容はさらに内部へと供給されて行く。(MITニュース) 

その一方で、カナダ人の教授は批判者に対して反論した。天然痘はどこかの時点で何とか再合成せざるを得なかったと論じている。

現実的な問題としては、技術的な進歩に対する反対はもう何世紀にもわたって奏功することはなかったのである。
われわれは次のように提言したい。上記のような状況に代わって、誰もがこれらの技術がもたらす成果を規制することに注意を向けるべきである。その一方で、このような技術に携わることがもたらす危険性に関して十分に理解した上で危険性を低減する戦略を立てる要があることについて教育するべきである。

これらの議論においては、長期的な観点が不可欠である。(PLOS
一言で言うと、致死的な病原体に満ちているジュラシックパークやそれらが引き起こすかもしれない天然痘の大流行の危険性に対して準備をしなければならない。 

<引用終了>

これで、全文の仮訳が終了した。
この記事におけるキーワードは「情報の普及によって引き起こされる危険性」であろう。

テロにはさまざまな形態がある。もっとも伝統的な手段は爆発物である。自家製の爆発物は何らかの技術情報に基づいて作られたものだ。当人が軍隊での経験を通じて技術を習得したのか、あるいは、個人的な趣味や学習を通じて爆発物を作成できるようになったのかのどちらかであろう。
シリアでは反政府派の武装勢力が偽旗作戦として一般市民に対して執拗に化学兵器攻撃をしかけた。化学兵器は本物であったり、偽物であったりした。西側が彼らに教育訓練を施し、さまざまな支援を行ったと伝えられている。何とここには紙に書かれた技術情報を実際のテロ行為に結びつける具体的な過程が示されているのだ。

もう何十年にもわたって危惧されてきたのは核物質である。核爆弾はテロ組織でさえも製造することが可能だと言われ、潜在的な危険性が指摘されている。
これらは当初はすべてが「情報の普及によって引き起こされる危険性」の範疇にあったものであるが、今やインターネット上で公知の事実と化した事例も多い。つまり、テロ行為の具体的な手法を支える技術情報はますます幅広いものとなり、一般大衆の毎日の生活のすぐそばに存在しているのだ。

この引用記事がわれわれに告げようとしている点は、幸か不幸か、科学技術の進歩という美名の下にもうひとつのパンドラの箱が開けられたという事実であろうか。科学技術の進歩が必然的にもうひとつのパンドラの箱を開けることになるとするならば、新技術の悪用は何らかの形で抑え込まなければならない。それは情報の開示の仕方に答があるのかも知れないし、他にも有用な手法があり得るのかも知れない。そして、その一方では技術の進歩の恩恵を受けられるように副作用が少ない天然痘ワクチンを開発して、万が一の可能性に対処するために大量の天然痘ワクチンを備蓄して貰いたいものである。
なお、天然痘ワクチンについて専門分野の論文を読むことなんてまったくないわれわれ一般庶民にとっては、ここで論じられているバイオテロの危険性は毎日の生活感覚からはかなり隔たっていると言わざるを得ない。しかしながら、ひとつの記事を読んだ後で二番目、三番目の関連記事を読む際の敷居は思いのほか低くなっているのが常だ。その意味合いで、私が個人的に興味深く感じるのは一般社団法人の「予防衛生協会」のウェブサイトだ。まさに情報の宝庫である。そこを覗いていただくと、天然痘ワクチンに関する啓蒙的な情報がたくさん用意されている。一例を挙げれば、2017117日付けの「104.ゲノム科学が明らかにしたジェンナーの天然痘ワクチンの由来」だ。是非、一読をお勧めしたい。
照:
注1Scientists Freak Out Over Pandemic Potential Of Genetically Engineered Smallpox: By Tyler Durden, ZEROHEDGE, Oct/14/2018
 
<転載終了>